double style ◆42:故郷



結果的に、ゴンはヒソカさんに負けてしまったけれど…

ゴンの最初の目的である44番のあのプレートを叩き返す!っていう目標は達成できたから、よしとするかな?

それにしても随分と成長してくれましたね、ゴン……。



「ゴン〜〜〜vv 負けてしまったけど、僕は君の成長が見られて嬉しいですよ〜」

「く、くるしいってばゼロ〜」


帰ってきたゴンをまぁ、いつもどおりにホッペをくっつけてぎゅーっと抱きしめました。



「ゼロ!やめろってば!!人見てんだから!」

キルアは必死に僕の服を引っ張って止めさせようとしてました。


うぅ〜?僕はゴンを褒めたいのに〜。


見るとゴンも照れて顔を赤くしていたし、しょうがないので降ろしてあげた。



あまり変な試合内容にはならなかったし、そこはとりあえず喜ばしかったです。

ああいう風に戦ってくれるならヒソカさんともやり合ってみたいんですが…でもやっぱりときどき顔が怖いです。あのひと。





「さて、これでようやく目標クリアだな!」

「うん」

「そうですね〜」

「ここにはもう用がねーし!今度はお前んちいこーぜ!!」


そう言ってゴンを見たキルア。

うーん、ゴンのおうちですか〜。


「いいですね〜」


キルアの家も見たし、ゴンの家も見てみたいですね〜。

…って僕が漏らすと、ゴンも「ホント!?」と声を弾ませて喜ぶ。


「ええ、ホントですよ。ゴンがどんなところで育ってきたのか興味あります」

「だな!オレは、お前んちのミトさんって会ってみたいな」


歩きながらキルアもそう言う。


って…あれ、僕の知らない名前が。

ミトさんって誰でしょうね?


率直にゴンに聞くことにしました。



「ミトさんってどなたですか?ゴンのお母さんですか?」

「あー、えっと…おばさんだけど……まあ母親みたいなもんだよ」

「へぇ…」




荷物をまとめて、外へ出た。

ゴンとキルアがくるりと振り返り、来た時と同じまま高くそびえ立つ闘技場を見た。



なんだかんだでいろいろあった、天空闘技場。これでお別れなんですね。



「じゃ、いこーか!」

「おう!」

「しっかりと案内してくださいね、ゴン」

「まかせてよ!」



飛行船と船を乗り継いで、ゴンの故郷のくじら島へ。
















「も――――、帰ってくるなら先に教えてよ!何にも用意してないわよ!」

「いいよテキトーで」

「何言ってんの、せっかくお友達も来てるのに!」

「「いえいえ、おかまいなく」」


ゴンの家で、ゴンの母親代わりのミトさんという方がドタドタと走り回っていた。

…そりゃいきなり2人も人連れて帰ってきたらビックリですよね。


「合格したって電話くれてから全然連絡ないし、心配してたんだからね!」

忙しそうに部屋中を走り回りながら、ミトさんはずっと喋り続けてました。すごいバイタリティですね…;


「あ、何か手伝おうか?」

「いーから座ってて!」


手伝おうとするゴンもぴしゃりと一言で抑え込むミトさん。


あはは、ほんとに『おかーさん』ですね……。



「あ、そーだ!ゴハン作る間にお風呂入んなさいよ。服も全部出しといて、洗濯するから!」

「うん、あとで」

「今!!」


ゴンとミトさんを微笑ましく見ていた僕も、ミトさんの突然の大きな声に驚いた。キルアも同様だったようだ。


「10秒以内!!い―――ち…」

「…ミトさんって、いつもあーか?」

「だいたい…」


ごそごそと荷物を出すゴンを囲んで僕とキルアが尋ねていると。


「ほらほら、キミもおにーさんも遠慮しないで出して!」

とミトさんに背後に立たれてしまった。


「ぇえ?オレらも?」

「そーよ、ほら早く早く!」

「えあ…;は、はい;」


せかされるようにパンパンと手を叩かれながらミトさんにまたカウントされて、僕もキルアもあわあわと荷物から服を出した。


そしてその後はミトさんに、3人でバスルームに放り込まれました。




「……すっげーな、ミトさんって」

「でしょ?まだあれでも大人しい方なんだよ」

「あれで大人しいって…。さすがゴンの親代わりやってるだけありますね…;」


脱衣所でそんな会話をしていた。





服を脱ぐ僕を、途中からキルアがじーっと見つめてくる。


「どうしましたキルア?脱がないんですか?」


服をたたみながらキルアに聞いた。ゴンも服を脱ぎながらキルアを見た。



「……ゼロってさ」

「はい?」


「ちゃんと男だったんだな」


「………は?」

キルアの突拍子も無い発言に目が点になった僕。


いつもいつも、キルアは何の話をしているんですか?



