エレベーターの降りた先はがらんとした薄暗い地下道。
一体どこまで続いているのか見当もつかない。その先は闇に続いている。
誰もいないこの地下道で僕は1人、ぽつんと立ち尽くしていた。
本当にここ、ハンター試験会場なのかな…すごく不安になってきました………。
僕の名前はゼロ=シュナイダー。
先日まで、かの有名な天空闘技場で闘士をやっていた、少しは腕に自信のある念使いです。
闘士をやっていたと言っても、180階でですけどね…。
200階にも1回だけ入ったことがありましたが、僕には向いてないと思ったし、ファイトマネーも貰えないということだったので180階にくすぶってひたすらお金を稼いでました。
だいぶお金もたまったし、ハンター試験も迫っていたのでこの機会に止めましたけど。
ハンター試験かぁ……。
イメージしてたのとずいぶん違うんで…、今僕たった1人だしすごく不安です……。
だって焼肉屋さんから入るんですよ!?
「ステーキ定食を弱火でじっくり」ですよ!?
合言葉にしてはありえませんよね!??
ね!?
ね??ジャズ!?
『うるせぇバカ。すこしは黙ってらんねーのかよゼロ』
「ひ、ひどい!!バカって言いましたね!?僕はバカじゃありません!!」
「………あの…どうかしましたか?」
「
ひゃああっ!!…な、ななななんでもありません!!」
……び、びっくりした…。
いつの間にか背後に小さな人が立ってました。
「…ならいいんですけど………はい、番号札です」
「あっ、ありがとうございます;」
その小さな人はそう言って、僕に懐疑的な視線を投げつつも1番の番号をくれました。
す、すいません大声出して…;
それはともかく……
受験番号1番、か。
なんだか幸先よさそう……。
『一番先に落ちるかもしんねーぞ?』
くすくすとジャズが笑っているのが感じられた。
『何でそういうことばっかり言うんですか…ジャズのバカ…』
あ、そうそう。
このジャズっていうのは、僕の相棒の名前。
そして僕とジャズはひとつの体を共有している二重人格者です。
でもジャズと僕は同じ体を使っているけど、好みも性格も、念の系統までが正反対。
だから僕らは会う人会う人に嘘をつく。
"双子の兄弟なのだ"と。
僕ら2人が『1人』だと知る人はネテロ会長とか、ジンさんとか、本当にごく一部の人たちだけ。
これからも、それを他人にばらすこともないし、知られることのないように行動するつもりです。
『自分』を知られることが、ハンターの戦いにおいて命取りになることは重々承知してるから…。
「…にしても暇だなぁ…。」
誰も来ないや………。
『しりとりでもするか?』
「しりと……しません…;」
僕らは頭の中で会話できる。
今は人がいないから(番号札くれた小さな人があいかわらず不思議そうに見てるけど)僕はそのまま口に出す。
『じゃあ我慢しろ。…暇なら昼寝でもしてな。開始まで長いぜ?』
「だって僕が休んだら君が出るでしょ?」
『出ねーよ。コレはおまえのライセンスを取るための試験だろ?オレは手ぇ貸さねぇからな。ジジィともそういう約束だしな』
そう、コレは僕のための試験。ジャズはハンターライセンスを持つプロのハンター。
モノでもヒトでも、なんでも"始末"する仕事人、「始末屋ジャズ」として有名。
店は構えてないけど裏の世界でその名を知らぬものはいないくらいに。報酬は破格。
僕はそのおこぼれで生活してます;…いやいや、だから天空闘技場とかでお金稼いだりしてましたよ!
ジャズのめんどくさがる簡単な仕事とかも手伝ってますよ!?タダメシは食ってませんよ!!?
同じ体、1人の人間だから僕はジャズのライセンスも使える。
けれど『双子』で通しているからにはそれは色々とマズイわけで………;
以前もかなりヤバげなオジさんたちに随分と詮索された。
もちろんジャズがい〜ろ〜い〜ろ〜脅しをかけたからその場はなんとかなったんだけど…。
それをネテロ会長に話したら、特別に僕の名前でライセンスを用意してくれて。
「おぬしの実力は十分承知じゃ。持って行くといい。」
って言ってくれた。
だけどジャズは自分の力で試験を突破してライセンスを受けたわけだし、僕も自分の力だけでライセンスを取りたい。
だから今、僕はこの場所にいる。
「ひ、暇だ…」
『うぜぇー…だったら寝てろ』
あまりの暇さに耐え切れなくなった僕は、はぁ、とひとつため息をついて壁際に移動し、座り込んだ。
早く来たほうがいいのかと思って早めにきたけど、早すぎるのも問題だなぁ…。
ベルトで肩にかけていた長剣をおろす。大きめのウェストポーチと腰の剣は…うん、邪魔にならないからこのままでいいや。
そして僕は眠りについた。
つづく
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主人公設定読まずに本編読む人もいるかなぁと思って、とりあえず解説的プロローグ。
すもも