ゴンとキルアが勝ってくれるのは嬉しいですよ。
嬉しいんですけど………
僕にも出番を下さい。
サダソさんが天空闘技場から居なくなってからの試合は、まずゴンがギドさんと再戦。
ズシを利用されたことをキルアやジャズ同様、ゴンも相当怒っていたようで、ギドさんの鉄製義足を拳で叩き折って勝利。
壊れた義足がそんなに早く直る訳は無く、後日ギドさんと対戦予定だったキルアと僕は不戦勝になりました。
ゴンvsギド戦と同じ日に、今度はキルアがリールベルトさんに勝利。
電撃鞭が効かないなんて、どういう生活してたんでしょうか?
うなぎ?
うなぎですか?
そして今日、ゴンがリールベルトさんと対戦して、これまた勝利。
ゴンのハッタリにリールベルトさんが失神したときは、ジャズが大爆笑してました。
それにしてもギド戦といい今回といい…ゴンは石板はがしすぎですが、アレ、スタッフさんたち直すの大変でしょうね。
リールベルトさんは今日のゴン戦にて4敗を喫してしまい200階から陥落ですから、その後に組まれていた僕との試合はノーカウントになるでしょう。
なんですか?
なんなんですか?
これはいじめですか?
そんなにゴンとキルアは僕に対戦させたくないんですか?
「……だーから、わざわざゼロがあんな奴らと戦う必要は無いって」
リールベルトさんとの試合も終わり、選手控え室までキルアと一緒にゴンを迎えに行く。
その途中でキルアが、頭の後ろで手を組んだ格好で、隣を歩く僕にそう言ってくる。
「うー。」
「あ、なに?それともゼロってば、自分でトドメ刺したかった?うわー、顔に似合わずエグいねーゼロって」
「ちっ、違います!!」
ケタケタと僕を茶化すようにキルアは笑っていました。
そんなんじゃないのに…。
確かにリールベルトさんやギドさんってそんなに強くないし…。
ズシを使ってゴンやキルアの事脅迫してたのがサダソさんだけじゃなくてあの2人も…って話だったから、楽しく戦えたかどうかはかなり疑問ですが…
でもせっかく200階に来たし、僕だって1戦くらいは…、ちょっとしてみたかったのに………。
「(いーんだよ。あんな奴らにゼロは勿体ねーし…)」
「え?なんですか?」
今ボソッとなんて言いました?
「と、とにかく、ゴンを迎えに行こうぜ!!」
「あー、ちょっとキルア!いつもいつも、はぐらかさないでくださいってばー!」
僕の言葉を無視してすたすたと先に行ってしまうキルア。走って捕まえようとしたら、全力で逃げられました。
教えてくれてもいいのに……ふぅ。
キルアが見えなくなってしまったので1人でとろとろ通路を歩いていたら、急に腕をつかまれて角に引き込まれた。
そして壁に押し付けられる。
「つまんなそーだね、ゼロ」
「ヒ、ヒソカさん!?」
僕を引き込んだのはヒソカさん。
うう…嫌いではないんですけど、苦手ですこの人……;
「そんなに暇ならボクと遊ぼっか?」
「えぇー?でもヒソカさん、ゴンと対戦してくれないんですか?あと1回しか戦えないんでしょう?」
ヒソカさんは現在9勝3敗。勝っても負けても、どのみちあと1回しかここでは戦えない。
「じゃあ『ココで戦う』んじゃないのならいいのかい?」
「あぅ…;」
たしかに天空闘技場で戦う必要は無いかもしれませんけど………
ヒソカさんと戦ってみたい気持ちも、まだ…ありますけど………
でも、あの日の恐怖がいまだに僕の中から拭い去れない。
しばらく悩んでいたら、ヒソカさんが先に動いた。
「肯定と取っていいのかな?じゃ、ボクの部屋でも行こうか」
そう言って僕の腕を引っ張って歩き出すヒソカさん。
「でっ!?あ、あのっちょ、ちょっとヒソカさんっ!?」
僕の了承はないんですか!?
っていうか今、部屋って言いましたか!?
部屋って聞こえましたが!?
部屋でどんな戦いを!?
なんですか!?トランプ!!?(プチパニック)
どうあがいても、ヒソカさんのほうが僕より力があってずるずると引きずられてしまう;
それでもがんばって抵抗していると、ヒソカさんは立ち止まってくれた。
「…そんなに怖がらなくてもいいじゃないか。別に戦おうって言うんじゃないんだから」
「……は?」
今度はヒソカさんが僕のほうに近寄ってきた。
僕は後ずさったけど結局は後ろの壁に追い詰められた。
「あ、あの?ヒ、ヒソカさん?」
すっごい嫌な予感するんですけど……;
ヒソカさんが顔を近づけてきたので、僕は思わずぎゅっと目をつぶって顔をそむけた。
―――――怖い。
怖い、怖い、………怖い。
「………………ふぅ。…ホント、起きてるときはガード固いね、ゼロ。そんなに嫌かい?ボクが…」
その唇が、触れることは無く。
ヒソカさんの指が、そっと僕の頬に触れる。
思いもよらず、零れ落ちた涙を拭ってくれた。
「別にいじめる気は無いんだけどね(それはそれでそそるけど)」
そのまま、僕の頭をなでたヒソカさん。
「……………ゼロ?」
ぽろぽろと、涙が止まらなかった。
ずるずると体が壁を滑り落ちていく。
両腕を抱くようにうずくまって――――泣いた。
『ゼロ……。ゼロ………落ち着け。……大丈夫か……?』
ジャズ………。
『…だめなら………代わる。』
『………だい…じょぶ……。大丈夫……』
「…それにしてもずいぶんと脆いんだねぇ…キミ」
……………大丈夫…………。
「まぁ、そんなところも可愛いけどね。……そろそろ起きてくれるかな?」
すっと僕の前に差し出された手。
少し…ためらったけど僕はゆっくりとその手を取って、立ち上がった。
「……ヒ、ヒソ…カさんは……いつも僕に酷いことをする…」
「そうかい?ゼロが脆すぎるだけなんじゃないのかな?」
僕はヒソカさんをキッと睨んだ。
「泣き顔でそんな風に見られてもねぇ…興奮するだけだよ?…それとも誘ってるのかな?」
そう言ってにやりと笑うヒソカさん。
僕はあわてて、涙を拭いた。
「…もう変な真似しないでください」
「ゼロのそんな顔が見られるなら、またやっちゃうかもね」
「……今度こそ嫌いになりますよ」
「そう?ならボクも今度からは力ずくでいこうかな」
『……悪い。次なんか言ったら出るぞ』
頭に聞こえるジャズの声。
うー……。僕も許可出したくなってきました……。
「ククッ……ウソだよ。そう変な顔しないでおくれよ。せっかく綺麗な顔立ちなのに」
「へっ、変な顔なんかしてません!!」
だめだ、この人に何言ってもきかないし…。
ジャズも限界みたいだから、もう帰ろう……。
「さようなら」
ぺこりと頭を下げる。
「……唐突だね……」
「…ヒソカさんに付き合ってたら時間がいくらあっても足りませんから」
「ボクは何時間でもキミといたいけどな、ゼロ。…出来ればベッドの上とかで」
「ハハッ…、変態は独りで死にな。…………ではさようなら」
「くくく……酷い事言うねぇ……」
ヒソカさんを放って、まっすぐ帰りました。
そして部屋に着いた後で、僕はキルアとゴンを置いてきてしまったことに気づきました。
つづく
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ヒソカはゴンに会った帰りにゼロさんを見つけたってことでお願いします
すもも