「そうだね。…オレもちょっと安心した」

「ゴンまで何言ってるんですか!?僕は最初から男ですよ!!」



「ゼロって立派だねー」

「オトナだなー」

「ぎゃっ!?ちょっとドコ見て言ってるんですか!!2人も早く服脱いでください!」


僕はあわてて腰にタオルを巻き、せかせかと2人を脱がして、バスルームに突っ込んだ。





「ねーゼロ」

「なんですか?」

わしわしとキルアの髪を洗ってあげてると、湯に浸かっていたゴンに声を掛けられた。


「なんかゼロっておにーちゃんみたいだねー」

「そうですかー」


ザバーッと桶のお湯でキルアの髪を洗い流した。



「あ、そーだ、ゼロ!背中流しっこしよーよ!」

「おっ!オレも混ぜろー!」

そう言ってぺたぺたと僕の体を触りだすゴンとキルア。

「あははははー!待って待って!くすぐったいから止めてください!」


きゃっきゃと騒いでいると、扉の向こうに人影が見えた。どうやらミトさんのようだ。



「ここに着替え、置いとくよー。キルア君はゴンので入ると思うけど…、ゼロさんはここに着替え…置いとくから…これ使って」

「あ、…はい」

「「はーい」」

そしてミトさんはごそごそと持ってきたものを扉の向こうに置いて、そして僕らの脱いだ服を持って戻っていった。




「ゼロ、スキありー!」

気をとられてるうちにキルアに飛び掛られました。


「あっ!キルアずるいっ!オレもっ!!」

「『オレもって』なんですか…うわぁっ!!」

さすがに元気一杯な2人なんて支えてしゃがんでなんていられず、後ろに倒れてしまいました。


もーほんとに止めてください……;



まぁ色々大騒ぎで、バスルームから出る頃には僕はへとへとでした。

おかしいなぁ、お風呂でこんなに疲れたのは初めてですよ。







脱衣所には服が用意してあった。ゴンとキルアにはゴンの服。

僕にはゆったりしたシャツと黒っぽいズボン。


…ミトさんとミトさんのお祖母さんしかいないみたいなのに、一体どこから出したんだろう…?


疑問を抱きつつ僕はそれを着て、3人でリビングに行った。



「あ、ゼロさん、着れた?」

「あ、はい。…でもこれ、一体誰のなんですか?」

「んと…それは…」


ミトさんが渋っていると、ちょうど部屋に入ってきたミトさんのお祖母さんが僕を一目見て言った。

「ああ!よく似合ってるじゃないか!ジンの服!!」

「へぇ、ジンさんの……えっ!?ジンさん!!?」

「親父の!?」

「えぇっ!!?」


えっ!?ジ、ジンさんがおっ、親父!?ゴンのおとーさんがジンさん!!?ジンさんの服!?えっ!?あ…ええぇっ!!!?


ジンさんの服を着てるってだけでもビックリなのに、そのジンさんがゴンのお父さんだったなんて、ここ最近で一番驚きました。



すっかり混乱に陥ってしまった僕を不思議そうにゴンとキルアとミトさんは見ていた。

「ど、どしたの?ゼロ;大丈夫?」

「いやっ…あ……えっ………あ、あのっ、ゴンのお父さんって、ジンさん…なんですか?」

「「ジンを知ってるの!?」」

ミトさんとゴンが詰め寄ってくる。


「いや、あのっ…落ち着いてください; えっと…その、はい…知ってます」

ゴンが唖然と僕を見ていた。僕も唖然としたいです;



「あの…昔、ジンさんに助けられたことがあって…。僕の命の恩人です…」

「「へぇえー」」





「まぁまぁ、とりあえず座んなさいな」

ミトさんのお祖母さんが料理を持ってきた。僕らはとりあえず席に着いた。


「オレ、ぜんっぜんそんなのわかんなかった」

「僕もです。ゴン、何も言ってくれないんですもん」

それを聞いていたキルアが言う。

「そういやゼロって肝心なときにいなかったもんな、いっつも」

「あれー、そうなんですか〜?僕さみしい」


僕が泣きまねをすると、ゴンもキルアもミトさんもそれを見て笑った。





「じゃあ、はい。たんと食べて!」

ミトさんとミトさんのお祖母さんはたくさんの料理を用意してくれた。

テーブル一杯に並んだあったかい手料理。


うれしいな…こんな風に誰かの手料理を食べるのはいつ以来だろう?



