毎日毎日、僕の生活の平穏を守ってくれるのはジャズだけど………
僕のその毎日の平穏をめちゃめちゃにひっかき回していくのも、当のジャズだったりする…。
「ジャズ、―――ジャズ。」
「ん…、ぅん?」
その日も、気持ちよくベッドで寝ていたら聞きなれない呼び名で以ってぺたぺたとほっぺたを叩かれ、僕は目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすりながら、「朝から一体誰だ」と、自分を起こした人物を視界に入れると。
「おはよ、ジャズ」
「ぉ、ぉはようございます…?」
ベッドに沈む「僕」を見下ろしていたのは、さらさらの黒い長髪をたらした美青年だった。
………ん〜。だれだっけ…。
ん?
「…ぇあ……?…イ、イルミさん…?!」
「そうだよ。何寝ぼけてんの?ジャズ」
「ジャズ…?」
え?なに?なんですか?何でジャズ?僕、ゼロのはずですが。
さっぱり状況がつかめないながら、とりあえずむくりと身体を起こす。
それから、眠たい思考をおして一生懸命考えたけど、いかんせん寝起きなので頭がぜんぜん働いてくれない。
………思い出せない。なんかやったっけ、僕。…いや、ジャズが、か…。
頭の中で呼びかけてみたけど、基本夜型のジャズがこんな朝早くから反応してくれるわけもなく、どうやら爆睡中のよう。
これじゃあ何のためにジャズがイルミさんを呼んだのかも僕にはぜんぜんわからない。
(昨日、寝る前に一言でも言っておいてくれればよかったのに…)
目をしょぼしょぼさせながらどうしようと僕が思案していると、それを見たイルミさんが「ジャズっていつもそうだよね」と漏らしながらごそごそと自分のポケットを探りはじめた。
イルミさんはポケットから取り出したケータイをぽちぽちといじって、そしてメールの画面を僕の前へと差し出す。
見せられたメール画面に書かれていたのは…
『あいたいあいたいあいたいいますぐあいにこい!!』
僕は思わず噴き出した。
「ほらジャズ、思い出した?これ送ってきたのキミでしょ」
「いやいやいや!覚えてませんっていうか、これ、僕が書いたんじゃありませんし!!」
「っていってもこのアドレス、ジャズのでしょ?」
「だからジャズが送ったんじゃないですか!?『僕』ではないです!僕、ゼロですから!ジャズじゃありませんから!!」
半泣きの状態で僕がそう叫ぶと、イルミさんは驚いたように少しの間黙って(←表情は最初から変わってない)、それからその無表情な顔でじ〜っと僕の顔を覗いてきた。
「あ、ほんとだ。何やってんのゼロ?」
「『あ、ほんとだ』じゃないですよ、もー!ここは最初から僕の部屋ですって!」
「ふーん。そうなの?ジャズは『このホテルのこの部屋にいるから来い』って言ってたけど」
そう言ってイルミさんはベッドから降り、クローゼットを開いたりやカーテンの裏を見てみたり、部屋の中をうろうろと探し始めた。
「いやいや、いませんよ!そんなところにジャズはいません!!」
「うん、知ってるよ。ゼロが寝てる間に部屋の中、円で全部調べたし」
「そーですか…; ―――って、それ最初から僕がジャズじゃなくてゼロって事、知ってたんじゃないですか!!」
「あ、なんだバレちゃった?」
とか、無表情のまま「あっはっは」とわざとらしく笑い始めたイルミさん。
く……!こ…このひと、絶対僕で遊んでる!!
