――――昔っから、争いごとが苦手でした。
大好きだった母さんと父さんが、オレがガキのときにハンターの仕事で命を落としてから、その思いも強くなった。
なんでわざわざ犯罪者達と戦って日々の糧を得なきゃならなかったのか。
もっと安全で平穏な生き方だってたくさんあったのに。
なんでわざわざ痛い思いをして、怖い思いをして、挙句に平均寿命の半分も生きてないうちに死んじまって。両親は何が望みだったのか?
こじんまりとした小さな家庭でも良い、オレはもっと2人と一緒にいたかった。
母さんと父さんと一緒に、もっとずっと永く平穏な生活をしていたかった。
…でも2人は死んだ。
身の丈に合わない生き方をして挙句、無様に死んでいった。
父さんも母さんも、馬鹿だ。
だからオレは、多くの子が勇猛なハンターの姿にあこがれる中、絶対にハンターなんかには―――父さんや母さんみたいにはならないって決めて。
学校に通って、資格も取って、就職決めて……
『命のやり取り』なんて危険な世界からは程遠い世界で、安穏とした生活をこれから十何年も続けていこうって思ってたのに。
……なのにさ。なんでよ?
「レイスてめぇ待てコラァ!!!止まらねーとぶっ殺すぞ!!」
「ぎゃあああああ!!」
なんでこんな熊みたいなおっかない奴と命をかけた追いかけっこをしなきゃならないんだよ!!
「ひいい…。なんでだよ?なんでオレがこんな目にあわなきゃなんないんだよ…」
"ヤツ"との追いかけっこも、わずかばかり小休止。
古びた洋館の2Fトイレの掃除用具ロッカーの中に情けなく身を縮めて隠れて、オレはハアハアと荒い息をついていた。
「オレ、本職はハンターじゃないんだぜ?しがないただのビジネスマンなんだぜ?ビスケちゃんだって全然危なくなんかないって言ってたじゃん。…嘘?嘘なのか?」
『本当に大丈夫ですわv』などとにーっこりと可愛らしく笑うロリータ少女の笑顔を思い出して、「夢、これは夢だ」と自分に言い聞かせる。
そうじゃないと……そうでも思わないと、オレの精神が持たないからだ。
「とにかく早く終わらせて迎えに来てくれよう…。このままじゃオレ、殺されちまうよ…」
オレは念なんかほとんど使えない。
生前の母さんと父さんに無理やり覚えさせられて基礎の部分―――纏とか練とか絶くらいはなんとか使えるけど。
発?とか、父さんや母さんが持ってたっていうジョネン?とか癒しの力みたいな特殊能力は全然持ってない。
それなのに、"父さんと母さんの息子であるオレはもちろん優秀な能力者に違いない"とか、"父さんと母さんから受け継いだ凄まじい能力を隠すために、息子は一般人のフリをしてる"だとかワケのわかんない噂がいつのまにかハンター達の間で広まってたらしい。
オレの両親と仲が良かったっていうビスケって子もそれを聞きつけてかすぐさまやってきて、オレに『ちゃんとしたハンターになれ』って連日説教してくるようになった。
…てゆーかハンターになれとか本当迷惑!
オレはフツーに平穏な暮らしをして結婚して子供作って幸せに歳取って、ちいちゃい爺になって愛するばあさんと縁側で孫の話をしながらほのぼのと茶を飲みたいんだ!それが夢なんだ!ハンターなんてクソくらえですよ!
…んで、そのビスケちゃんの連日の説教もハイハイと軽く流していたら、最近になって性質の悪いハンター連中までもがひっきりなしにオレのところにあらわれるようになって。
仕事一緒にやらないかとか報酬山分けするから仕事手伝ってくれとか………。
毎日オレの周りをうろうろする怖い顔のおっさん達のせいで友達はどんどん減ってくし。
断ってたらあげくに今日は拉致されたし!!
なんなんだあいつらは!ハンターってもっと誇り高い職業じゃないのか!?
