double style ◆09:狩る者と狩られる者



人が増えてきたドサクサに、僕はヒソカさんとイルミさんから離れ壁際に座った。


ふぅ………こ、怖かった………………;






………それにしても本当にどうしたんだろう。

ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ。誰1人降りてこない。

なにかあったんだろうか。




ついさっきゴールしたばかりの男性が、ゴールしてそのまま倒れ込んで、動かなくなった。

血塗れのその男性は、深く腹に致命傷を受けていた。


僕がイルミさんと降りてきた道も、思い返せば危険な罠だらけだったっけ。




ふと、サトツさんが一次試験開始前に言っていた言葉を思い出す。


『ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり、実力が乏しかったりすると怪我したり死んだりします―――――』



………死んだり………




嫌な考えが、頭をよぎる。


僕はふるふると頭を振って、ソレを否定した。





―――信じなきゃ…。

大事な、仲間なんだから………。




「…みんな…大丈夫ですよね…」


つぶやくと同時に、『残り1分です』とのアナウンスがホールに響いた。









ゴォオン…。



時間終了まであとわずかというところで、ドアが開く音がした。

僕は膝にうずめていた顔を上げ、その音の先を見た。



「ケツいて――――――」

「短くて簡単な道が、滑り台になってるとは思わなかった」


「ゴン!キルア!クラピカ!」

扉の向こうから、その身をボロボロにしたゴンとキルアとクラピカの3人が姿を現わす。

僕は思わず、3人のもとへと駆け寄った。


「あっ!ゼロ!」

「無事だったんだな」


「はい!おかげさまで!そっちは3人一緒の道だったんですね?………レオリオは…?」

レオリオの姿が無くて、もしかしたら別の道だったのかと落胆していると―――


「大丈夫だよゼロ。レオリオも…」

「…全く、ギリギリだったな」


「レオリオー!!」


レオリオが扉の奥から最後に姿を現わした。


4人とも同じ道に落ちていて。ちゃんと皆、欠けずに塔を降りてきていた。



「よかったぁ…」

「おっ、ゼロ!お前も無事だったのか!」

「はい!」


再会の喜びをみんなと分かち合っていると、4人が出てきたのと同じ扉から、非常に気まずそうにトンパさんも出てきた。




「………あ…トンパさんもご無事だったんですね…」

「おまっ…!!何でオレのときだけガッカリするんだよ!もっとオレのこともねぎらえよ!!」




















第三次試験は最終的に26名が通過した(内1名死亡)。

塔の外で全員が集められ、休む間もなく次の試験についての説明がなされた。



「諸君、タワー脱出おめでとう。残る試験は四次試験と最終試験のみ。四次試験はゼビル島にて行われる。

……では早速だが、クジを引いてもらおう」



「クジ…?」

「何するんだろうね?」


「このクジで決定するのは、狩る者と狩られる者」



試験官の話を要約すると、四次試験の内容は『ゼビル島での一週間の滞在期間中に6点分のナンバープレートを集める』こと。


テスト生達でプレートを奪い合う――――早い話が"人間狩り"だった。




説明を聞き終わると、テスト生達は皆一様に黙りこくった。


誰彼洩れず、自分を狙っている人間がこのなかにいる。

皆、誰とも視線すら合わせず情報を遮断した。


全体的に重苦しい雰囲気の中、島に向けての船は出航となったんだ。









「ゴン」

「あ、ゼロ…」

船内で、片隅に座り込むゴンに声をかけた。



「隣、いい?」

「うん…」


僕はゴンの了承を得て、隣に座った。


そのままの格好でしばらく沈黙が続く。



すると、「よ!」と声を上げてキルアもそばに来た。キルアはゴンを挟んで、僕とは反対側に座る。




「お前ら何番引いた?」

キルアが僕らに向かって聞いてきた。


「…………キルアは?」

と、ゴンが聞き返す。僕は黙ってた。


キルアも、「ナイショ」と一言。




「「「…………。」」」


少しの沈黙のあと、僕ら3人は顔を見合わせて笑った。




「安心しろよ、オレのターゲットはゴンでもゼロでもない」

「オレもゼロやキルアじゃなかったよ」

「僕もです」



「んじゃ、せーので見せっこするか?」


キルアの提案に、僕もゴンも乗った。

「せーの!!」の掛け声で、引いたクジを差し出す。



キルアは199番。

僕は198番。

ゴンは、





―――――44番。





「………ちょ…、お前マジ?」

「うわ…。ヒソカさん…ですか…」


僕もキルアも、ゴンの引いたナンバーを見て少なからず同情した。


「お前クジ運ないなー」

「やっぱり?」

「『やっぱり?』って…ゴン…;」

悪びれも無く言うゴンに、なんだか呆れた。…まぁ引いちゃったものは仕方ないので諦めたという感じなんだろうか?



「キルアの…これ、誰の番号だっけ?ゼロと1番違いだけど」

「…やっぱしお前もわかんねー?」

「印象ないもんね…;」


「ゼロのはこれ、誰のかわかる?」

「いえ、全然。」

キルアが知らんぷりするかたわら、僕も真顔でぷるぷると手を横に振った。



「やっぱお前らでもわかんないのかー…。オレも説明聞いてから周り探してみたんだけどさー、もうみんなプレート隠してやんの。せこいよなー」

「でもそれが普通なんじゃないですかね?自分を狙ってるのがどんな人間かわからないわけですし…。」

「ふん、肝っ玉の小さい奴ら………ゴン?」


僕らの会話も耳に入っていないのか、虚空を見つめるゴン。その手はわずかに震えていた。

僕らの視線にハッとして、ゴンは顔を上げた。





「お前それ、うれしいのか怖いのか、どっちなんだ?」

44番の番号を指して、キルアがゴンに尋ねる。


ゴンは少し考えて。




「…………両方…かな。

…これがもしただの決闘だったらオレに勝ち目はなかったろうけど、プレートを奪えばいいってことなら何かいい方法があるはず…。

今のオレでも…少しはチャンスがある。そう思うとさ、怖いけど……やりがいはあるよ」

「……そっか」

僕は2人の会話を聞いて、なんだか安堵した。




「ま、お互いがんばろうぜ。…生き残れよ、ゴン。」


立ち上がるキルアに向けて、ゴンは親指を立てて笑う。


「キルアも油断せずに」

僕もその背中に言うと、キルアは手をひらひらさせて応えてくれた。





「…さて、じゃあ僕も行きます。ゴンの集中を乱したくないですから」

「そお?オレは全然構わないのに」



「いえ。次は………最終試験で、会いましょう?」



そう言って、手を差し出す。

暗にその言葉にこめられた意味をゴンも理解してくれ―――――共に握手した。




「うん。最終試験でね…。ゼロもがんばって」

「はい」




そうして笑って、僕らは別れた。







つづく


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またレオリオ夢くさい感じがする…

すもも

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ももももも。