double style ◆13:最終試験開始



「最終試験は1対1のトーナメント方式で行う。その組み合わせは、こうじゃ」




第一試合、ゼロ 対 ハンゾー













ハンゾーさん、か。

念はまだ使えないにもかかわらず、肉体もオーラも研ぎ澄まされてる。どういう修行をしたらあんな風になれるんだろう。


……この人、強いな。




心地いい緊張感が僕を包む。

まるで"あの場所"に立っているような、そんな懐かしい感覚。



天空闘技場のリングの上。


そこに今、僕は立っている。




ぎらぎらとした…戦いに餓えた者達が集まるあの場所は、いまでは僕の数少ない居場所のひとつで。

いまだに耳に残る…今までに何度も何度も耳にしたあの大きな歓声が、ハンゾーさんを前にして、あのリングに上がる感覚とともに鮮明によみがえる。




念を使わない戦いで、ここまで心が高揚したのはいつ以来だろう。

あの場所でもめったにお目にかかれないような強者を前に、うれしくて拳が震えた。



「はじめまして、あなたと話すのは初めてですよね。僕は…ゼロ……、…ゼロ=シュナイダーです。よろしくお願いいたします」

「…あぁ、よろしく。オレはハンゾーだ」




ハンゾーさん。

この人、―――強いな。嬉しいです。



心地いい緊張感。


久々に、イケそうな―――――





「…本気でいかせて頂きますので、少しの間胸を貸してください。お互いに大怪我しないように気をつけて、…楽しくやりましょう」

いつも肩からベルトで下げている長剣を鞘から抜き、鞘を投げた。

そして、試験ではまだ抜いたことの無かった腰の剣も抜く。



長剣をハンゾーさんにまっすぐと向け、もう1本は逆手に持って、後ろに構える。

息を吸って、吐いて。

そして閉じていた目を、ゆっくりと開けた。


まっすぐ構えた長剣の切っ先、その向こうにハンゾーさんの瞳を見据える。


強い色を宿す瞳。嬉しくてゾクゾクする!




「とりあえずまっすぐ行くんで、避けてくださいね。…あなたならそれぐらいできるって…信じてますから」




僕の最速の構え――――"キラー・ビー"


まっすぐに構えた長剣で敵を突き通す。

今までにこの一撃を避けられたことは無い。





あなたを認めたいから――――あなたとなら本気で戦えそうな気がするから……それを確かめるために、僕はこの一撃を放ちます。






「行きます」


狙いは一点。






「始めッ!」

審判の声を合図に、ゼロとハンゾーが皆の視界から消えた。
















「――ッ!!」


ゼロ…って言ったか。


初めて見たのは二次試験後半。クモワシの卵を獲りに行った時だ。


妙な力を使う不思議な奴だと思っていたが、相対してみると別の意味で不思議な奴だった。



ここはハンター試験。ライバルを蹴落としてでも、合格をもぎ取るのが普通。

なのに 本気を出すから怪我をしないようにと、奴はオレのことを気遣う。


おかしな奴だと思った。とんだ甘ちゃんだ、ってな。


―――だがオレのそんな認識は間違ってたと、この後存分に思い知ることになった。



審判の開始の合図とともに、奴は常人には出せないようなとんでもねぇスピードでオレの方へとまっすぐ突っ込んできやがった。

鋭い殺気だけをオレに向けて。



……ガチだった。この野郎。



「…っく!」


右肩を狙ったその一撃をオレは何とかギリギリでかわして、左に跳んだ。


しばらく様子見をしようと思っていたが、余裕こいてる場合じゃなかった。




そして 一撃がかわされたと見るや奴はすぐさま踵を返し、ぴったりとオレについてきやがる。

ホント、一体どういう反射神経してんだかなぁ。鍛え抜かれた"忍び"だぜ?オレは。

それなのにスピードはほぼ互角か、奴のほうが少し速いときてる。



仕方なくオレは奴のほうに振り返り構えた。


長剣をわずかに軸をずらして避けて、剣を握る奴の腕をそのままさばいて二撃目を打ち込めないようにする。

突き刺すような一撃目を軸ずらしで避けたことで、オレは奴の懐に入り込む形になる。


空いた腹に一発お見舞いしようとしたが奴も体をそらして避けた。


―――あ、やべ!


後ろ手に構えていた奴のもう1本の剣が薙ぐようにオレを強襲する。

間一髪、オレは後ろに跳んだ。


腹の皮一枚、スレスレで剣を見切る。

ビッと服に亀裂が入って、風を切った斬撃に腹が冷えた。あぶねーな!


見れば奴の服も、オレの拳がかすっていたのか、破れていた。




にっこりと奴が微笑む。






「(こいつ……、強ぇ…。予想以上に)」



さっきまでの、おっとりした柔らかい雰囲気からは想像もできないほど、奴の鋭い殺気が寒いくらいにあたりを満たしている。


それなのに顔だけは変わらずに柔らかく笑っていて。

笑顔の向こうに底知れぬ何かが見えた気がして、ざわりと腕が総毛立った。





「(へっ。…オレ以上の天才なんているわけねェと思ってたが、世界ってのはなかなか広いな)」


このハンター試験でヤベェのは44番…ヒソカだけかと思ってたが……。


冗談じゃねぇ。優男な見た目に騙された。


1番……ゼロ=シュナイダー、か…。


コイツも相当ヤベェ!




「お前、やるな」

「…貴方も」







綺麗に笑って言うくせに、殺気の濃さは変わらずだ。

一分の隙も逃さねーって目でオレをまっすぐに捉えて、ゼロの奴は別の型で剣を構えなおす。



……修行のためにと国を出て正解だったぜ。


加減なんていらねぇな、とオレもゴキリと指を鳴らし、手元の暗器を探る。






そしてもう一度、…今度は奴に向かって、オレは駆け出した。









つづく


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何回修正しても短い…

すもも

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ももももも。