「とまあ、そんなボケは置いといて…」
―――そんな真顔で『ボケ』もなにもありませんが。
「でもジャズにここにいるって聞いてたのは事実だし。…で、ゼロ?ジャズは結局どこにいるわけ?」
「知りませんよ〜」
「ホントーに知らない?」
わざわざ僕と目線を合わせて、じーっと僕の目を見ながら聞くイルミさん。
う…、もしかしてイルミさん、ホントは僕とジャズが同一人物ってわかってて聞いてるんじゃないでしょうね…。
「し、知らないです…」
「そ。じゃあしょうがないね」
若干目を泳がせつつもしらばっくれたら、イルミさんはあっさりとあきらめてスッと立ち上がった。
「まいったなぁ。ここに来るまで3日もかかってるのに、これ以上遅れたらジャズに怒られちゃうよ」
「3日って…」
「うん。ドリスから飛行船で3日」
「すごい国外じゃないですか!…何もそこまでしなくても…」
「オレだって"無理"って最初は言ったんだよ?ちょうど仕事中だったしさ。なのにジャズ、『それでも来い!死んでも来い!!』って、ホントわがままだよね」
「…う……そこは否定しません…;」
無理難題をさらりと言うのはジャズの得意技だ。
僕だけならまだしも、誰にでも同じように無理難題を言うからタチが悪い。
「でもジャズがいないんじゃしょうがないし」
「すみません…」
「ここ、ゼロが謝るところじゃないよ?」
「いえ……すみませんほんとに……;」
うちのバカジャズのせいですっごいご迷惑かけちゃったみたいでほんとーにすみません…;
「そう?じゃあ、そこまで言うならジャズの代わりに遊んでくれる?ゼロ?」
「へっ?」
「このまま無駄足踏まされてただ帰るっていうのもシャクだし、ゼロだってどうせ今日暇だよね?」
「え、いや、まぁ…」
「暇でしょ?」
その有無を言わさない目で見るのはやめてください…;
「…はい…」
「よかった。じゃあすぐ行くよ」
「ええ!?今からですか!?」
「うん。ゼロと遊ぶのなんて久しぶりだし。時間がもったいないでしょ?」
「はあ…」
「それにこれ以上ここにいるとオレの他にも誰か来そうだし」
「え?」
「ほら、早く支度しなよ」
「え、あ、…はい;」
マイペースにスタスタ歩くイルミさんの少し後についてトボトボと街中を歩く。
あぁー…。どうして僕ってこう押しに弱いんだろ…;
「さて、とりあえずご飯でも食べる?ゼロずっと寝てたしご飯まだだよね?」
「はあ、まあそうですね」
「何食べる?ゼロの好きなものでいいよ。オレはゼロに合わせるし」
「あ、そーですか?じゃあ、ええと…」
その辺を見回し目に付いたカフェを指差して、じゃああそこでモーニング……なんて言おうとしたら、
「こらぁジャズ〜〜〜!!」
ズドッ!!
「あいたぁっ!!」
「アンタ人のコトわざわざ呼びつけといて約束の場所に居ないってのはどーいう了見だ!?ええ!?」
「ひいい、なんですか!?」
ツリ目の、ちょっとキツそうな美少女にいきなり背中を蹴っ飛ばされて、マウントポジションですごいキレられた。
胸倉つかまれてガクガク揺さぶられて、あああ目が回りそうです〜。
「ああの、僕…うぐ〜;」
「もちろん覚悟はできてんだろうね!?ジャズ!?」
ひー!目が本気です、この人!
そのままぎゅーっと首を絞められ……く、くるしっ!!
助けてイルミさん!そんな無表情な顔で見てないで助けてください!
「けふけふ、かふっ;苦し…」
「ホラ、ちょっとは懲りたか!?」
「ねえ。あのさ、君が誰だか知らないけど、それジャズじゃないよ」
真っ青になってタップを繰り返す僕を見てか、やっとのことでイルミさんが助け舟を出してくれた。遅っ!