思い出したらムカついてきて、うぎーっとばかりにわしわし頭を両手で掻いた。髪がぐじゃぐじゃになったが、でも怒ったらちょっと落ち着いた。ふぅ。
落ち着いたオレはケータイをポケットから取り出し、『マダー?(´・ω・`)』とビスケちゃんのケータイにメールを送った。
拉致られたオレのことをどっから聞きつけてきたのか、助けに来てくれたビスケちゃん。
『悪い人たちをやっつけてきますから、レイスさんはどこかに隠れててくださいなv』って置いてかれたんだけど一向に迎えに来てくれないし。
おかげでヘンな熊には追いかけられるし。
そのうえビスケちゃんとはいつも顔あわせるたんびに説教食らうから、その嫌がらせも兼ねてのメールだ。交戦中でも知るもんか。
…………と思って勢いで送っちゃったけど、ビスケちゃんみたいなちいちゃい少女に、あんなやくざみたいないかついハンター連中なんかホントにどうにかできるもんなのかな?
まあ念能力の強さは見た目に反映されるもんでもないけどさ。
でもやっぱりなんかちょっと心配になってきたよ。
オレの根がチキンなだけに。
「うー………よ、よーし」
オレは意を決してロッカーから出た。
……ほ、ほらこんなとこに隠れてても、さっきの熊とかオレを拉致った奴らに見つかって追い詰められたらどうしようもないしね!
ビスケちゃんももしピンチだったら、そこはお兄さんのオレがちゃんと助けてあげないと!うん。…………助けられるかどうかは話が別だけど。
そーっとトイレから顔を出し、周りに誰もいないのを確認。小走りで廊下を駆けた。
能力者としてはたぶんハナクソみたいに弱いオレなので、強いヤツと鉢合わせしたらヤバイ。
敵にはぜんぶ不意打ち狙いでここは慎重にいかねば。怪我すんのもやだし。
ぴたりっと廊下の門で壁に張り付く。ちょろっと角から顔を出し、行く先に人がいないか確認。
その瞬間、
「どこだレイス―――!」
「ひっ!?」
でっかい声が背後から響いて、オレは身を固くした。
背後を振り返ると、さっきオレを追いかけてきた毛むくじゃらの筋肉大男が廊下の向こう、カドから曲がってくるのが見えた。
(やべっ…!)
オレはとっさに廊下を曲がり、途中にあった階段を極力音を立てないよう駆け下りた。
階段を下りきり、階段の影にあったボイラー室の扉へと飛び込む。
そして一番奥の、でっかい機械の影に隠れて息を殺した。
来んな。来るなよ。オレ、絶なんかそんなに上手くないんだからな。絶対来るな。
泣きそうになりながら、必死に祈る。
…が、その祈りもむなしく。
ガンッ
音を立てて、ボイラー室の扉が開け放たれる。廊下からの明かりが、真っ暗なボイラー室の中へと伸びた。
「………。」
身体の動きを固めとにかく息を殺して、オレは機械の備品の一つになりきる。
室内にはゴウンゴウンというボイラーの音がやけに大きく響いている。
「………レイス?」
ザリ、とコンクリート床を踏みしめる力強い足音。
男が一歩、室内へと踏み込んできた。……ヤバイ?ヤバイ??
だらだらと汗を流しながら、息すらも止める。
来るな来るな来るな、とひたすら祈り続けていたそのとき。
『ひあッ!!?』
突然、胸の内ポケットに入れてたケータイのバイブレーションが勢いよく動き出した。
思わず悲鳴が口を突きそうになったがすんでで飲み込む。ただちょっと噴きかけてヨダレは出たが。
バイブを止め…、いやダメだ動くな、バイブはそのうち止まる。っていうか止まれ。すぐ止まれ。止まってくれ!!
