double style ◆32:カストロ



「ヒソカさんの対戦相手ってどんな方なんでしょうね」

「きっとスゲーゴリラだよ」

「あはは、ひどいですねキルア」


僕とキルアは手をつないで会場に向かいながらそんな会話をしていた。

するとその途中で、通路に設置されているモニターから実況が聞こえてくる。



『…戦績は8勝3敗ですが負けはいずれも欠場による不戦敗!!休みがちの死神、奇術師ヒソカ!

対するは…戦績、9勝1敗!ヒソカに敗れて以来9連勝でフロアマスターに王手!!武闘家カストロ!!

「借りは必ず返す」の公言どおりリベンジなるか!?』



「へぇーどんなゴリラかと思いきや…」

モニターに映るヒソカさんの今日の対戦者、カストロさんの姿。それを見てキルアが呟いた。


「結構かっこいい方ですね」

「え!?ゼロ、ああいうのが好きなの!?」

「…なんでそうなるんですかキルア………;」

一般的な意見として、かっこいい人だなぁって思っただけで…。

僕はキルアの発言に脱力した。




「いや、意外だなーと思って」

「なにがですか。僕にはキルアの発言の方が意外でしたよ……」

モニターの前で立ち止まってそんな会話をする。


モニターの中ではカストロさんがインタビューを受けている映像が流れていた。


『……勝算が無いなら戦いませんよ。2年前とは別人だってところをお見せします』

「おー、結構言うね〜」

「自信あるんですね〜」

モニターを眺めながらそう言うと、キルアがまたニヤーッと笑ったのが目の端に映った。



「………なんですかキルア。また悪巧みしてるでしょ」

「へっへっへ〜。ちょっと行って来るわ」

そう言ってスタスタと会場とは別方向に歩き出すキルア。


「どこ行くんですか?」

「やっこさんのところ〜。ゼロも行く?」

「うーん…。キルアを野放しにするとまたゴンとは違う方向にとんでもないこと始めますから…じゃあ僕も行きます」

「えー、ゼロひでー」

「フフッ。じゃあ行きましょうか。僕もカストロさんを近くで見てみたいです」

「やっぱりああいうのがいいんだ…」

「いや、だからー…;」


なんかもう突っ込みどころがわかりません……。



とりあえず僕らはカストロさんの控え室に向かった。











闘技場スタッフの目をかいくぐり、カストロさんを探す。

そうして控え室のドアの向こうにカストロさんの姿を見つけ、僕とキルアは互いに笑顔でコツンと拳をぶつけあった。


「(…っていうかゼロも気配消せって)」

小声でキルアが言う。


「えー?意味ないですよ。こんな近くから消しても」

「え!?なんで消してないんだよ!!」


あれ?単にカストロさんの事見に来ただけじゃないんですか?



「私に何か用かい?」


背後からの声にキルアがすごく驚いて後ろを見た。

いやキルア…、あれだけ声出せば聞こえますからフツー。



ちなみに正面のカストロさんは消えていた。


…へぇえ、すごいですね。僕も気付きませんでしたよ。

いつの間に後ろに回ったんでしょう。…念能力かな?



僕がのほほんと考えてるうちにキルアが取り繕い始めた。


「いやぁ…。サイン貰おうと思ってさー」

「私の?それは光栄だな、キルア君」

「え;」


しれっと言うカストロさん。

まぁキルアやゴンみたいな子供がこの200階に居れば当然でしょうね。しかも目立ちますもん。


「同じ200階クラスのライバルくらいチェックしてるよ。そちらが確か、お名前はゼロさん…ですよね?」

「あ、はい。知っててもらえて光栄ですカストロさん」

「ふふ、こちらこそ。ゴンって子は一緒じゃないのかい?」

「ええ、まだ初戦の怪我が治ってませんからね」

「あらら、バレバレなのね」


ぽりぽりと頭をかくキルア。

もしかして自分が目立ってないとでも思ってるんでしょうかねー。



「今日は敵状視察かい?」

「いえいえ」

「ちょっとあんたを近くでみたかっただけさ」

「へぇ。―――――で私の印象はどうかな?」



とさわやかな顔しつつも居丈高にキルアに圧をかけてくるカストロさん。

…そうとう負けず嫌いですね、この人。


あからさまな挑発だけど、キルアのオーラもなんだかざわついてるっぽいから…まあまあキルアも負けず嫌いなんでしょうか?

ま、もしも始まっちゃったら適当に僕が仲裁に入りましょう。カストロさん試合前ですしそれは無いと思いますが。


…と思ってたのに意外にもキルアは力を抜いて、スルー体勢…。あれっ?




「ん、相当やるね」

「ありがとう。キルア君の絶もなかなか見事だったよ」


そう言ってカストロさんもにこりと笑ってリラックス体勢に。そして僕の方も見てきた。


「…良ければゼロさんの感想も聞きたいかな?」

「お強いですね。さすが自信の分だけあります」


正直な感想を述べるとカストロさんは満足したようだった。

ウイングさんもですけど、カストロさんはイケメンな分特にこういうさわやかな笑顔が似合いますねー。



「貴方にそう言ってもらえると嬉しいなぁ」

「はは、そうですか?」

「なにせあの、"エンジェル・スマイル"だからね」



…うええ、ここでもそれ浸透してるんですか…?;




「……カストロさんこそ買いかぶりすぎですよ。僕はそれほど強くありませんから」

「またまたー」



僕らの会話が気に入らないのか、キルアが横でむーっと頬を膨らませてるのが見えた。

僕とカストロさんの間に無理矢理割って入ってきて、会話を遮る。


「―――あのさ!!ひとつ聞くけど。さっきのって一体どうやったの?」

たぶん後ろに回ったこと指して言ってるんでしょう。キルアがそうストレートにカストロさんに尋ねる。


「…残念ながら教えられないな。いずれ君達とは戦うかもしれないしね」


まぁ…正論でしょうね。


「安心しなよ、オレもうここでこれ以上戦う気は無いからさ」

「そうかい?君のオーラはそうは言ってないけどな」


「…クスッ」


結局売り言葉に買い言葉じゃないですか。

なんか面白くて笑ってしまいました。

するとカストロさんもつられてか、愉快気に笑い出した。



「ははは、冗談だよ。答えは試合でお見せする」

そう言ってにっこりと笑って、カストロさんは控え室に戻っていく。


あ、でもドアを閉める前に何かに気づいたのか、最後にこちらを向いて訊いてきた。




「あー、そういえばサインだっけ?」


…そういえばそういう話でしたね。



「…やっぱいいや、色紙持ってくんの忘れたし。んじゃね」


そっけなく方向を変えたキルア。僕もぺこりとカストロさんにお辞儀してからそれに続いた。

するとカストロさんがその僕らの背中に声を掛けてくる。




「バトルオリンピアで待ってるよ。……君達なら来れる」

「はい、ありがとうございます。…カストロさんも頑張ってください」

挨拶するとカストロさんはにこりと笑ってドアを閉めた。



「……戦わねーっつーのに。ゼロもあんなやつ応援なんかしなくていーって」

「ふふっ。…でもあの人が相手ならヒソカさんの本気も少しは見られるかもしれませんね?」

「だといいけどねー」


そんな話をしながら、僕らも試合会場へと足を向けた。





つづく


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いろんな人が出てきますね。

すもも

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ももももも。