double style ◆46:クロロ=ルシルフル




ヨークシン郊外の廃墟。そのなかの一つのビルの一室。

おそらくはヨークシンでのクモのアジトか?



"団長"をはじめとする何人かは着替えるためにその場から居なくなった。

ボーっと立ってるとウボォーギンが寄ってきた。

いつ見ても暑苦しい奴だ。今何月だと思ってんだ。



「言っただろ、ジャズ。オレ達からは逃げられねーってな」


馴れ馴れしくオレの頭をぐりぐりといじりながらウボォーギンが言う。



「お前1人なら逃げられんのになー。13人っつうのがちょっと痛ぇな」

「かっかっか。まったくだ。ま、今日こそ諦めて蜘蛛に入るんだな」


ノブナガまで寄ってきてオレの肩をぽんぽん叩く。


うん。むさい。

せめてマチも来てくれ。


つうかその「まったくだ」って、どこにかかってるんだ?




そう思ってるとすたすたと黒髪に眼鏡の女が寄ってきた。


「ねぇジャズ、ダブルのほかにも具現化できるってホント?」


お、このコ可愛い。ずり下がった眼鏡がめっちゃそそる。

いいね、クモはいい女ばっかりだ。



「…見たいか?」

「うん」

「どっか2人っきりでなら見せてやってもいいぜ…」


そう言ってそのコの顎を持ち上げて顔がよく見えるようにした。

きょとっとしてるな。天然か?やべー、マジ可愛い。



「嬢ちゃんの名前は?」

「シズク」


シズク。いい名前だな。…………シズク。シズクか…


「ああ!!」

思わずぽんっと手を叩いた。


思い出した!


「ノブナガ、シズクってこのコか!?」

確か前にいってたな。オレのリバイアサンと同じような能力者だとか…。


「ああ、そうだが?」

「そっかぁ…こんなイイ女だったのか………。なぁ、シズク。マジな話今度1回オレと遊ばねーか?」


オレはシズクの程よくくびれた腰に手を回して抱き寄せた。


「うん、いいよ」

「まーじーで?…意味わかってる?」

「わかるよ、そのくらい。戦いたいんでしょ?」

「いや、…うん。まぁそれでもいいけど……」



…くそ、手強えー。


そんなオレとシズクのやり取りを見てノブナガとウボォーギンがショックな表情を見せてよろけた。

…何よ?



「「ジャズが女を口説いてる!!!」」



おおお、ちょっと待て。なんだそのわけわかんねーリアクション。





「なんだよ、オレが女口説いたら変なのかよ。なあマチ?」

「いや…うーん」


悩むトコじゃねーからよ、マチ。

オレ、いつもお前口説いてんじゃん。






部屋を離れていた連中が着替え終わったのかぽつぽつと戻ってきた。


「あら、逃げないなんて感心ね、ジャズ」


うん!素敵な足と胸元の美女だ!!

オレのほうが一晩相手して貰いてえくれーだ。


「そりゃあ…まだアンタの名前も聞いてないからな。…聞いてもいいか?」

「…私はパクノダよ、ジャズ」

「パクノダ、ね。サンキュ。…パクノダは彼氏居るのか?」

「…クス。面白いわね。……居るって言ったらどうするの?」

「いや、いてもいんだけどな。…略奪愛もいいもんだ。ククッ」


「ゼロの顔でそういうコト言うのはやめて欲しいかな」




最後に着替え終わったヒソカと"団長"も戻ってきた。


"団長"はさっきまでとは一転、髪をオールバックにして瓦礫の一角にどさりと座った。

ヒソカは……うん、ヒソカだ。これがヒソカだ。


パクノダに言った言葉のことを指しているんだろう、ヒソカはそう言いながらオレのそばまで来た。

パクノダやシズクはなんでか一歩下がった。



「オレはオレだ、ゼロじゃねー」


っつーかその名前を出すな。クモにまで知られたくねー。



「クク…まぁいいか。……キミも美味そうだし……」


そう言ってオレの顎を持ち上げたヒソカ。ハハハ、オレを誰だと思ってんだ?

