double style ◆19:試しの門



う〜ん…よく寝たのはいいけど、今いつなんだろう?


ハンター試験の後、ジャズが仕事だというので体を空け渡した。

僕にとっては一眠りの間だったけど…あれからどのくらいたったのかな?



『ちょうど20日くらいだな』

「けっこうかかりましたね」

『準備と移動にちょっとかかったからな』

僕は着替えながらジャズに尋ねる。


「なにか特別なことはありましたか?」

『……………ねぇよ』

「…なんですかその間は。……言いたくないならいいんですけどね。なんにせよ無事でよかったです」



ジャズに任せておけば"万が一"なんて無いと思うけれど、やっぱり寝たまんま死ぬのはイヤだ。

仕事が仕事だけに心配なときもある。

…ゾルディックの人とかともやりあったりしてるって、当のキルアやイルミさんも言っていたし…。



「ゴハンを食べたらクラピカに連絡入れないといけませんね〜。今どこに居るんでしょう?」

『ククルーマウンテンだ』


………独り言だったのに。


「へぇ………………何で知ってるんですか?」

『試験中に聞いてたから』

「そうじゃなくて………まぁいいですけど…。」

『近くからバスが出てるぞ』

「そうですか〜……って…近いんですか!?」

『バスですぐ』

「ふ〜〜〜〜。そうですか;」











ピルルルッ



「ん?」

試しの門をクリアーしたゴン、クラピカ、レオリオ。

山に向けて出立の朝。ゼブロたちに別れを言って、森を進んでいると突然、クラピカのケータイがあたりに鳴り響いた。

「クラピカ?誰から?」

「…うむ。ゼロのようだ」

「マジか、やっと仕事終わったのか!?」

「ね、クラピカ!早く出て!」

クラピカはケータイを取り出して、電話に出た。



『…もしもし?クラピカですか?』

「うむ、そうだ。ゼロ、仕事は終わったのか?」

『あ、はい、終わりました!時間がかかってしまって申し訳ありません!今どこですか?キルアの家ですか?』

「そうだよ!!ゼロも早くおいでよ!!」

通話中のクラピカ…その先のゼロに向かってゴンが叫んだ。

『わ、ゴンですか?あいかわらず元気ですね〜。…今僕もそちらに向かっているところです。もう少し待っててもらえますか?』

「うん!待ってるよ!早く来てね!ゼロ!!」

『はい、がんばります〜それでは〜…』

そこで通話は切れた。クラピカもケータイをしまった。


「やった!ちょうど良かったね!!」

「そうだな、ギリギリってとこだな」



ゴンとレオリオの会話を聞いていたクラピカが、何かに気づいた。

「ところでゼロは、試しの門を開けられるのか?」

「「あ」」









先ほど別れを言ったはずの3人が戻ってきたのにゼブロが気づく。

「おや?いやに早いねぇ…?」

ゼブロが言った言葉に、守衛室に行こうとしていたシークアントもゼブロの視線の先を見た。



「おぉい、どうしたんだ?」

「はは…。もう1人知り合いが来るらしくて戻ってきたのです」

シークアントの当然の疑問にクラピカが答える。


「守衛室ででも少し待たしてもらってもいいかな?」

「おぉ、いいとも。別に急ぐことはねぇよ。屋敷は逃げねぇしな」

シークアントは笑って言った。



「そいつも友達かい?」

「そうだよ!」

守衛室…門までの道すがらシークアントは3人から話を聞いていた。


「あとからおいかけて来るといっていたのですが、門を開けられるか心配になったので戻ってきたのです」

「それもそうだな。ま、たとえそいつが開けられなくても、お前らが開けてやればいいだろ。開けられなくても、門から入ればいいだけだしな」

「あ、そっか!」





守衛室でしばらく話していると、日に一本の定期バスがついた。

バスから走って降りてくる男に、一番最初に気づいたのはゴンだった。

「あ!ゼロ〜〜〜〜!!」

ゴンが走り出す。

「ゴン〜〜〜〜!!」

ゼロも両手を広げて走ってきた。



がしぃっ!!