それにしてもイルミさん、何でそんなに平静なんですか…。
どうでもいいんですね、僕のことなんか……;
「ん゛!?……って、アンタは?」
「オレのことはいいから、まずは離してやってよ。それジャズじゃないから」
イルミさんの言葉を耳にして、女の子は僕の首を絞める指を少し緩めた。
ゲフー。
「…ジャズじゃないって?…証拠は?」
「ないけど。でもそれ本当にジャズじゃないよ。ジャズの双子のお兄さん。」
「え゛?」
女の子は驚いたように目を見開いて、ササッと僕の上から飛びのいた。
「…………ジャズの兄?」
「うん」
僕を指差してイルミさんに再度聞いた女の子。
今度はグイッと僕の胸倉をつかみあげ無理やり立たせて、僕の顔をまじまじと見た。
「あはは…; ケホ、…こ、こんにちは…」
「…………確かにジャズとはすこし違うみたいだね。―――で、兄さん?ジャズのアホはどこだい?」
「それがそのぅ…。…すみません、知らないんです…」
「ふーん……そ。じゃあしょうがないね。悪かったね、勘違いで怪我させて」
「いや、いいです…。もういいんです…。ジャズがバカなのがいけないんです…」
―――この女の子の口ぶりから察すると、彼女もきっとジャズのあの変なメール受け取ったんじゃないでしょうか…。確かめたくはないですけど…。
どんより肩を落としていると、『大変だね、あんたもあんなの弟に持って』と女の子に同情された。
この人もきっとジャズに苦労させられてるんだろうなぁ…。
「じゃあもういいでしょ?お兄さんのほうはオレが先約だから」
「「あ」」
と、イルミさんにひょいっと抱き上げられた。女の子と声がかぶる。
「イ、イルミさん…;」
「なに、ゼロ? いくんでしょ?ご飯。」
「まあそうですけど…。なんで僕、こんな格好…;」
「不満?」
いや、『不満?』ってそんな真顔で…;
普通に不満ですよ。何で僕男なのに男の人にお姫様抱っこされないといけないんですか…。
若干ブルー入りつつもハッと女の子の事を思い出して、イルミさんの肩越しに僕は女の子に謝罪する。
「――あの、すみません!今度お詫びします!ジャズにもちゃんと謝らせますので!」
「いいよ、アンタが気にすることじゃないから。あたしが直接、あのアホ探し出して土下座させてやるから!」
少し勝気な笑顔を見せ僕に手を振ったかと思うと、次の瞬間にはパンッとこぶしを合わせ、女の子は怒りの形相。
「あんのアホ、次に見つけたら今度こそ息の根止めてやる!!」
と、次にはそんな言葉が僕の背中に届く。
………どうしよう…顔はかわいいけどすごく恐い人だ…。
なんだか本当にジャズに土下座させそうな勢いの炎のようなオーラを感じて、何故か血の気が引いた。
…あとでジャズに命が危ないことを教えておいてあげよう。
「ゼロ。」
「はっ!はいっ!?なんですかイルミさん?!」
爆睡中のジャズに呼びかけていたらイルミさんが僕の顔をのぞいてきた。
「なんか上の空だね。オレとより、さっきのコといるほうがよかった?」
「い、いえ!そんなことはないですよ!知らない女性と一緒にいるよりは、イルミさんといるほうが…」
『気が楽…』と言いかけたところでイルミさんが少し笑った気がして、僕はびっくりして言葉をそこで切ってしまった。
「そう、よかった。ゼロにそう言ってもらえてうれしいなぁオレ。」
「はあ…」
………ご機嫌なイルミさんって、それはそれでなんか怖いんですけど……。
「いや、あのですね、僕…」
「そう言ってもらえなかったらオレ、思わずゼロの首絞めてたかも」
「…………。」
「なーんてね、ウソだよゼロ。本気にした? はは、そんなに青くならなくてもいいのに」
…伝説の暗殺者一族の人に真顔で言われて冗談だと思えという方が無理です…;
「あ、ゼロ。クレープ売ってるよ。買ってきてあげるから少しは元気だしなよ」
「…はあ…」
道路の手柵のところまでつれてこられ、そこに座らされる。
「いい子でここで待ってるんだよ?」と、ポンと僕の頭を一度なでてから、イルミさんはテクテクと道路の向こう側へと歩いていった。
……なぜ僕、こんな子ども扱い;…いや、弟扱いのつもりかな…。
ため息をつきつつ手柵に腰掛けイルミさんを待っていると―――
「ほーら捕まえたぜジャズ―――♪」
「ひぁあーっ!!?」
いきなり後ろからガッと体をつかまれ、
がばあーっと持ち上げられた。
ちょ…!ちょ、ちょちょ…一体なんですかー!?
「高…;ひー!?下ろしてー!!」
ちょうど、"たかいたかーい"されてる感じで、体をつかまれたまま軽く空へと放り出される。
そんな軽々と……ひいい、高い!高すぎます!!なんですかこれ!?誰ですか!?
