double style ◆10:彼のターゲット




「時間のムダだぜ。いくら尾けまわしたって、オレは隙なんかみせないよ」



四次試験がスタートして2日目。





「ホントいやなんだよなー。どうせ倒したって1点だろーしさぁ」

ゼビル島の森の中を歩いていたキルアは、試験開始時から自分を尾けまわす(尾けまわすだけで何もしてこない)気配にうんざりして、とうとう行動に出た。

追っ手が隠れているだろう場所へ向かって、いかにも「かったるい」というような顔で歩き出す。





やっと出てきたと思ったら、追っ手の数は増えて3人組へと変わっていた。



自分を尾けまわしていたであろう1人の男が自分の前で立ち止まり、言う。

「なぁボウズ、プレートをくれねーか。おとなしくよこせば何もしない」


子供だからと舐めきった上から目線が気に入らない。



「バーカ」

と、答えてやった。



ドゴッ!!



キレた男から、まったくたいしたこともない蹴りをもらう。

「ばっちりみぞおち」とかなんとか言っていたが…


「よっ」

と、キルアは手を使わずに足の反動のみでその場に起き上がる。




「…198番か」

自身を蹴った男のポケットから、悟られること無く盗み出したプレートの番号を読み上げてやった。

とたんに 慌てたように男がポケットをあちこちまさぐる。他の2人も驚いた顔をしていた。




「オレの欲しい番号と1番違いってことは――――――もしかして199番はそっちの2人のどっちかかな?」







自分は運がいい。


探さなくても向こうからやってきた、獲物。もちろん逃がす気など毛頭ない。





キルアは彼らを挑発する。








3人組の男達はフォーメーションをとり、自分との間合いを詰めてくる。


キルアは木を駆け上り、先ほどプレートを盗んだ男とは別の男の背後を取る。

そして首に鋭い爪を押し付けて言った。


「動かないでね。オレの指、ナイフより切れるから」





押さえたその男のプレートを見るが…、

「あれ、こっちは197番か。も――――、オレってばこういうカンはすげー鈍いんだよな」



そして最後の1人に問う。


「ねー、あんたが199番?」

「…ああ」

「ちょーだいv」



言うとそいつは渋い顔で199番のプレートを投げてよこしてきた。

「サンキュ――」






そうして手に入れた3枚のプレート。

そのうちの2枚のプレートをポケットにしまいこみ、キルアは残った197番のプレートを男達に返す……わけもなく、それを手に大きく振りかぶった。



「さーて、こっちのいらないのは…」


勢いをつけ、197番のプレートを遠くへ投げ飛ばす。

プレートはまっすぐ、彼方へと飛んでいき見えなくなった。



「じゃ、あと5日あるし、がんばって探しなよ。じゃね」

あ然と空を眺める3人組の男達にそう言い残して、キルアはその場を後にした。







そしてキルアの手元に残ったのは、199番と198番のプレート2枚。

199番のプレートはキルアのターゲット。この四次試験に合格するには絶対に必要だ。

しかし198番のプレートはキルアにとっては1点にしかならないクズプレート。自身のプレートと合わせて6点分をすでにゲットしたキルアには必要がないものだ。




……とはいえ、この番号をターゲットにしている人間が自分の身近にいたのをキルアは忘れていなかった。



これを見せたら、彼はどんな顔をするのだろうか。




くるくるとプレートを回しながらキルアは笑った。とても愉快そうに。





「……さて、探すか」



あと、5日。




















試験開始から6日が過ぎた。


残り1日。




「………マズイ。」


マズイ。

絶対マズイ。






森の中でゼロは独り、青ざめていた。



ターゲットは198番。

それが誰か全くわからなかったので、結局適当に3人狩ることにした。


6日間島をうろついて、見つけたのが2人。

手に入れたプレートが、362番と、89番。


あと残り1枚は、自分をターゲットにする人間を返り討ちにして手に入れるつもりが、全くその気配すらない。