ポケットの中のケータイはひどく長い間動き続け―――(そう感じただけかもしれない)そのうちぴたりと動きを止めた。
ドックドックと心臓の音がいつにも増して激しい音を立ててる。冷や汗がどっと吹き出てきた。
もうだめかと思った。
それでもオレは最後の望みを賭け息を止め続けた。
「…………。」
――――その甲斐があったのかどうか。
長い長い無言の間の後、キィ、と音がしてガコンと扉の締まる音がボイラー室に響いた。
男はなんとかここから出てってくれたようだ。
……。
………。
…。
「…ふぇ…」
安堵したら力が抜けた。
オレはへなへなとその場に腰を落とす。
もうヤダこんなの。寿命が削れる。オレの大事な寿命が。ばあさんとの時間が。
泣きそうになりながらオレはケータイを内ポケットから取り出した。
オレをこんなに追い詰めた犯人は誰かとケータイの画面を見たら。
『終わったわさv(^.^)v 今どこにいらっしゃいますの?』
……ビスケちゃんのRe:メールだった。
泣いた。
怖くて外に出られなかったので、ビスケちゃんにボイラー室に来てもらった。
「…もう誰もいない?いなかった?」
「もう誰もいないわさ。あんたを拉致ったアマチュアハンター集団は皆逮捕したわよ」
ビスケちゃんの影に隠れ、きょろきょろ辺りを見回しながらボイラー室から出た。
呆れたように目を細めてビスケちゃんがオレを振り返る。
「……なんだわさ、二十歳過ぎの男が可憐な少女の影に隠れて。かっこ悪いわよ?」
「だだだだってめっちゃ怖い熊みたいな奴がいたぞ!?オレ、殺されかけたんだぞ!?『皆捕まえた』って!?はっ!嘘だろ、それ!?」
「熊?なんだわさ、それ?」
「だ、だからー」
聞かれて、オレはビスケちゃんと別れた後近くの窓から侵入してきたヘンな大男に追いかけられてたことと、その大男の特徴を身振り手ぶり加えてビスケちゃんに説明した。
最初は「大げさねー」と可哀想なものを見るような目つきでオレを見ていたビスケちゃんだったが、話が終わった後は少し神妙な表情になった。そして「うーん」と首をひねる。
それからビスケちゃんは1人、ボイラー室の中に戻り、出てきて、階段辺りまでをなにやら調べ始めた。
「…確かにオーラの残り香があるわね。でも今回あんたを拉致した連中とは違う…。別の誰かがあたしの目の届かないところで巧妙に紛れ込んでたのね」
「べ、べべべ別の誰かって誰」
「さあそこまでは。でもこれ、あんたを拉致した連中より相当ヤバイ奴なのは確か。…あんた、狙われてるわね」
「ねねねね狙われてる!?オレはただのビジネスマンですよ!来月のボーナスがちゃんと出るのか、日々そんなこと考えてるフツーの一般人ですよ!狙う意味なんてないですよ!!!」
壊れたカラクリ人形のようにあわあわ腕を動かしてたら、それを見たビスケちゃんが呆れたようなため息をながーく吐いた。
「…狙われてんのはあんたの能力でしょ。
いーい?あんたの両親が優秀だったからこそ、あんたは自分の身は自分で守れるくらいに強くならなくちゃいけないの。
あんたの両親の力をあんたに求めてくる奴は絶対にいる。念ってのは子に受け継がれることもあるからね。今回のこともそうでしょ?
またこうやって拉致られたりしたらどーすんの?」
「え?だってそのときはまたビスケちゃんが助けてくれるんだろ?」
「…あのね。あたしだっていつもアンタのお守りしてられるほど暇じゃないわさ!今回はたまたま運がよかっただけ!
だからいつもいつも、しっかり修行してちゃんとしたハンターになんなさいっていってるじゃないのよさ!!!」
「そ、そんなこといったって、オレは好きで勤めに出てるの!!お前らが勝手にオレを引きずりまわしてるんじゃないか!
ハンターになるなんて絶対ヤだから!なんでみんなオレを平穏に生きさせてくれないんだ!!念能力だって父さん達が無理やり押し付けてきたから覚えただけで、オレが能力者になりたいっつって覚えたわけじゃないやい!!!」
「小学生かアンタは!!まったく、あんたの両親はすごいハンターだったってのに何で息子のあんたはこんな…」
ハンケチを取り出し、よよよ〜、と泣きまねをするビスケちゃん。
な、なんだ!おお前はオレの嫁か!半生育ててくれた親戚か!!
「父さんと母さんは関係ないだろ!オレはオレ!!オレは今までもこれからも、しがないビジネスマンがいいの!!!」
「威張れる事かー!」
「ぎゃわん!?」
ズビッシィイ!!とチョップを脳天に貰った。
おぉおお…;
…ビ、ビビビジネスマン馬鹿にすんな!
ちゃんと普通の社会で働く人がいるから、お前らハンターなんてやくざな仕事も回るんだぞ!