「かっかっか。ウボォーなんかに捕まっちまうとは、オメーもずいぶんウデ落ちたんじゃねぇか?ジャズ?」
「…んだよノブナガ。そこはお前、ジャズじゃなくてオレのウデが上がったってのを認めるとこだろ」
「ないない。オメーとジャズとじゃ元々のウデの差が違いすぎんだからよ。明らかにこりゃジャズのほうのウデが落ちてる」
「んなことねーよ!!なっ?ジャズー?………ジャズ?」
「…………。」
バンザーイの状態からやっと少しだけ位置を下ろしてもらえたけど、思わず半泣きの僕を見て大男さんとちょんまげの人が怪訝そうに互いの顔を見合わせる。
「…どした?何で泣くんだジャズ?腹でも痛いのか?」
「んなわけねーだろ、バカ。…おいジャズ?ウボォーなんかにつかまっちまったのがそんなにショックだったのか?」
「おいノブナガ、待てよ。なんでそーなるんだよ」
「この状況じゃそれしかねぇだろーが」
「そんなことねーって、ただの腹痛だろ………って、
うぉおい!?なんだ!!?」
「ひゃあ!!」
ヒュッ―――
ドスドスッ!!ドスッ!!
ぐすぐす鼻をすする僕の後ろで、2人がしょーもない言い争いをはじめた矢先。
2人の間を裂くように、銀色に光る何かが道路の向こうから飛んできた。大男さんの腕から投げ出される僕。
受身を取った地面の、すぐ近くに刺さっていたのは見たことのある銀色の細い針だった。………あー…;
「あっ…ぶねーな!!誰だ!?」
「イ、イルミさん…;」
しりもちをつきながらそれが飛んできたほうを見れば、クレープ片手にもう一方の手で針を構えるイルミさんの姿が。………なんか異様です。
「何だ、オメー?」
「それはこっちのセリフなんだけど。…ねえ、何でゼロってそんなに無防備なの?バカなの?」
「え、なんでそこで僕に振るんですか;イルミさん…」
「だってゼロが誘ったんでしょ?」
「違いますよ!なんでですか!!僕は何にも――――、
あっ。」
声を上げたら3人に注目された。
でも………今ふと気がついた。
犯人はジャズだ。
たぶん…、っていうか確実にそんな気がする。あれだ、あのメール。
アレをこの人たちも受け取ったんだ。たぶん。
…一体何人にメール送ってるんですか!
イルミさんと視線を合わせると、イルミさんも同じことを考えついたのか『はあー』と盛大にため息を吐いていた。
そしてくるりと大男さんたちに向き直る。大男さんが少し身構えた。
「おっ。やるのかお前?」
「やらない。…あのさ、君たちが何者か知らないし知りたくも無いけど―――その子、ジャズじゃないから」
「はあ?何言ってんだオメー…」
「あ…、いや、本当なんです…
わあ!?」
「じゃあオレ達用事あるから。じゃね。」
「え、あ…おい!!」
ジャズじゃないって弁解しようと会話に入ったらすかさずイルミさんに引っ張られて、強引に2人とサヨナラさせられた。
……なんかイルミさんって意外とヒソカさんより強引ですか?
「…あのさ、ゼロ。あんまり世話焼かせないでほしいんだけど」
腕を掴まれつつスタスタ歩きながら、ちょっと怒った風に言われる。
「すいません;」
「いっそ籠の鳥にしないと駄目かな、キミは?」
「え?」
「はい、クレープ」
「ぶっ!?」
イルミさんの言ってる意味がよくわからずに聞き返したら、答えをさえぎるようにクレープを顔面に向かって投げられた。
ガードが微妙に間に合わず、クレープからこぼれたたっぷりの生クリームが顔から胸にかけてべっとりと落ちた。
「うわあ、ひどい!!」
「…ヘタクソだなぁ」
「イルミさんが急に投げるからですよ!」
うわああ、それにしてもべっとべと!