ゴンがゼロに跳びついて、ゼロがゴンを抱いたままくるくる回る。

「会いたかったよ〜〜〜vvゼロ〜〜〜〜!!」

「僕もですよ〜〜〜vvゴン〜〜〜!」


ゼロの満面の笑みに、クラピカもレオリオも懐かしさを覚えた。

「ふ…、たかが20日程度の別れなのに……ゼロの笑顔を見ると安心するな」

「そうだな。これからとんでもねぇ家に行くって時だし…待ってて正解だな」



ゼロが居るとなぜか安心できる。


あの笑顔のせいだろうか?




「あ――――!!」

突然、シークアントが声を上げた。4人がシークアントを見る。


「あんたっ!?……コイツだよ!!ミケを食ったのは!!」

「「「えっ!?」」」

「…ミケ?なんですか?」


「あんた3、4日前に来ただろうが!門を飛び越えてっ!!中に入ったろ!!」

シークアントの叫びを聞いて、クラピカは何日か前に彼から聞いた話を思い出した。

「じゃ、ゼロだったのか!?3の扉まで開けたというのは!?」

「そうなの!?来てたんなら連絡くれればよかったのに!」

「…えっ!?あの…何の話なんですか!?僕は今日初めてここに来……あ。」



ゼロの声によって、間が開いた。





『ジャズッ!!君でしょう!?』

『………』

『ジャズ!!…もー!ちゃんと言っておいてくださいよっ!!一番大事なことじゃないですかっ!!バカー!』


ジャズは答えてくれなかった。


そんなに僕が困るのを見たいんですか…。いくら僕でもそろそろ怒りますよ?



「……ゼロ?」

ゴンがゼロの顔をのぞく。

3人も黙ってゼロの反応を見ていた。



「…あ;…あの……それ、僕じゃありません。…たぶん……弟です…」

「弟!?あんたじゃないのかよ!?そっくりすぎだろ!!?」

「そんなに似てるの!?オレも見たかった〜!!」

シークアントの言葉に、ゴンが目をきらきらさせる。


「う〜ん…きっとそのうち見られますよ…たぶん。」

「えー…」


指をくわえられても…;




―――今はまだ…話せませんから………。






「それはそうとゼロ。あの門、開けられるか?」


「…?…何か特別な門なんですね?レオリオ。…やってみます」




5人は門の前に集まった。

扉に一番近いところにゼロがたつ。クラピカがそのゼロに言った。

「ゼロ、その門は片方2トンあるんだ。大丈夫か?」

「2トン!?…へぇ……;が、がんばります…」

ゼロがハンター試験のときと同様に肩にかけていた長剣を、その肩からおろす。


「ゴン、持っててくれるかな?」

「あ、うん!」



ハンター試験のとき、その威力を目にした…ゼロの長剣。

その長剣が今、自分の手の中にある。ゴンは胸のドキドキが止まらなかった。



「んっと…じゃあやってみます」

「…!あ…ゼロ…!がんばって…!」

「はい、ゴン」

にっこりと笑ったゼロ。すぐにその表情も、真剣なものに変わる。


「ふぅ…。………ふっ!!」

渾身の力をこめて、扉を押す。




ギィイオオォン…




開いたのは―――3の扉。




「ま、負けた…」

レオリオががっくりと肩を落とした。

「うむ。さすがゼロ!よくやった!!」

「どういう意味だよクラピカ…」


「すごいやゼロ!!」

「うへぇ…兄弟そろって3の扉かよ…」



「……お、重いっ!!重い!重いですぅ!!腰が折れますって!!無理ですって!!!」

扉をあけたままでぷるぷるするゼロ。


((((…なんか可愛い…))))


「…わ、早く入ろう!?2人とも!」

「う、うむ!」

「そ、そうだな!」




閉じていく扉のむこうでシークアントが手を振っていた。

「がんばれよー」





ゴゴォオン…



大きな音を立てて、扉が閉じた。







つづく


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ももももも。