ヒソカの言葉にニヤリと笑ったオレの顔が見えたのか、ウボォーギンやノブナガがちょっと嫌そうな顔で反応したのが目の端に映った。


おお、見てろ。オレは期待を裏切らねー男だ(意味不明)



「だったら優しくしてくれよ…」



オレはヒソカの首に手を回し体にまとわりつくようにして、思い切り甘い声でささやいた。


するとヒソカは目を細めてにぃっと笑った。そしてオレの腰に手を回してくる。


お、ノリいいなコイツ。




「ったく…タチの悪ィ猫だ」


寒気がするのかぼりぼりと首の後ろを掻くノブナガ。



「…なんだよノブナガ。ヤキモチか?……生憎だが『タチ』は悪くねぇぜ?ビンビンだよ…なぁ、ヒソカ」

「もちろん」


抱きついてるせいでコイツの股間にオレの脚が当たってる。

そのおかげ(?)でコイツの状態がオレには手に取るようにわかる。


別の意味ですげーよコイツ。



「…誰かあいつらを何とかしろ」


さすがに遊びすぎたか、"団長"がオレ達を指差しクモを見てそう言った。



「「「「団長がなんとかしてくれよ…」」」」


クモの何人かが声をそろえる。

グッタリと疲れた感じに見えるのはオレの気のせいではないだろう。








「…ジャズ、こっちに来い」



"団長"にそう言われたのでしぶしぶオレはヒソカと離れた。

いやに名残惜しそうなヒソカがおもしれぇ。オチたか?オレに。



じゃりじゃりと"団長"の前まで歩いていって……その前でオレはしゃがんで"団長"と目線を合わせ、じっとその目を見た。

"団長"もオレをじっと見つめて…品定めをしているようだった。



にしても…こりゃすげぇ男だ。

研ぎ澄まされたオーラ。

近くでじっくり見るとやっぱビンビン来る。



「マチ」


しっかりと"団長"を見据えたまま、マチの名を一言呼んだ。

オレの位置から見えはしねーが反応はしたと思う。オレは続けた。



「……確かにこりゃイイ男だ。こんなイイ男が近くにいたんじゃ……お前がオチないのも頷けるぜ」

「だろ?」


マチの声が聞こえた。


はっ…さすがのオレもコイツだけは敵に回したくねーや。




「ジャズ、お前の念を見せてみろ」

「さっき見せたじゃねーか…。アレ以上見てーんなら…それなりの対価もらわねーとな…。オレは安くねぇぜ、"団長"さんよ」


オレは"団長"の唇に指を這わせた。

すこしずつ、ふわふわとしなを作るようにしながら"団長"に近寄る。


くっそ、全然表情変えねー、コイツ。


オレから視線を外さない"団長"。あきれてんのか容認してんのかぜんっぜんわかんねーし。


あー、くそ。ココまできたらオレも後引けねーじゃん。

こうなったらそのすました顔、ぜってぇ崩してやる。




するりと首に手を回し、座る"団長"に体を預けるようにのしかかって、唇を合わせた。


ゆっくりと舌を割り込ませ、奴の舌に絡ませる。

角度を変えて、何度も深く口付けた。


奴は身じろぎ一つせずにそんなオレをじっと観察していた。






チッ……無機質で、つまんねー奴。





そう思って奴の口から舌を抜いた。

そのとたん、奴の手がオレの背をしっかりと捕らえて、奴は離れるオレの舌を吸った。

奴のほうからオレに口付けて無遠慮に口腔を蹂躙する。


そのすました顔は一切崩さずに、それでもむさぼるように何度も唇を重ねてきて、キスだけでオレを犯す。





アタマん中がおかしくなりそーだ…。



コイツ、キス…うめぇどころじゃねぇ…。






「…ふぅ……んっ…ふ」




耐えようとしても、鼻から抜けるような声が漏れてしまう。



やべ…きもち……よすぎ…………。


……オレのほうがイカレてどーする…………くそっ。








「……っは……」


やっと離れた舌同士にとろりと唾液が糸を引く。


コイツの腰を抜かすつもりが、逆にオレがコイツにすっかり腰を抜かされてしまっていた。




「…ハ、…スゲ……おまえ…」



奴の肩に頭を預けた。


だめだ、しばらく立てそうにねー。




「『おまえ』じゃない。クロロだ。クロロ=ルシルフル」


クロロは目線だけオレの方に向けた。


オレの腰に回されたクロロの手。

がくがく震えるオレの体に、オレが今どんな状態かクロロもわかってるはずだ。

クロロはオレをしっかりと抱き寄せた。





「は…、ふ、フフ……そうか、クロロか………オレはジャズ。…ジャズ=シュナイダー」



「そうか。…ジャズ」

「…なんだ、クロロ?」






「お前が気に入った。…しばらくオレの傍に居ろ」






「フッ……くくく………」


オレはなぜか笑いがこみ上げた。


クロロの頬に手を添わせ、視線だけではなく顔をこっちに向かせてその目を見つめた。





「…いいぜ。しばらくオレを楽しませてくれよ…クロロ」



そう言って、再び唇を重ねた。









退屈は、しなさそーだ。






つづく


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またえろい…

すもも

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ももももも。