「ああ〜; ゴンに『最終試験で会いましょう』とか言っといて……。僕が落ちたら本気でカッコ悪いなぁ〜…」





自分をターゲットにしてる人間が、いないわけはない。



なのに一向にやってこないとなると……。

もうすでにその人間が狩る者に襲われ致命傷を負っているのか、それとも自分を見つけられないのか。


可能性はいくらでもあった。







「はぁ、どうしよ…」



この広い島内で、向こうも警戒しているであろう他の受験生を探すのには『円』は向かない。

かといってレイ・フォースを使おうにも、知らない人間のもとには『飛べ』ない。


最終試験に参加していて、なおかつ知っている人間といえば…



ゴン

キルア

クラピカ

レオリオ



…当然だが、彼らのプレートを奪うつもりはない。

試験に参加している以上、ライバル同士なのは確かだが…。



だとすると他には…



ヒソカ

ギタラクル






無理!!!




気づかれないように接近して、プレートを奪って逃げるならまだしも…。



レイ・フォースは思い描いた人間のすぐそばに落ちる。


そうなるとレイ・フォースを使った時点で、接近がばれる。

真正面から挑んで無事にプレートを奪える自信はない。

奪えたとしても、大ダメージは確実だろう。

致命傷を負わされでもしたら、最終試験どころではない。


それどころか返り討ちにされる危険だってある。



第一ヒソカはゴンのターゲット。ヒソカは狙えない。








「うわあ…。ギタラクルさん一択なのか…;」

「なにが?」

ため息と共に吐きだした独り言に返答があって、心臓が止まりそうになった。



このシチュエーションには覚えがある…。





ま さ か






思い切って振り向いた。




「なに百面相してんの?ゼロ」

「キルア!〜〜〜あぁ〜驚かさないでください〜〜……」



よかった…ギタラクルさんじゃなくて……; ほんとによかった………;







「ま、いいけど。…ゼロ、点数集まった?」

「いいえ、あと1点足りません」

「ふーん…」


「キルアは6点、集まったんですか?」

「とっく」

「へぇー、よかったですね〜。じゃああと1日、点数を守りきればキルアは合格なんですね。羨ましいです」






パチパチと手を叩いて、キルアの合格を喜ぶゼロ。



――――嬉しそうなその顔を見て、キルアは少しためらった。


今はポケットの中にある198番のプレート。



これを見せたら、目の前の彼はどんな顔をするだろうか。

喜べばいいが、





…もし拒絶されたら…。







「……ねぇ、ゼロ」

「なんですか?」

「………」

「…どうかしたんですか?キルア?」




ポケットのなかで、ソレをいじくる。


「……?」


「…あのさっ、……これ、なんだ?」


キルアは思い切って、プレートをゼロに見せた。







「あっ…?あぁ〜〜〜〜!!!198番!!…キルアが見つけたんですか!?」


「そう。オレのターゲットって199番だったろ?そいつの連れだったんだ」

「へぇえ〜、ターゲットみつけたんですか〜。キルア、運いいですね〜」







「…欲しい?」


「はい!欲しいです!」





キルアはゼロの前に、そのプレートを差し出す。


しかし、それがゼロの手に触れる前に、キルアはそれを引っ込めた。

ゼロがつんのめる。



「キ、キルア?」

「タダじゃヤダね」





「意地悪ですねぇ〜…;そんなんじゃモテないですよ?」

「あれ、こういうコの方がモテるって知らないの?ゼロ」


「そうですか〜?;」








「コレ欲しかったら―――――オレの言うこときいてよ」









つづく


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えーと、キルアがぶん投げた197番のプレートをハンゾーがゲットして、ハンゾーは6点。
原作でハンゾーがゲットしていた残り3点分(2点分?)のプレートをゼロさんが集めてたってことで。
ちなみにトンパの存在は忘れられています。

すもも

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ももももも。