※4月1日に書いた嘘設定の小話です。
とある日にちの昼下がり。
少し寂れた街の、テーブルがいくつか設置してある駅前の広場で。
数匹の蜘蛛たちはそれぞれお茶やコーヒーを持ち寄ってそこで休憩していた。
本を読む奴がいたり、ケータイをいじる奴がいたり、お茶を口にしながら他愛もない話をする奴がいたり、テーブルに突っ伏してそれを聞き、たまに一言二言返す奴がいたり。
その日の『蜘蛛』は平和だった。
――――彼らの前に、あの怪物が現れるまでは。
最初にそれに気づいたのはテーブルに着いてお茶を飲んでいたマチだった。
テーブルの端っこからちょこんと顔をのぞかせ、マチを見ていた幼児。
幼児の顔は誰よりマチ自身にそっくりで、それに気づいたマチが飲んでいたお茶を虚空に向かって噴いた。
その音を聞いて何事かとシャルナークとノブナガが顔を上げる。
「うわッ、何このコ!?マチそっくりだね」
「…マチ、お前妹なんか居たか?」
「ゲッフ、ゴフッ!居るわけないだろ!!居たらアタシだってこんなに驚かないよ!!」
むせて涙目になりながら、マチは少し乱暴にお茶の缶をテーブルに置いた。
しかしマチの顔をした幼児は、ダンッ、と置かれた缶にもひるむことなく無表情な顔をテーブルから覗かせていた。
「……お前、いつの間にそんな子供を生」
「生んだ覚えはないっ!!」
「痛ッ」
読んでいた本から視線を上げて、真顔でつぶやいたクロロ。
マチからお茶の缶を投げつけられ頭に命中し、痛がっていた。
「…ねぇキミ、どこから来たの?お母さんとかはいないの?」
屈託のない笑顔を幼児に向けて、シャルナークが声をかけた。
しかし幼児は『分からない』といいたげに首をかしげるだけ。
シャルナークとノブナガが"どうしよう?""どうしようもねぇ"とお互いに肩をすくめあっていると。
「おっ、いたいた」
と、街道の方からジャズが走ってきた。
「ジャズ?どうしたわけ?」
「いや悪ィ悪ィ、ちょっと目を離したスキに逃げられちまってな」
ケラケラと笑いながら、ジャズが幼児の方のマチを抱き上げる。
「え…!?ジャズ、その子って…?」
「マチお前いつの間にジャズの子を…!?」
「違うっていってんだろ!このウスラトンカチども!!―――ジャズ、アンタも『違う』ってちゃんと説明しろ!!」
顔を赤らめながら、焦ったようにジャズに迫るマチ。
だがジャズはマチの心情を読んでか読まずか、うっとりと自慢げな表情で。
「…そうさ、こいつはオレとマチとの愛の結しょ」
ガスッ!!
「いでぇ!?マチお前、ガキ抱いてるのに顔ぶん殴る事ねーだろ!!」
「…いいからちゃんと説明をしろといってるんだ…」
指をボキボキ鳴らしながら、鬼の形相でマチがジャズに迫る。
さすがに身の危険を感じたジャズは抱いてた幼児を下ろして土下座した。
「スイマセン嘘ですマチ様。僕と貴女はなんの関係もありません許してください」
「よし。―――で、何なんだ、このコ?」
と、マチ似の幼児を指差すマチ。
シチュエーションだけ見ると"妻の尻にしかれてるダンナ"の姿そのものだなぁなどと、他人事のようにシャルナークは思った。
「いやな、オレの能力…あー…"分身(ダブル)"なんだけど、オレの姿だけじゃなくて別の姿にもできたら戦略の幅が広がるかなーっと思って、ちょっと試してたんだよ」
「で、マチの姿にしようとして失敗したと」
「まあそんなトコだな」
「つーか…、いいのかそんな大事な事喋っちまって」
能天気なジャズにノブナガが突っ込む脇で、またしてもゴゴゴ…とマチの空気が変わっていた。
「…てか、なんでわざわざアタシなんだ」
「おいマチ、こんなトコでキレんな。」
「いやオレ、ジャズのやりたかったこと分かるよ。…なんとなくだけど。」
「オレもわかった」
「煽るなよ団長。シャルも」
ノブナガが冷汗をたらす。
しかし案の定というか、後ろでマチは切れており。
「こんのド変態がっ!!!」
顔を真っ赤にして、マチがジャズに平手打ちを繰り出した!
ばっちぃい!!
「がふっ!!?」
ジャズはとっさにガードしたがあえなくガードごと吹っ飛ばされ、一つ向こうのテーブルに頭を突っ込んでいた。
「ジャズ…。男としてジャズの気持ちも分かるけど、人選を間違ってるよ…」
はふぅ、とため息を吐くシャルナーク。
するとジャズが鼻血をたらしながらもテーブルの残骸の中から復活して。
「ばかやろ、シャルナーク!あの"マチが"オレの言う事を聞くからイイんじゃねーか!!」
「ジャズ、後ろ後ろ。」
―――と、マチから本日三度目の暴行を受けたジャズだった。
なんちゃって。
リバイアサンは実際はジャズくん以外に擬態できない設定なんですが、
エイプリルフールだしちょっと悪ふざけしてもいいかなぁと思って…
ちびクロロとかちびジャズくんとかでも面白かったかもしれません
すもも