「ぅん…?」
カーテンの隙間から差し込む光が目元に当たって、まぶしくて目を覚ましたゼロ。
開けた視界―――目の前には、最愛の男・クロロ=ルシルフルの姿。
自分と同じひとつのベッドの中、クロロは目を瞑り、眠っているようだった。
(クロロさんの寝顔、初めて見るなぁ…)
夜、一緒のベッドの中ではいつも僕が先に失神して(恥ずかしい…)、朝は朝でいつもクロロさんに起こされて目を覚ます。
いままでクロロが寝てるところなんか見たこと無くて、ホントにこの人ちゃんと寝てるのかな?なんて失礼な事を思ったのもしばしば。
初めて見るクロロの寝顔に、ゼロは少し感動した。
起きてるときも端正な顔つきで惚れ惚れするけど、寝顔も整ってて綺麗だなぁと思う。
額にかかる前髪を少し梳き払って、十字の刺青を目にする。
しばらく、幸せな気持ちでクロロの寝顔を眺めて――――そのうち眠くなってきたので、ゼロは再び目を閉じた。
…が、ハッと何かに気づいてゼロは目を覚ます。
――――今日はショップ、定休日じゃない!!
経営するアンティークショップのことを思い出してゼロはあせった。
毎日数えるほどしかお客が来ないといっても、お店を開けないわけにはいかない。
今何時だっけと、ケータイの時計を見ようとしたが、肝心のケータイが見つからない。
そういえば昨日ここに来たときに脱ぎ捨てた上着のポケットに入れっぱなしのような気がする。
ゼロはクロロを起こさないようにそーっと身を起こして、部屋に備え付けの壁掛け時計に目をやった。
時計の針はすでに9時を回っている。お店の開店時間まであと1時間も無かった。
どうしよう、どうしよう…!
シャワー…、は昨日クロロさんと事後に浴びたから…;
…ああそうだ、服着て顔洗って、クロロさんに朝食作っておいてあげよう。
なんて思いながらあわててベッドから抜けようとすると、いきなりガッシと腕を掴まれた。
「…どこ行くの?ゼロ」
「あっ!…く、クロロさん!?」
見るとクロロが目を覚まして、自分の腕をしっかりと掴んでいた。
「どうしたんだゼロ?そんなにあわてて…」
「あ、あの、今日僕お店開けなくちゃと思って…!」
定休日じゃないの忘れてました!起こしてごめんなさい、とオロオロするゼロ。
クロロは裸のままベッドに身を起こし、「こっちおいで」と混乱した様子のゼロを手招きした。
「ゼロ、少し落ち着こうか。お店の開店時間までまだ1時間近くある。今はまず何をしなきゃならないんだっけ?」
「えと…、ふ、服を着る…」
「ははっ、そうだね。じゃあそうしよう」
ぽんぽん、とあやすようにゼロの頭をなでて、それからゼロの背中をトンと押して行動を後押しする。
自分は、少し眠い目をこすってからゆっくりと、脱ぎ捨ててあったシャツとズボンに手を伸ばした。
「…ふぁ……眠い…。オレとしてはもう少しゼロと寝ていたかったんだけど…」
シャツに袖を通しながらクロロが言う。
職業柄―――いやむしろ性格上というべきか、クロロはあまり熟睡する事がない。
目の前で何か動けばたとえ寝ていたとしてもすぐに気がつくし、気配にも敏感だ。
なのにさっきまで、自分でも驚くほど熟睡していた。
ゼロがあんなに近くでモゾモゾモゾモゾしてなければ、この腕の中からそっとゼロがいなくなっていても気づかなかったかもしれない。
実際、今だって強い眠気が思考をとどめようとしてる。
この男、体からマイナスイオンでも発散してるんじゃないか?とソファのところであわあわと着替えている青年に目を移すクロロ。
自分がこんなに熟睡するのもそんな彼の前でだけではあるが。
とはいえ、オレとしたことがだいぶ気が緩んでるな、とクロロはペシッと自分の頬を叩く。
「……そりゃ、僕だって時間さえあれば…。もうちょっとクロロさんと2人で居たかったです…」
少し名残惜しそうにゼロの心情に気づいて、クロロはひとつ提案。
「そういえば明日定休日だったよね?ついでに今日も休んじゃえば?」
「ええ〜?そうはいきませんよ〜;」
「毎日そんなにお客が大勢来てるわけじゃないだろ?」
「それは…! ………そうですけど…。でもやっぱりそういうのはダメですよ…」
「まじめだなぁゼロは」
「そんな…。普通ですって」
そう言って、着替え終わったゼロはパタパタとシャワールームへと向かう。
それを見たクロロも、着替えもそこそこにそれへと続いた。
「…じゃああの弟に店番させておけば?」
洗面台でパシャパシャと顔を洗うゼロの後ろで、クロロが問う。
「でもジャズは鑑定とかできませんし…。やっぱり僕が居ないと…」
きゅい、と蛇口を閉める。
タオル片手に『どうぞ』とクロロに洗面台を明け渡して、ゼロはベッドルームのほうへと戻っていった。
その背を見て、クロロは一つため息を吐く。
自分も顔を洗ってシャワールームから出ると、ちょうど支度を終えて部屋を出て行こうとするゼロとかち合った。
「早いな。もう行くの?」
「はい。急ぎですみません」
埋め合わせ、今度しますね。と申し訳なさそうに笑うゼロに、クロロは「うーん…」と考えてから。
「じゃあホラ、いってきますのちゅー?」
「え………ぇええ…、クロロさんそんなキャラでしたっけ?」
もっとクールなひとだと思ってたんですけど…。
「嫌かな?」
「嫌とか…」
またそうやって僕をいじめる…。
困ったように上目遣いで言うと、はははっ、とクロロは笑う。
「―――ゼロ。」
トッと壁際に追い詰められて。
クロロの整った顔が――――漆黒の瞳が、まっすぐにゼロを見つめる。
少し戸惑って、照れくさそうにゼロはクロロと唇を交えた。
一瞬部屋が無音になって。
それからちゅ、と軽い音を立てて2人の舌が離れる。
「…じゃあ後でまた迎えに行くよ」
「はい、待ってます」
これで今日のお客がオレだけだったら笑うね、と冗談めかして言うクロロと、やめてくださいよ〜と眉を下げるゼロ。
2人の間に隔たる冷たい扉が、いま少しの間だけ。
彼らを、分かつ。
つづ…く?
一応話としては拍手夢(お相手クロロ〜その2)続き?のつもりで書いたいちゃらぶ
続きと言ってもえろシーンはぶっ飛ばしてるので、お題10ででもそのえろシーン書きたいなーとか
すもも