ホテルの人とか公共交通機関の人とか、電話会社の人とか、コンビニとか!お前らだってお世話になってるだろ!?
「はぁ、もうあんたと話してると疲れるわ。とにかく、変な連中に狙われ始めてて、あんたが普通の生き方したいとか言ってる以上、近々ハンター協会に連絡して保護プログラムでも発動してもらうしかないでしょうね。
まだハンターたちの間での噂のうちはいいけど…、そろそろ犯罪者の側にあんたの情報が漏れてもおかしくないもの。このままほっといたら…」
「ほほ、ほっといたら?」
やな予感はしたが、一応聞いてみる。
……やな予感?いや、やな予感なんて嘘さ!ソンナノシテナイヨ!
そうだろ!?そうだと言ってよビスケちゃん!!
しかし、ジー、と目を細めてオレを見た後ビスケちゃんはさらっと怖いことを言う。
「そうね。今度は本物のマフィアとか殺し屋に拉致られて拷問されるか殺されるかするんじゃない?」
「ギャアア止めて!!可愛い顔で怖い事言わないで!!」
びたっと両耳を手でふさぐ。
ヴァー…と半泣きのオレを見て、ビスケちゃんは冗談っぽくコロコロと笑い出した。
「まあまあ、すぐにそうなりはしないわよ。でも急ぐ必要はあるわね。現にそれらしいのも来てるみたいだし」
「ホントかよー、怖いよー。家まで送ってってよビスケちゃんー」
「はいはい、まったく…。最初からそのつもりだわよ」
男ならもう少しシャキッとしなさいな。
そんなことを言いながら、ビスケちゃんは丸まっていたオレの背をぽんぽんと叩いた。
(せっかく顔はいいのに)
(……え?なに?;)
「それじゃあこれから協会に連絡とって保護の手配とっとくけど、その前になんかあったらすぐあたしのケータイに連絡しなさいよ!」
「あーい」
アパート近くの街頭の下でビスケちゃんと別れを告げる。
もう深夜だから通りの家の明かりも消えて、辺りは真っ暗だ。
部屋まで送ってよ、と言ったら「そんな…こんな深夜に妙齢の男性のお部屋まではご一緒できませんわ。ぽっv」などと今更な言い方で断られた。
こないだの日曜の朝、鍵こじ開けた上ベッドひっくり返してまでオレをたたき起こして説教しにきてくれやがったのは一体誰だ、誰なんだ?ん?
とりあえずは見えなくなるまで手を振ってビスケちゃんの帰りを見送って、オレは部屋への帰路へつく。
んー、眠い。明日も仕事かぁ…。
そういや今日は日曜だったから拉致られても大丈夫だったものの(いや、大丈夫じゃないけど)、平日だったら会社無断欠勤でたいへんなことになってたぞ?
「まあいいや、済んだことだし…。とにかく疲れたから酒でも煽ってさっさと寝よ…」
部屋のドアの前で、あくびをかみ殺す。
もそもそとポケットから鍵を取り出し、慣れきった動作でアパートのドアを開けた。
「ただいまー」
「おう。おかえりレイスv」
「ふひっ!?」
誰もいないはずの部屋に向かって挨拶したのに、返事があってオレは引いた。
真っ暗な部屋の中で、真っ黒い大きな影がゆらりとうごめいた。
「お、お、お、おまえっ!?」
「よう、遅かったじゃねーか?レイス〜〜〜〜!!」
さっきの熊みたいな大男が、白い歯をむき出し、悪魔みたいな笑顔を見せそこに立っていた。
へたりとオレはしりもちをつく。
「ビビ…、ビスケ…っ!」
「まあ待て待て」
「に゛ぎゃっ!?」
ずるずると四つんばいのまま逃げようとしたが、むんずっ、とぶっとい腕に襟首を掴まれて、オレは部屋へと引きずり込まれた。
「ったく…一体どんだけオレを待たせりゃ気が済むんだよ、この仔犬ちゃんはよう〜」
「はぶぶ…、にゃにしやぎゃる、はにゃせ〜!」
オレの顔をつかんでぐりぐりと弄ってくる大男。
片方のぶっとい腕だけでオレを宙ぶらりんにして、歩きながら、もう一方の手で照明のスイッチを入れた。パッと部屋の中に照明が灯る。
オレの部屋なのに、見たことの無い奴ら数人が我が物顔で部屋の中に陣取ってくつろいでいた。
黒髪眼鏡の女の子と、黒髪スダレのイケメンと、バンダナしたイケメンと、金髪童顔のイケメンと………くそ、イケメンばっかか、何のイジメだ!
