double style ◆47:オークション開催




9月1日、早朝。

ゴンとキルアはヨークシンを歩いていた。


「わー、すっごい人出だねー!どっか見てみようよ」



ゼロと別れてからゴンとキルアも金策に走ることになった。

ハンターサイトの情報では、次のヨークシンのオークションにグリードアイランドが出品されるとのことだった。

その最低落札価格は89億ジェニー。


ゴンとキルアは天空闘技場で得た8億を元手に、ネットオークションに手を出した。


だがそれが間違いだった。


ネットオークションで詐欺に遭い、資金が増えるどころか逆に残りわずかになってしまった。

それでも何とかなるだろうと、とりあえずヨークシンまで来たのだ。




「ところでリオレオとクラピカはどうだって?」

確認するようにキルアはゴンに聞いた。

「レオリオは午後に着くって。クラピカは昨日から来てるらしいけど、仕事中だから時間取れないかもってさ」

「そっか」




2人は黙った。考えることは同じ。

ゼロのことだった。




「……ゼロは…?」

わかっていることをキルアは確認する。

「うん……変わりなし………」


そう沈む2人に後ろから声をかけた人物があった。





「ようっ!何たそがれてんだ?」


2人はバッと振り向く。わずかな期待を持って。

そこに立っていたのは……



「レオリオ!!」

「よ!」


「なんだリオレオか…」

「レオリオだ!」

ぼそりとつぶやくキルアにレオリオが突っ込む。

しかし突っ込んだ後で、2人の表情が沈んでいることにレオリオは気づいた。


「どした?お前ら?元気ねーな。………ゼロは?一緒じゃねーのか?」


ゼロの名に、ゴンが反応して顔を上げる。

「………うん…」

しかしその表情に変わりは無く。




「え?何よ?ホントにどうした?…連絡つかねーのか?」

「リオレオも電話、かけてみれば?」



元気の無い2人を不思議に思いながらレオリオはケータイを取り出し、ハンター試験の後にゼロから聞いて登録しておいた番号を押した。



機械的なアナウンスが流れる。


『おかけになった電話番号は現在電波の届かない場所にいるか電源が入っていないため――――』


そこまで聞いてレオリオは通話を切った。

レオリオの様子に「やっぱりか…」と漏らしたキルア。



「もう3週間近くそんな感じなんだ…」

ゴンがレオリオに言う。

ゼロと別れた直後から、電話が通じなくなった。

始めは、自分たちを驚かすつもりなのかと思っていたが、さすがに連日こんな状態だとだんだんと不安になってくる。

「ふーん、なんかあったのかねー?」

「わかんね」


レオリオとキルアの会話を聞きながらゴンが暗い顔をしている。

それを見たレオリオはゴンに一つ提案した。

「とりあえずメールでも出しとけよ。そしたらゼロもいつか見るだろ?」

「そーだな――――って、そーだよ!!お前ケータイ買えよ!!ハンターの必需品だろが!!」

キルアがゴンに突っ込んだ。ゴンはいまだにケータイを持っていない。

「あ、そーだった。」

思い出したように言うゴン。3人はとりあえずショップに向かった。

















「メンバーを決めるぞ」

幻影旅団のヨークシンでの仮宿。

蜘蛛はクロロを中心に一つに集まっていた。クロロの脇にはジャズの姿。

クロロから「オレの傍に居ろ」といわれてからジャズは逃げる素振りすら見せず、ずっとクロロの傍を離れなかった。

今もジャズはまるで猫のようにクロロの膝に上体を預け、寝転がって話を聞いている。

アンダーグラウンドオークションは今夜から開催される。これから今夜の襲撃メンバーを決定しようとしていた。



「半分も行けば十分だろう。希望はあるか?なければオレが決める」

クロロの質問に蜘蛛がそれぞれ名乗りを上げる。


「オレはいくぜ。久々に暴れてぇ」

と、まずウボォーギンが拳を上げた。


「じゃ、オレも行くかな?」

シャルナーク。


「ウボォーが行くならオレも行くか」

ノブナガ。


「…オレも行こう」

フランクリン。


「あ。あたしも行った方がいいの?」

「そうだな」

シズクの質問にクロロが答える。


「じゃ、アタシも行くよ」

「おや?行っちゃうのかい?」

「アンタのツラ見てたかないから」

マチが冷たくヒソカをあしらう。


「ワタシも行くね。ただ待つのは退屈よ」

最後に、フェイタン。


「…こんなもんか」

名乗り出たのは7人。大体妥当だとクロロは思った。




「……ジャズは行かねーのか?」

寝転がって他人事のように聞き入っていたジャズにウボォーギンが聞く。それを聞いて他の参加メンバーたちもジャズを誘う。

「ジャズも来るといいね」

「そうだよ、おいでよ」

「オメーが居たほうが何かと楽しいしよ」

「お前の力も見てみたいしな」

「ねー、行こう行こう!」

