「ゼロ〜♡♡」
朝食の後、広い森林公園の片隅で僕とクラピカとレオリオは楽しく談笑しながら休息をとっていた。
ゴンとキルアは朝ごはんをめいっぱい食べてからどこかに遊びに出かけている。
しばらくすると僕の名を呼びながら、いやににこやかな表情でキルアが駆けて来るのが見えた。ゴンもそのキルアの後についている。
呼ばれた僕と、クラピカとレオリオは話を中断してそっちに視線を向けた。
「はい、どうしました?キルア?」
「ちょ、ちょっとキルア〜;;」
「いいからゴンは黙ってろって!」
なぜかバツの悪そうな表情のゴンを押さえてキルアは、『なんでもない』と言いたげに僕に向かってにっこりと微笑む。
一体なんだろう?
『…………気ぃつけろゼロ。何か企んでるぞコイツ。』
僕の中でジャズがそんなことを言う。
『あはは〜、そんなことないですよジャズ。ちょっとひねくれてるだけでキルアはいい子ですから』
君とおんなじですよ、なんて言ったらジャズは黙った。なんだか複雑な気持ちらしい。
「…で、どうしたんだ?キルア?」
「カブトムシ捕まえたぐらいで喜んでんじゃねーぞ」
「なんだよリオレオ、そんなんで喜ぶほどオレはガキじゃねーよ!」
「
レオリオだっつーの!…ってお約束か!!何回言やわかんだよ!?」
「まぁまぁレオリオ、押さえて押さえて。…それでどうしたんですか?キルア。何かいいことでもありましたか?」
鼻息を荒くするレオリオを、あきれた表情のクラピカと一緒になんとか抑えて僕はキルアにもう一度そう聞いた。
するとレオリオと子供みたいに(子供だけど)にらみ合っていたキルアがころっと表情を変えてこちらに向いた。
「そうそう!あのさ、さっき街でサーカス団の宣伝でピエロが出てて、お菓子配ってたんだよ。
オレ達いっぱいもらったからゼロにも1個あげよーと思って持ってきたんだ!」
キルアの後ろでゴンが微妙な顔をしているのに気付いて、クラピカとレオリオは思った。
「(それは嘘だろうキルア…;)」
「(…何考えてんだ?)」
こそりと話すクラピカとレオリオ。
だがゼロは、嬉しそうに話すキルアにつられてか、はたまた本気で今の話を信じたのか、柔らかな笑みを浮かべてキルアをなでた。
「へぇ、そうなんですか。よかったですねキルア。僕もピエロ見てみたかったです」
『〜〜〜!おいゼロ!!なに和んでんだ!!明らかにおかしいだろ!コイツなんか企んでるって!!』
『えー、だから何を企んでるって言うんですか?この状況で。そのなんでも疑うクセ、直したほうがいいですよ?ジャズ』
知らない人はともかく、キルアは友達ですから。
あ、でもそのピエロが怪しい人だったから僕に毒見させようって言うのはキルアならなんとなくありそうかも…。
ピエロ。
ピエロか……。
……………ん?……………ヒソカさん?
……いやいや、まさか。
「…ゼロ、いきなり黙って……どうした?」
クラピカが首をかしげて僕の顔を覗いたので、僕はハッとした。
するとレオリオがあきれた顔で突っ込む。
「いくら鈍いゼロでも今のはやっぱ怪しいと思ってんじゃねーか?」
「えっ!?今、何気に酷いこと言いませんでしたかレオリオ!?」
「(ほら、やっぱりダメだってキルア。諦めようよ)」
「(何言ってんだよゴン、後もう一押しだろ)」
「なんの相談ですか、2人とも?」
「ゼロ……あの、実は
ムガッ」
「いやっ!なんでもないんだ!こっちの話!!」
何か言おうとしたのか前に乗り出したゴンの口(というか顔)をむぎゅっと押さえてキルアがそう言う。
にこにことキルアは笑ってるけど、ゴンの顔がみるみる赤くなる。…窒息しますよ?
「そうですか?…とりあえずゴンがかわいそうなので離してあげて下さい」
「あっ。ワリ」
「ぶはーっ!!キルア〜!!」
「まぁまぁ、悪かったってゴン。…んで、ほらこれ。ゼロにあげるよ。食べてv」
ごそごそとキルアが取り出したのは、可愛くラッピングがなされたクッキーの袋だった。
「わー、ありがとうございます。ちょうどおなかが減ってきたなぁと思っていたんです。食べてもいいですか?」
「いいよ、いいよ。食べてよ是非。」
「じゃあ頂きます。クラピカとレオリオもどうですか?」
「いや…、私は遠慮しておくよ」
「オレもいらねぇ……」
クラピカとレオリオは見た。
ゼロの後ろで悪魔のようにどす黒く笑ったキルアを。
「そうですか…じゃあ僕だけでなんですが……、いただきますキルア」
「ああ!食べて食べてv」
サクッ。
「……ゼロ、おいしい?」
もぐもぐとクッキーを食べる僕をキルアとゴンはじーっと凝視していた。
…恥ずかしいなぁ、そんなに見ないで下さい。
「んく…。おいしいですよ?なんでですか?やっぱり僕に毒見…」
その時、ドクンと、強く心臓がはねた。
―――ドサッ!!
「んっ、あ……かはっ……」
「「「ゼロッ!!」」」
……苦しい。
喉が焼けるように熱いし……心臓が締め付けられるようで、酷く痛む。
「ゼロッ!!しっかりしろ!ゼロ!吐き出せ!!」
レオリオが倒れた僕の体を抱き起こし、クラピカも心配そうに僕の顔を覗いている。そしてレオリオは少しでも楽になるようにと、背中をさすってくれた。
「キルア!!ゼロに一体何を食べさせたんだ!?」
クラピカがそう怒鳴るのが聞こえた。
―――だけどキルアは何も言ってくれない。ただ黙って僕を観察しているようだった。
『……こりゃあ……』
苦しいよ、ジャズ…。助けて……。
「…あっ、ん……はァんっ!!」
まるで体に電流が走ったみたいだった。このまま僕、死んじゃうのかなって…思った。
けど…
「あれ?」
全然痛くない。
何事も無かったかのように体から痛みが引いた。
きょとんとしてると、クラピカもレオリオもあっけに取られているのが見えた。
「……ゼロ……?」
「よ―――っしゃああ!!美少女一丁できあがりぃいい!!!」
「え?」
一体何の話ですか?
つづく
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唐突にホルモンクッキーネタ
すもも