double style ◆63:交錯する想い





「……お前達が救いたいのは、ゼロか? それとも―――ジャズか?」





捕らえた蜘蛛のリーダーが、そう言う。

こいつの声……息遣いですら耳障りに思えるのは……私の憎しみが褪せていない事を示すのだろうか……。





「何が言いたい?ゼロもジャズも、1人の人間で。どちらとも区別することなく私たちの大切な仲間だ。……個別に考えるお前の頭が知れない」


「クック、……やはりそうなのだな……」



私の言葉に、奴は不快な笑い声を上げる。





何がおかしい?

ゼロはお前達に傷つけられて。


ジャズはゼロを救おうと必死で………、私たちも同じ気持ち。

そのジャズを助けようということの、どこがおかしい?







「………お前達は何もわかっていない。お前達が真っ先に気づかなければならないことなのに」


「何が言いたい!?」




それ以上喋るな。耳障りだ。






「……本当にわからないのか?おめでたい奴らだ。

たとえジャズが何も言わなかったとしても……それでも『仲間だ』と言う以上、お前達は絶対に"気づいてやらなければ"ならなかった。


……お前達がジャズをかばうのは何故だ?ゼロという男を救うためか?」



「黙れ!!何が言いたいんだ!!」







耳障りだ。その音を止めろ。




わかりきったこと。

私たちはゼロを――――ジャズを救う。


お前たちではできないことを―――――






「…ジャズが可哀想だと言っているんだ。お前達のような、無知な者達を頼りにしているジャズが……。

あいつは、目的のためには手段を選ばない男だ。目的を達するためになら自分の気持ちなど簡単に押し殺し、身体すらも売る………そういう男だ。


……あの時……奴は笑っていた………あいつはどんなことをしてもゼロを救いたいのだろう。


例えそのことで、自分というものが消えることになったとしても。」





「何…!?」





「気づかなかったのか?…ゼロが目覚めることで、ジャズが消えてしまうという可能性に」

















稲光によって一瞬闇が晴れたときにはすでに団長であるクロロの姿は無かった。

そこには静かに立ち尽くすジャズの姿だけがあった。


闇の中、脱出を図ったはずのキルアは結局マチに捕らえられ、ゴンはノブナガに足を掴まれていた。





「パク、平気?」


まだ明かりの戻らないロビー内。そっとマチがパクノダに尋ねる。


ゴンとキルアの記憶を読もうとしていたパクノダ。

「何を知っているか」という質問で全てがわかった瞬間、ほかの全ては闇へと落ちた。


突然の暗闇に視界は失われ。

目の前にいた子供達からは的確で手痛い反撃を突然に食らった。




「…左手と奥歯折られたわ。あとは大丈夫」


そう言ってパクノダは口の中に感じた血を折れた奥歯と共に吐き捨てた。




「アタシもアバラ何本かイッてる。――――油断したね。」


マチは抱きかかえるように押さえたキルアを見て、少し不快そうに目を細めていた。





ジャズがいつものようにじゃれていたから。少し油断していたのかもしれない。

また、この棲家を持たない野良猫は自分達の元にも身を寄せることがあるのだと思っていたから。



けれど雷光に照らし出されるロビー内には、もう団長の姿は無くて。







手の空いていたコルトピがスタスタとジャズに寄る。



「ジャズ…?」

「…………」

「団長をどこにやったの?…まさかジャズが殺った……?」

「…………」


「…ジャズ!」




何度聞くにもジャズは応えず、ただそこに立ち尽くしている。

それを見かねてか、問いに答えないジャズの代わりにパクノダが一歩前へと出た。そして子供たちを指差して言う。


「ジャズじゃないの。このコ達…」

「待て!!」


パクノダの言葉をノブナガが強く制止した。手に灯りと―――1枚の紙を持って。





一番最後に自分めがけて飛んで来たナイフ。それについていたメモ。

押さえたゴンをシズクに預け、そのメモに書かれたメッセージを読んで、ノブナガはパクノダの言葉を止めた。



「パクノダ、オメーにだ」


そして、メッセージをパクノダに投げてよこす。



『2人の記憶、話せば殺す』



それだけの言葉が残された、「鎖野郎」からのメッセージを。







「ジャズ…。お前…全部知ってやがったな…」

ジャズに向き直り、低い声で言ったノブナガ。重い空気が間を支配する。



「…ああ。」

「………裏切ったのか、オレ達を」

「…裏切る…?何を?オレはお前らの物になった覚えはねーし、これからもなるつもりはねぇな。 たかだか一晩二晩共にしたからって自惚れんなよ…ノブナガ……」


銀の十字架のチョーカーが絡む白い綺麗な首元を見せつけながら、ジャズは笑う。


だがノブナガは、そんなジャズを見て一言、「ふざけんな」と凄んだ。

その一言に、口を閉じたジャズ。



周りを見れば、他の蜘蛛も黙ったままじっと自分を見つめている。

ジャズが少し怪訝そうに目を細める。




「ジャズ……、アンタ…ホントにわかってんのかい?」

「…はぁ?なにがだよ、マチ?」


「…こいつらと行くってことがどういうことか…」



その腕に抱きかかえるようにして捕らえていたキルアを指し、マチはジャズに問う。

ジャズはそれを見て、再び口を吊り上げた。


「ああ、もちろん。…オレはお前らの言う『鎖野郎』の味方で、お前ら蜘蛛の敵だって事だろーが」

「バカ、そういうことじゃない!」


いきなりマチは強くジャズを怒鳴りつけた。

何事かと、ゴンとキルアが目を見張った。





「マチ……?」

「……ジャズ、もうヘラヘラ笑うのやめな…。ホントに…わかってんのかい…?」



ノブナガも、シズクも、パクノダも、コルトピも。黙ったままジャズをじっと見つめている。


ゴンとキルアが神妙に見守る中。

ジャズは冷えた目つきでマチを見据えていた。




殺気にも似た何かがその場を満たして、空気が凍りついていた。

ピリピリとした空気に包まれ、ゴンは息が止まってしまいそうな、そんな感覚に陥る。




(ジャズ………?)



――――――ジャズは、冷えた目つきでただマチを見据えていた。






「…団長が…言ってたことなんだけど…もしももう1人のアンタ…主人格であるゼロが"傷"を受け入れて目覚めたら……

ジャズ…アンタの人格ってどうなるんだい?ゼロの"傷"とともに……アンタの存在は無くなりはしない?」


「え……?」



マチのその言葉に、ゴンとキルアが目を開く。









いまだ闇の晴れないホールの中。


間が、開いて。












「……ああ。知ってるぜ?」







うっすらと笑ったジャズの姿を――――稲光が、照らし出していた。









つづく


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すもも

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ももももも。