う〜ん…よく寝たのはいいけど、今いつなんだろう?
ハンター試験の後、ジャズが仕事だというので体を空け渡した。
僕にとっては一眠りの間だったけど…あれからどのくらいたったのかな?
『ちょうど20日くらいだな』
「けっこうかかりましたね」
『準備と移動にちょっとかかったからな』
僕は着替えながらジャズに尋ねる。
「なにか特別なことはありましたか?」
『……………ねぇよ』
「…なんですかその間は。……言いたくないならいいんですけどね。なんにせよ無事でよかったです」
ジャズに任せておけば"万が一"なんて無いと思うけれど、やっぱり寝たまんま死ぬのはイヤだ。
仕事が仕事だけに心配なときもある。
…ゾルディックの人とかともやりあったりしてるって、当のキルアやイルミさんも言っていたし…。
「ゴハンを食べたらクラピカに連絡入れないといけませんね〜。今どこに居るんでしょう?」
『ククルーマウンテンだ』
………独り言だったのに。
「へぇ………………何で知ってるんですか?」
『試験中に聞いてたから』
「そうじゃなくて………まぁいいですけど…。」
『近くからバスが出てるぞ』
「そうですか〜……って…近いんですか!?」
『バスですぐ』
「ふ〜〜〜〜。そうですか;」
ピルルルッ
「ん?」
試しの門をクリアーしたゴン、クラピカ、レオリオ。
山に向けて出立の朝。ゼブロたちに別れを言って、森を進んでいると突然、クラピカのケータイがあたりに鳴り響いた。
「クラピカ?誰から?」
「…うむ。ゼロのようだ」
「マジか、やっと仕事終わったのか!?」
「ね、クラピカ!早く出て!」
クラピカはケータイを取り出して、電話に出た。
『…もしもし?クラピカですか?』
「うむ、そうだ。ゼロ、仕事は終わったのか?」
『あ、はい、終わりました!時間がかかってしまって申し訳ありません!今どこですか?キルアの家ですか?』
「そうだよ!!ゼロも早くおいでよ!!」
通話中のクラピカ…その先のゼロに向かってゴンが叫んだ。
『わ、ゴンですか?あいかわらず元気ですね〜。…今僕もそちらに向かっているところです。もう少し待っててもらえますか?』
「うん!待ってるよ!早く来てね!ゼロ!!」
『はい、がんばります〜それでは〜…』
そこで通話は切れた。クラピカもケータイをしまった。
「やった!ちょうど良かったね!!」
「そうだな、ギリギリってとこだな」
ゴンとレオリオの会話を聞いていたクラピカが、何かに気づいた。
「ところでゼロは、試しの門を開けられるのか?」
「「あ」」
先ほど別れを言ったはずの3人が戻ってきたのにゼブロが気づく。
「おや?いやに早いねぇ…?」
ゼブロが言った言葉に、守衛室に行こうとしていたシークアントもゼブロの視線の先を見た。
「おぉい、どうしたんだ?」
「はは…。もう1人知り合いが来るらしくて戻ってきたのです」
シークアントの当然の疑問にクラピカが答える。
「守衛室ででも少し待たしてもらってもいいかな?」
「おぉ、いいとも。別に急ぐことはねぇよ。屋敷は逃げねぇしな」
シークアントは笑って言った。
「そいつも友達かい?」
「そうだよ!」
守衛室…門までの道すがらシークアントは3人から話を聞いていた。
「あとからおいかけて来るといっていたのですが、門を開けられるか心配になったので戻ってきたのです」
「それもそうだな。ま、たとえそいつが開けられなくても、お前らが開けてやればいいだろ。開けられなくても、門から入ればいいだけだしな」
「あ、そっか!」
守衛室でしばらく話していると、日に一本の定期バスがついた。
バスから走って降りてくる男に、一番最初に気づいたのはゴンだった。
「あ!ゼロ〜〜〜〜!!」
ゴンが走り出す。
「ゴン〜〜〜〜!!」
ゼロも両手を広げて走ってきた。
がしぃっ!!
