double style ◆51:勘違い




まずは街に出て朝食を摂る事にしたゼロ。

さすがに街中を剣を携えたまま歩くわけに行かないから、剣は2本とも部屋に置いてきた。

ゴンたちと合流する前に取りに戻れば十分だろう。




街のいたるところに、憩いの場としてテーブルや椅子が設置されている。

サンドイッチとカフェオレを買って、適当に休める席に着いた。

朝食の後は預金を確認して、それからゆっくりと新しい服を探そうと合流までの予定を立てた。



オークションで街全体に人が溢れ、活気付いている。


(なんだかウキウキするなぁ)


にこにこと周りを眺めながら、ゼロは買ってきたサンドイッチを少しずつ食べ始めた。






















あまりに普通にそれがいたから警戒網に引っかかることも無く、始めは全く気にしてなかった。




『ペアで鎖野郎を探し出し、連れて来い』



救出の後でウボォーギンは「鎖野郎と決着をつけるまで帰らない」と言い残し蜘蛛を離れた。


圧倒的戦闘力を誇るウボォーギン。すぐに帰ってくるだろうと思っていたが、丸1日たっても帰らない。

そう簡単にやられるとは思っていないが、連絡一つ無いとなるとやられたと考えざるを得ない。

幻影旅団団長であるクロロは、オークション襲撃の予定を変更し"鎖野郎"の探索を旅団員に命じた。



堂々と街を歩き、獲物がかかるのを待つ。それが一足欠けた蜘蛛の取った作戦だった。




何組かのペアがヨークシンの街に出る。残りはアジトに待機、ということだった。

シャルナークとシズクもペアで街に出てきて、オープンカフェの一画、周りがよく見渡せる場所に陣取った。


そして網を張り巡らせる。


不審な行動をとった奴が居たらすぐにも動けるように。

しばらくそこに居座って、辺りの様子に気を配っていた。












1時間も過ぎた頃。

シャルナークは視界に見覚えのある色があることに気づいた。



ああ、ジャズもあんな髪の色だったなぁなんて思ってそれをちょっと眺めていた。



こちらに背を向けて、少し向こうのテーブルについている青年。

よくよく見ると髪の色だけでなく髪型までジャズと同じだと気づいた。



まさかまだジャズがヨークシンにいるとは思えなかったし、こんな明るい朝のカフェエリアなんか全くと言っていいほどジャズには似合わない。

だから他人の空似だと思って、でもじっとその青年の後姿を眺めていた。



何か食べながら周りを眺めていた彼。


ふとその横顔が見えた瞬間、シャルナークは立ち上がった。




「?どしたのシャル?」

急に立ち上がったシャルナークを見て、シズクが聞いた。


「ん、ちょっと確認」

「なにが?」



シズクの質問にも答えず足早に行ってしまったシャルナーク。

その向かう先には、見たことある髪の色をした青年の姿。シズクも後に続いた。







「ここ、開いてます?」

4人掛けのテーブルに1人で着いていた青年。シャルナークはその青年に後ろからそう声をかけた。


「あ、はい。どうぞ」


と何の警戒も見せず、サンドイッチを食べていたその青年はシャルナークに席を勧めてきた。

それがすごく普通だったのでシャルナークはなんだか拍子抜けした。



ジャズは自分の顔を知っているはずだし。何か反応すると思っていた。


それに自分はオーラを消さずに彼に近寄った。

『絶』をした相手の存在すら鋭敏に捉えるジャズなら、自分が動いた瞬間に逃げたはず。

それ以前に自分達の警戒網にも気づいて近寄らないようにするだろう。

こんなところでのんびり食事を摂っているわけが無い。





やっぱり他人の空似かと思いながら、シャルナークはその青年の正面の席に着いた。

シズクも近寄ってくるのが見えたので、手まねいた。シャルナークのその行動に、その青年もそちらに視線を移す。

シズクと目が合ったのか、その青年は軽く会釈をした。


青年のその様子にシズクもきょとんとしながら、でも席に着いた。




「(ジャズ……じゃないの?)」

「(いや…わかんない)」




もきゅもきゅとマイペースにサンドイッチをほおばるその青年。

少し食べてはカフェオレを飲んで、また少し食べてる。

シャルナークとシズクはそれを観察しながらそんな会話をしていた。






おそらくジャズじゃない。



雰囲気がジャズよりも…というより別人と言っていいほど柔らかで、空気がのんびりしている。


しかしジャズではないと言い切ることが出来なかった。


他人の空似というにはあまりにも青年の顔はジャズと酷似していたから。





じーっと見てると彼もシャルナーク達の視線に気づいたのか、サンドイッチを食べる手を止めた。

「あ…、お邪魔ですよね…おいとましますんで、どうぞ…」

気まずそうに笑った彼は、食べていたものを持って席を立とうとした。

どうやらシャルナークとシズクをカップルと勘違いしているらしかった。


「(え!?ちょ、ちょっとどうするの!?行っちゃうよ!?)」

「(どどどうするって言われても!?)」


探していたのは鎖野郎に関わる何かだったが、なぜか彼を逃がしてはいけない気もする。

何の根拠も無いが。



わたわたと慌てても彼が去っていこうとするのを止めることはできず、2人はあせった。

すると青年の背後から大きな影が差す。



「「(フランクリン!?)」」



青年の後ろに立ったのはフランクリン。

そして振り向こうとした青年の首に一撃入れて沈めたのはフェイタン。


がくりと倒れかけた青年の体をフランクリンが支えた。





「お前たち何してるね。みすみすジャズを逃がすとこだたね」

フェイタンが少し棘のある言い方をする。

「っていうか…ちょ、ちょっと待ってよフェイ。何でこんなところにいるわけ!?」

フランクリンとフェイタンは待機組だったことを思い出してシャルナークが聞いた。シズクもうんうんと頷く。



「団長の命令だ。オトリ組を監視するようにと」

「そういうことね」

さらりと言うフランクリンとニヤリと笑ったフェイタン。

フランクリンの『オトリ組』との言葉に、シャルナークは団長の意向が読めてちょっとうんざりした。

「うへ…、じゃあずっと見てたわけね…」

「まあお前達が気づかなきゃオレ達も見逃してたと思うがな」

気を失った青年を抱えてフランクリンが言う。



何の違和感無くそこにいたこの青年。

シャルナークが気づいていなければ、おそらく知らぬ間に逃していただろう。



「とにかく場所、移動しようよ。目立つし」

確かに周りの人間が何人かこっちを見ている。

シズクの提案で4人は青年を連れたままその場から離れた。







「でもさ、その人もしかしたらジャズじゃないかもしれないよ」

「うん、そんな感じじゃなかったけど…」

車へ向かいながら言ったシャルナークの意見にシズクも同意する。


「そうか?ジャズだろう。どう見ても」

フランクリンに抱えられて眠る青年の顔はまさしくジャズの顔で。


「ジャズじゃなくても、きと関わりはあるね。吐かせれば済むことね」


フェイタンの意見にフランクリンが頷く。

シャルナークとシズクは、なんだかこの青年に悪い気もしたが、とりあえずは眠る青年と共に車へと乗り込んだ。







つづく


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普通に捕まってる…

すもも

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ももももも。