ひどいなあ、結構気に入ってたのにこの服…。
「大丈夫、すぐシャワーすれば落ちるよ。この際だからもうホテル戻って2人で流しっこしようか?」
「えええ…; 男2人で流しっことかすごくヤなんですけど僕…。っていうかイルミさんは汚れてないんだからシャワーいらないじゃないですか…」
「…汚れればいいの?」
そう言ってイルミさんは落ちたクレープの残骸を拾おうとする。
僕はあわててそれを止めた。
「やっ!ちょ…っ!わざわざ汚れなくていいですってば!」
「じゃないとゼロ、一緒にお風呂入ってくれないんでしょ?」
「真顔で言わなくていーですってば…。ハァ…、なんかキルアとイルミさんが『兄弟』っていうの、実感できた気がします…」
『………で?どうしたんだお前、その後』
「その後も何も…、ホテル戻って一緒にシャワーしましたよ?」
『…男2人で?』
「ええ、男2人で。」
――――夜中、僕が寝る間際になってから、やっとの事でジャズが目覚めた。
…遅すぎますよバカ!危うく文句の一つも言えないまま寝るトコだったじゃないですか!
『へー…。で、何された?なんかされなかったか?』
「ヘンなこといわないで下さいよ。イルミさんはそんなことしません」
イルミさんはなんか「十分堪能したから」とかって、シャワーして、一緒に夕食をとった後ホクホク顔で帰っていった。
シャワーだって別にフツーに髪とか洗い流してくれたし、僕が疲れを顔に出してたのが分かったらしくてシャワーの後もいろいろ気遣ってくれましたよ?
暗殺一家ゾルディックの長兄さんっていっても、
ジャズよりは全〜然いい人でしたけど?
『…ちぇ。なんだよ、つまんねー』
「ちょっ…!!『つまんねー』ってなんですか!!『つまんねー』って!!キミのせいで僕が今日どれだけ苦労したか、分かってんですかキミは!!?」
『だってよう、暇だったんだもん。なんかもっと面白いメに遭えよ。ったく…』
一日中寝てた人がどの口で言いますか。
「……っていうか……、もしかしてキミは自分の暇つぶしのためだけに、僕が困るのわかっててあんなメールいろんな人にばら撒いてたんですか?」
『おお、なんだ今頃気づいたのかよ。おっせ。…あ、でも一応危なくなさそうなヤツに絞ったんだぜ?感謝しとけよ』
「………は?」
お前の反応見てるのが一番おもしれぇからさあ、などとケタケタ笑いながら愉快気にのたまうジャズ。
……そのとき、ぶちんと何かが僕の中で音を立てて切れた。
「…キミのケータイ、今ここで壊していいですか?」
僕の手の中で、ミキッと音を立てた黒いケータイ。ジャズのケータイだ。
あわててジャズは僕の意識に介入してその手を止めようとしてきた。
ふん!負けません!!
めき、みしみし…
『…テメ!っちょ、なにしやがんだ!お前それ仕事先のアドレスとか入ってんだぞ!!』
「ハハハ、何言ってんですか?キミのケータイ、ゾラさんとネテロさんぐらいしか大事なアドレス入ってないじゃないですか。あ、僕のアドレスも入ってましたっけ?それはもう消していいですよね?ハハハハ」
切れて、とびっきりのニコニコ笑顔で言ってやったら、さすがにジャズはヤバイと思ったのか平謝りしてきた。
『悪い、悪かった、本当ゴメン。もうしないから。切れんなマジデ。そしてケータイ返せ。マジでヤバイアドレスとか入ってんだって』
「ふーんだ。もう知りませんから。次やったら問答無用で壊しますから。」
ぽーんとケータイをベッドに投げ出して、僕はごろりと横になった。
「……あーあ、僕ジャズみたいな生意気な弟よりイルミさんみたいなやさしーお兄さんが欲しかったなぁー」
―――って、嫌味のつもりでそう言ったら、案の定ジャズはショックを受けたようで。
『なっ!?なんでだ!?お前アイツに惚れたのか!?』
は?なんですか?すごく食いつきいいですね?
「ええそうですね。ジャズよりは惚れますね。すごく髪サラサラで綺麗だったし、裸だって…」
『うぎゃあ止めろ!!お前の口からそんなこと聞きたくねぇ!!』
「ああそう?じゃあもっと教えてあげますよ。えーとね…」
『や〜め〜ろ〜!!』
「ふふっ」
……とまぁ…少しは懲りたのか、その後ジャズは二度と同じ悪戯はしませんでした。
イルミさんからはメールアドレスをもらったので、今度また一緒に遊ぼうと思います。
おわる
番外編なのでマチたんとかウボォーとかノブナガも絡ませてみました。…名前出てませんが
すもも