ゴンがゼロに跳びついて、ゼロがゴンを抱いたままくるくる回る。
「会いたかったよ〜〜〜vvゼロ〜〜〜〜!!」
「僕もですよ〜〜〜vvゴン〜〜〜!」
ゼロの満面の笑みに、クラピカもレオリオも懐かしさを覚えた。
「ふ…、たかが20日程度の別れなのに……ゼロの笑顔を見ると安心するな」
「そうだな。これからとんでもねぇ家に行くって時だし…待ってて正解だな」
ゼロが居るとなぜか安心できる。
あの笑顔のせいだろうか?
「あ――――!!」
突然、シークアントが声を上げた。4人がシークアントを見る。
「あんたっ!?……コイツだよ!!ミケを食ったのは!!」
「「「えっ!?」」」
「…ミケ?なんですか?」
「あんた3、4日前に来ただろうが!門を飛び越えてっ!!中に入ったろ!!」
シークアントの叫びを聞いて、クラピカは何日か前に彼から聞いた話を思い出した。
「じゃ、ゼロだったのか!?3の扉まで開けたというのは!?」
「そうなの!?来てたんなら連絡くれればよかったのに!」
「…えっ!?あの…何の話なんですか!?僕は今日初めてここに来……あ。」
ゼロの声によって、間が開いた。
『ジャズッ!!君でしょう!?』
『………』
『ジャズ!!…もー!ちゃんと言っておいてくださいよっ!!一番大事なことじゃないですかっ!!バカー!』
ジャズは答えてくれなかった。
そんなに僕が困るのを見たいんですか…。いくら僕でもそろそろ怒りますよ?
「……ゼロ?」
ゴンがゼロの顔をのぞく。
3人も黙ってゼロの反応を見ていた。
「…あ;…あの……それ、僕じゃありません。…たぶん……弟です…」
「弟!?あんたじゃないのかよ!?そっくりすぎだろ!!?」
「そんなに似てるの!?オレも見たかった〜!!」
シークアントの言葉に、ゴンが目をきらきらさせる。
「う〜ん…きっとそのうち見られますよ…たぶん。」
「えー…」
指をくわえられても…;
―――今はまだ…話せませんから………。
「それはそうとゼロ。あの門、開けられるか?」
「…?…何か特別な門なんですね?レオリオ。…やってみます」
5人は門の前に集まった。
扉に一番近いところにゼロがたつ。クラピカがそのゼロに言った。
「ゼロ、その門は片方2トンあるんだ。大丈夫か?」
「2トン!?…へぇ……;が、がんばります…」
ゼロがハンター試験のときと同様に肩にかけていた長剣を、その肩からおろす。
「ゴン、持っててくれるかな?」
「あ、うん!」
ハンター試験のとき、その威力を目にした…ゼロの長剣。
その長剣が今、自分の手の中にある。ゴンは胸のドキドキが止まらなかった。
「んっと…じゃあやってみます」
「…!あ…ゼロ…!がんばって…!」
「はい、ゴン」
にっこりと笑ったゼロ。すぐにその表情も、真剣なものに変わる。
「ふぅ…。………ふっ!!」
渾身の力をこめて、扉を押す。
ギィイオオォン…
開いたのは―――3の扉。
「ま、負けた…」
レオリオががっくりと肩を落とした。
「うむ。さすがゼロ!よくやった!!」
「どういう意味だよクラピカ…」
「すごいやゼロ!!」
「うへぇ…兄弟そろって3の扉かよ…」
「……お、重いっ!!重い!重いですぅ!!腰が折れますって!!無理ですって!!!」
扉をあけたままでぷるぷるするゼロ。
((((…なんか可愛い…))))
「…わ、早く入ろう!?2人とも!」
「う、うむ!」
「そ、そうだな!」
閉じていく扉のむこうでシークアントが手を振っていた。
「がんばれよー」
ゴゴォオン…
大きな音を立てて、扉が閉じた。
つづく
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ゴンとほのぼの
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