「リールベルトのオーラバーストって速いの――――?」
パスタをくるくるとフォークに絡めながらラッカーが聞いた。
ヒソカの意外な訪問で中断した食事を再開した4人。
目がみえないラッカーはかちゃかちゃと食器を鳴らしながら一生懸命パスタを口に運んでいたし、何かと愉快そうに笑いながら食べるサダソ、
ラッカーの食べ方をハラハラと眺めながら食事を口に運ぶリールベルト、1人黙々と食すギド、と食べ方は皆それぞれだった。
そしてそれまで必死にパスタと格闘していたはずのラッカーが突然口を開いた。
その口から放たれた突拍子もない言葉に、問われた本人……リールベルトは目を点にして、今まさに口に運ぼうとしていたポテトをぼとりと落とした。
「……何だよラッカー、いきなり」
なんとか気を取り直して、リールベルトは落としたポテトを拾いながらそう聞き返す。
「ん――――?聞いてみただけだけどー。ぅ―――ん?速いのー?」
オーラバースト。
リールベルトは貯めたオーラを一気に噴出することで得る推進力を利用して、その車椅子を自在に操る放出系能力者。
今まで何度か見たことのある、2、3日前に行われた試合でもリールベルトが使っていたそれを思い出してラッカーは再度聞く。
「だって急にリールベルトいなくなるんだもん。"糸"切れちゃったじゃん―――」
はたから聞くとよくわからないラッカーの言い分だったが、ラッカーの"能力"を知るその場の3人には理解できた。
「それでラッカーちゃん、速かったらどうすんの?」
と、サダソはテーブルに身を乗り出して興味津々気にラッカーに聞く。
「ぅ――――ん?えー、なんもしないよ?なんもしないもん!」
「実は乗りたいんだろ」
それらの会話を眺めつつも黙々と料理を食していたギドが、挙動不振な動きを始めたラッカーに突っ込んだ。
「えーっ!違うもん!乗りたくないよ!?そんなんじゃないよ!?」
じたばたきょろきょろしだしたラッカー。
ああこれは乗りたいんだな、と3人はあきれたため息をついた。
「確かに速いっちゃぁ速いからねー」
ぽりぽりと頭をかきながら、サダソ。
「気持ちはわからんでもないがな」
とサダソの言葉に相槌を打ったギド。
リールベルトはしぶしぶ、といった感じにラッカーの手を引いた。
「…乗るのか?」
「乗らないよ!?乗らないもん!!そんなんじゃないもん!!」
リールベルトに引かれたのとは反対の腕をばたばたと上下させながら必死に抵抗するラッカー。
そんな様子を見てそれ以上引っ張るのも気が引けたのか、リールベルトとラッカーとの距離が縮まることはなかった。
「素直になればー?ラッカーちゃん?」
いつまでも子供みたいな反応をするラッカーに、サダソはくすくすと笑いながら言う。
そういう風に言えばラッカーがさらに意地を張るのを知っていて、それでもそういう物言いをするサダソ。
無理強いを好まないリールベルトが、そんなラッカー相手に困る様子をひたすら面白がっていた。
「おいサダソ…」
「あはははは、悪い悪い」
そう言いながらもサダソはげらげらと腹を抱えて笑っている。
それを見ていると、
こんにゃろう轢き殺したろか、なんて思いがリールベルトの頭を掠めた。
「ラッカー…、乗るのか乗らないのか?」
空いた片手で額を押さえながらリールベルトが問う。頭が痛くて仕方がない。
しかしラッカーの答えは変わらず。
「乗らないもん―――!!乗らない―――!だってリールベルトのヒザの上、乗り心地悪そうだもん!!!」
ラッカーが叫んだ言葉に、サダソがさらに吹き出した音が聞こえた。
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リールベルトって結局何系なんだろう。個人的に放出系の予想でそのようにしてみました。
すもも