でもよかった。大男以外は強くておっかなそうな人はいないぞ。
女の子も混じってるし…。これなら隙さえあれば逃げられるのかも…。
「…団長。捕まえたはいいケドやぱりこいつすごい弱そうね。役に立ちそうに無いよ。どうするか?」
「まあ待ちなよフェイタン。…えーと…。レイス、…っていったよね、名前。そう怖がらなくてもいいよ。なにもしないから」
オレの側まで来た金髪童顔のさわやかイケメンが笑顔で言う。
大男の腕の中で借りてきた猫みたいになってたオレはおそるおそる聞き返した。
「何もしない…?ホントに?」
「うん。ちょっと質問はすることになると思うけど」
「…質問?オレに答えられる事?」
「そ。君の能力について」
「…能力?能力って、その、念能力ってこと?」
「そうそう」
よくできました、とばかりに笑顔でオレの頭を撫でる金髪のイケメン。
ふぐぅ、やややっぱりそれですか…。
内心盛大なため息をつきつつ、オレはそこで一番重要なことをビクビクしながら尋ねた。
「お、おたくらは、…その、……マフィア?」
「あはは、ちがうって。…たぶんもっとタチが悪い」
…っちょ!悪いのかよ!
笑顔で怖い事言うな、このイケメン!
「ああああのですね。オレ、ホントにただのビジネスマンですから!あんたらがもし、その…オレにオレの父さんとか母さんの能力を求めてきたなら無駄ですよ!
念能力なんかオレ、纏くらいしか使えないし!そもそもオレ、父さんと母さんが仕事でなにしてたとかどんな能力だったとか知らないし!」
テンパり気味にあわあわ両手で身振り手振りを加えて説明する。
金髪童顔のイケメンは表情を変えず、そんなオレをニコニコ眺めながら……
「ふーん?……それで?」
って、一言。
"それで?"って………さらっと返さないで!
「ううううそじゃない!本当に念とかよくわかんないし!オレ、役になんか立たないよ!だから帰ってよ!」
「…って、こんなこと言ってるけど?団長」
オレを指差して金髪のイケメンは、テーブルに着いてコーヒーを(オレの留守の間に勝手に淹れて)飲んでいた黒髪バンダナのイケメンに尋ねていた。
『団長』って…?このホストみたいな兄ちゃんが?この集団のリーダーって事?若い〜…。
「何、そいつが能力者になれば優秀なのは間違いないさ。念能力の発現は本人の意思に関係なく、そいつの生まれやそれまでの生活環境に左右されることが多いからな。たとえ今そいつがマトモに念能力を使えなくても…」
「これからそれを発現する可能性はアリって事だね」
「そういうことだ。念さえ発現させればおそらくそいつは、母親の除念能力か父親の治癒能力…、もしくはそれに近しい特質系か放出系の能力を持つことになるはずだ」
「ぁあ…、そういう事だたか」
「電脳ネット上でもいまだに噂の両親がわざわざ隠してた子だしな。素質はあると思う」
団長とかいう奴の指摘を聞いて、オレを捕まえる大男が「おおー」と鼻息を荒くした。
オレはげんなり。
「だったらオレぁ治癒系の能力のがいいな!そしたら怪我とか気にせずいくらでも闘ってられるだろ!?な、レイス!そうしろよ!」
オレのほっぺたをもう片方の拳でぐりぐりする大男。
…っていうかこの人、友達でもないのにさっきからなんですごい馴れ馴れしいの…。
そんなオレを見ながら、眼鏡の女の子や黒髪スダレのおチビさんも大男に同調して勝手なことを言い出しはじめる。
「んー…、でも旅団の活動を考えたら除念の能力もいいと思うんだけど…。結構厄介なトラップ能力持ちのハンターとかもいるし…。ねぇ、フェイタン?」
「…ワタシはウボォーの意見に賛成ね。死なないように人質拷問するのも骨折れるコト。治癒能力者いればいくらでも致死寸前のコトできるね」
……待ってよ、このおチビさん素ですごいこと言ってないか!?誰か突っ込もうよ!