「「いただきまーす」」

「いただきます」

料理はすごくおいしかった。自然と顔もほころぶ。


食べながらゴンは僕らに色々話してくれた。料理のこととか、この島のこと。

ミトさんはその僕らの様子を黙って見ていた。


「ご馳走様でした」

「いえいえ、お粗末さま」




おなかいっぱい食べた後は3人で森に行くことにした。ゴンがいつも駆け回っていたという森に。


「お弁当作ろうか――――!?」

とそんな僕らにミトさんが声をかけてくる。


「いいよ、森で何か採って食べるー!」


ゴンがそれに元気よくそう返事を返して、僕らは森に入っていった。







森の中でもゴンは色々話してくれた。

カイトさんというハンターに出会った時のことや、そのときに友達になったキツネグマのことなども。

僕はそれを聞きながら、ゴンの姿にジンさんの歩く姿を重ねていた。



話の途中、ゴンが先の森を指差して言う。


「ココでカイトに逢ったんだ」

「へー」

「ふーん。…友達のキツネグマもこの辺が棲み家なんだろ?」


「うん。でもたぶん姿は見せないよ。キツネグマのメスのほうが極端に人間のニオイを嫌うから、俺と会ったら奥さんとケンカになっちゃうし…

森の長が人と仲良くしてたらほかの動物に示しがつかないからね」



そう言ってゴンは森の奥、その友達のキツネグマ(コンっていう名前らしい)とよく遊んだっていう湖まで連れて行ってくれた。


湖のほとりには、ぴちぴちと跳ねる獲れたての魚が何匹か目立つように置かれていて、―――あはは。どうやらそのキツネグマ君にはゴンの帰郷がバレバレみたいですね。



「"おかえり"ってさ」


とキルアが魚の山を指さすと、ゴンも嬉しそうに笑い出した。



そして3人でそれを焼いて食べて、そのまま夜まで話していた。














日もすっかり落ちて、街では見られないような満天の星空が広がった。


一切の雑音がなく、風が木の葉を揺らす音と、動物達のささやきだけが聞こえる。



どこよりも深い闇の中なのに、そこはすごく優しい闇だった。





「ゴン、お前これからどーする?」

呟くように言ったキルアの声がやけに大きく聞こえた。



「ん――――?8月はココでゆっくり休みながら色々情報収集して……ヨークシンから本格的に親父を探そうと思ってる。

おそらくいろんなハンターが集まってくるだろうから」


「……ゼロは?」

「僕はどうしようかなー。もう天空闘技場って感じじゃないですし……

ジャズ…弟の仕事でも手伝いながら、ヨークシンまでゆっくりと過ごそうかなって思ってますけど…」

「えー?ゼロ、出てっちゃうの?」

「んー?まだそこまでは考えてませんー」



「ふーん、そっか……。オレ、どーしよーかな――――」



僕とゴンの会話を横で聞いていたキルアが、星空に向かってそう言う。

その言葉に、ゴンが起き上がった。僕もキルアのほうに寝ながらごろりと向き直った。


「えー?キルアもココに居て一緒にヨークシン行こーよ。ゼロにキルアまで居なくなったらオレさみしーもん」


「あ、いや、そーじゃなくてさ。お前らちゃんと考えてんだなーって話だよ」

キルアも起き上がったので、僕も起き上がって座った。

「一体何をですか?」



「ん―――?オレってないんだよな――――。やりたいことって。やりたくないことなら結構あるんだけどさ。家にずっと居ることとか、家業継ぐこととか。

だから ゴンみたいに目標あるのってうらやましいし、色々考えててえらいなーって思う」


焚き火をじっと眺めながらキルアが呟く。



キルアも色々不安なんですね…。






「……キルア」

そのキルアを見ていたゴンがキルアを呼ぶ。

僕もキルアも、それに反応してゴンを見た。



「オレ、キルアと居ると楽しいよ」

ゴンの唐突な一言にキルアが驚いていた。



「…な、……んだよ…急に」


「このくじら島ってさ、出稼ぎの漁師が長期滞在するための島なんだ。

純粋な島民ってほんの少しで、子供もオレのほかはノウコって小さな女の子だけ。

勉強も自宅で通信スクールだったし…だから同い年の友達はキルアが初めてだったんだ」

独り言のようにゴンが話した。


「オレだってそうだよ。ずっと家にこもりっきりでさ、人殺しの技術ばっか磨いてきたからな。…ゴンが初めてだよ」


僕は黙って2人のその会話を聞いていた。




「キルアはオレといて楽しい!?」

「あ?そりゃ、まぁ…な」


「じゃ、これからも一緒に居よう!一緒にいろんなところへ行っていろんな物を見ようよ。