青くなりながらそんなことを思っていたら、金髪童顔のイケメンも顎に手を当て、「んー、」と考えてた。
……なに〜?まだなにかあるの?もう怖いことはカンベンして…。
「どっちにしろオレ達の活動にとって損は無い…か。で?団長、どーする?連れてくの?それとも『盗む』?」
「とりあえず連れて行く。『盗む』にもまずは能力を発現してもらわないとな」
「あ、そっか…」
なんかこの人ら、物騒な話をかる〜く話してるけど……。
「ちょっ、待ってよ、オレの本人の意向は全然無視なわけですか!?」
大男さんに首根っこぶらぶらされたままの格好ですが、ホストの団長さんに尋ねる。…あ、団長のホストさん?もうこの際どっちでもいいけどさ。
「ま、残念だがそういうことになる。……何、お前がさっさと有益な特殊能力を発現してくれればすぐにも帰してやるよ。もちろん、能力はキレイに貰った後でね」
黒髪バンダナのイケメン団長はにっこり笑顔でわさわさとオレの頭を撫でてきた。
やめて〜〜!オレ、犬猫じゃないんだから!
「……ま、もしそれ以外にも使い道があればオレ達の仲間になってもらうかもしれないけどね」
「いやいや、そんなん困りますってば!!オレ、明日も仕事あるし、もちろん明後日も明々後日も仕事だし!
オレの能力が欲しいんだったら発現次第あんたにあげてもいいから!オレ、能力者とかハンターとか今後もなる気ないし!能力貰ってくれるならむしろ願ったり叶ったりなんだけど、念の修行のためなんかで今の仕事は辞めたくないんす!!このご時勢、同業種でも再就職とか難しいし!!
そういうことだから念の修行とかさせる気ならせめて
週二から週三くらいのペースで、時間は夜6時から8時までの間、延長は1時間程度希望でお願いします!!!」
両手を合わせて"おねがいッ☆"のポーズで頼み込んだら、団長さんは『ブフッ』と笑い出した。
「オレ達、スポーツクラブじゃないんだけどな」
面白いなーキミ。とか言って笑うホスト団長さん。
すまし顔も、にっこり笑う顔もキレイだったけど、くすくすと困ったように微笑むその顔はさぞ多くの女の子の心をキュンキュンと鷲掴みで握りつぶされてきたのでしょうそれはそれは素晴らしいくらいの超級のイケメンでした、まる。
女の子にモテモテとかべつにうらやましくないもんね!泣いてなんかないぜ!
………とか、いやいやそうじゃなくて!
言ったこと全然ギャグでもないし!オレ、マジで真剣なんだよ!!
ノリツッコミしちゃうぐらい内心でキレかかってたら、オレを宙ぶらりんに吊り上げてる大男さんがつんつんとオレのほっぺたをつついてきた。
「わかってねぇなーレイス。オレ達は幻影旅団。盗賊だぜ?」
「……つまり、なんすか?大男さん」
「ウボォーだ!ウボォーギン!」
「…ウボォーさん」
しぶしぶ言い直したらウボォーさんはすごく上機嫌になった。
『よしよし!』と、ぐしゃぐしゃにオレの頭を撫でてくる。
………。
「…いいかレイス。オレ達は盗賊。欲しいものはなんでも、ぜんっぶ『奪い取る!』ってことだ」
グッと右拳を力強く上に掲げるウボォーさん。
………ってことは何?つまり?
「お前の意見は全部無視だ!!!」
「ギャアアア!!」
「ま、素質があるようならウチに再就職すればいいし?」
「問題ないよね」
「ないね」
「大有りだー!!」
助けてビスケちゃーん!
そんな願いもむなしく、オレは住み慣れたアパートから強制的に退去させられるのだった。
おわる
ビスケ夢か旅団夢(ウボォー夢?)かはっきり決めないで書いてたらすんごく長くなっちゃった…ていうかうちのサイトウボォーさんの出番多すぎじゃない?
そして主人公君はたぶんビスケの実年齢知らないカンジ
すもも