オレは親父を。キルアはやりたいことを探す旅!きっと楽しいよ!!」

「…クスッ。…ですって、どうします?キルア?」

にこっと笑ったゴンを指差して僕はキルアに確認した。

すこし黙ってゴンの顔を見ていたキルアだったが、そのうち口を開いた。


「……そだな。悪くないな」

「うん!」



「よっしゃ、やりたいことが見つかるまで、お前の親父探しに付き合ってやるか!」

「オッケー」


「よかったですねーゴン」

「うん!!」

僕はゴンの頭をなでてあげた。





「あ」

「ん?」

「どしたのキルア」

伸びをしていたキルアが何かに気づいたのか声を上げた。




「そーいやお前のお袋さんて何してんの?」

「そう言われるとそうですね」


ミトさんはゴンの親代わりであって本当のお母さんじゃないって聞いたし…。


「…んー…。親父以上に聞きづらいんだよね、母親のこと。

ミトさんがずっと親代わりでオレを育ててくれてたから、そういう事聞くのってなんか悪い気がしてさ」

「それもそうですね」

「そーゆーもん?」




暗くなった湖を眺めながらゴンは続けた。


「…親父のコトだってもしカイトに会わなきゃ、無理に知ろうとはしなかったかもしれないし……

オレにとって母親はずっとミトさんだから。他にいないんだ。…だから聞くこともないし」


「そか」










美しい星空を眺めていた。



ただ静かに、時だけが過ぎて。








「あ――――あ。オレもミトさんみてーな母親がよかったなぁ」





キルアの声が暗い森に響いた。




「そうですね――――」


「最高だよ。ちょっと口うるさいけどね」



「ははっ、そうかもな」

「クスッ」










「そういえばさー。ゼロってどんな生活してたの?いままで」

不意にキルアが僕に尋ねてくる。

ゴンも気になるのか、その言葉を聞いて僕のほうを見てきた。


「んー、色々です。天空闘技場にいたり、ジャズの仕事を手伝ったり。世界中ウロウロしてましたよ」



「…ジンとはどこで会ったの?命の恩人って言ってたけど…」

僕の顔を伺うように、ゴンが聞いてきた。




「ん……昔…僕もジャズも、すごくすさんでた時期があって……、まずジャズが…ネテロさんに拾われて。

僕はそのネテロさんにジンさんを紹介されたんです」



ぽつぽつと話す僕を、2人は黙って見ていた。

2人の視線が、その先をせかす。



僕は少し考えて、それでも湖に映る月の光を眺めながらゆっくりと話し始める。






「僕…は………それまで死んでいたんです」


「え…?どゆこと……?」

ゴンの当然の疑問。僕は続けた。




「そうですね……心が、死んでるって……ネテロさんに言われました。

だからネテロさんは……ジンさんと僕を引き合わせました」



少しだけゴンと視線を合わせて、笑った。





「……それからジンさんとは…かなり長い間一緒に暮らしました。

僕を色々なところに連れて行って、僕に色々なことを教えてくれて…、ジンさんは僕の心を…ここまで引き上げてくれました。


…………僕が今こうやって、笑って……生きていられるのはジンさんのおかげなんです。

…だから、ジンさんは僕の『命の恩人』なんです」



「ふーん、そっか」

少し満足そうにゴンが頷く。




「ゼロがそんなんだったって、あんまり想像できないな」

「そうですか?ジンさんのおかげですよ」

僕はにこりと笑って見せた。





ジンさんが居たから、今の僕がある。

ジンさんが優しく強い人だったから、僕は今笑っていられる。



暗い闇に1人取り残されて……怖くて…

ジャズを頼って、ジャズのなかにずっと長い間閉じこもっていた僕を、「大丈夫だ」って…光の下まで引き上げてくれたジンさん。



僕はすごく感謝しています。



湖面に映る月を眺めているゴンの横顔に、ジンさんの顔が見えた気がした。







「…さて、そろそろ戻りましょうか?ミトさんも心配してるでしょうから」



「そうだね」

「よし、戻るか!」



焚き火の火を消して、ゴンの家へと向かいました。








つづく


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ジンの服なんかあるのかとか突っ込みはなしの方向でお願いします(爆)

すもも

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ももももも。