「どうなの?ジャズ」

マチが寝転がったまま答えないジャズに確認する。

しばらく間があいた後でジャズが口を開いた。



「やだ。めんどい」


「「えー」」

ジャズの一言にシャルナークとシズクが声をそろえて不平を言った。

「ばか、オレはお前らと違ってマフィアになんか追われたくねー」

ジャズはゼロを想っていた。


大事なアイツに手は出されたくない。

守りきる自信が無いわけではないが、不測の事態はいつどこでどんな風に起こるかわからない。

そんな危険すぎることを自ら進んでやるほどジャズは高慢ではない。

まぁしかし結局のところ『めんどくさい』の一言で片付くのだが。




「それにクロロは行かねーんだろ?」

寝転がったままクロロを見上げて聞く。

クロロは頷いた。

「じゃあオレも行かねー」

ジャズのその言葉に満足したのかクロロはジャズをなでた。ジャズは楽しそうにその手をもてあそんでいた。


「なんだつまらないね」

「ねー」

その様子に少し不満げなフェイタンとシズク。




「ココにはちょうど14人。7人行けば十分だろ」

「まて、おいクロロ。オレを数に含むな」

当然のように言ったクロロと当然のようにそれに頷いた蜘蛛を見たジャズが止めに入る。

他の蜘蛛はなぜかと思いジャズを見た。


「なんで?ジャズももう仲間でしょ?」

「おい、なんだシズク。オレがいつクモに入ったんだ」


「「ちがうのか?」」

ウボォーギンとノブナガも「なんでだ?」といわんばかりに聞き返した。

「待て!意味わからん!!オレは一言もそんなこと言った覚えはねぇっ!」

がばりとジャズが起き上がり反論を始める。


「うーん、そう言われればそうだったかしら…」

「そうだっけか?」

パクノダとフィンクスが首をかしげた。

「言ってねーよ!オレはクロロが傍に居ろっつうから頷いただけだ!」

それを聞いてヒソカが不満げに口を開く。


「なんだ、ジャズはクロロのモノなのかい?蜘蛛のモノだと思ってたのに…」

「あー、オレもそうだと思ってた。なんだ、団長のモノなのかー。…ざんねーん」

ヒソカに賛同したのはシャルナーク。どことなくしょんぼりしている。



「仕方ないね、団長が相手じゃ分が悪いよ。…諦めるしかなさそうね」

「ちぇー。…でもジャズ!団長に飽きたらいつでもオレんトコおいでよ」

「オレはモノじゃねー…っつーか………まあいいや何でも」

フェイタンとシャルナークがそう言うのを聞いて、あきれた風に頭をかいて呟いたジャズ。微妙に表情が疲れている。

隣のクロロはいやに満足そうにジャズの腰を抱いた。




「じゃあ準備にかかれ、ぬかるなよ」

「おおっ!」

クロロの声に、数匹の蜘蛛がアジトを離れた。
















そして夜。

廃墟となったビル群の一室に残った蜘蛛達は、アンダーグラウンドオークションに出かけたウボォーギンたちからの連絡を待っていた。



本を読むクロロの隣には、眠るジャズの姿。

瓦礫に頭をあずけ、座りながら眠っている。

首が痛くならないのか?とそれを見ていたパクノダは思った。

涎をたらしていて、寝る前にクロロから奪って体にかけていたクロロのコートもずり落ちている。


「子供みたいね」

「そうだね」

パクノダとコルトピがそれを見て言う。



この場に残っているのは、クロロとジャズ、パクノダにコルトピにフィンクスとボノレノフ、そしてヒソカ。


ジャズが眠りはじめてからヒソカがそのジャズの姿に釘付けでときおり変な笑い声を上げていることに、クロロとジャズ以外のメンバーが微妙な顔を見せていた。




闇の中ゆらゆらと揺れるろうそくの灯に、ジャズの首にかけられた銀の十字架がきらめく。

淡い灯の光がジャズの肌を照らす。


子供みたいに眠っているのに、それが妙に色気を感じさせる。







しばらくするとクロロが、読んでいた本をぱたりと閉じた。

その音がきこえたのか、ジャズはかすかに身じろいだ。

それでも寝息は立てたまま。


「………仮にも『始末屋』がこんなにのんきでいいのかしら?」

「さぁなぁ…」

「それともぼくらはジャズに信用されてるのかな…?」


悪名高き幻影旅団、その中にいるというのにあまりにも緊張感が無い。

それが諦めなのか、旅団員に対する信頼なのか。蜘蛛にはわからなかった。




そしてクロロも眠るジャズをじっと見つめはじめた。あれはさすがに起きるんじゃないか、と思った他の蜘蛛もその様子を眺めていた。


「……んあァ?………ん〜………」

あんな近くで凝視されれば、ジャズでなくても当然起きるだろう。

首をひねりながら辺りを見まわし、涎を拭いて大きなあくびをする。


「ふあ…なんだ、まだ帰ってねーのかシズクたちは…」

横でジャズを見ていたクロロと視線がかち合う。


「…………んだよクロロ?…オレがなんかおもしれーのか?」



((((相当面白かった(わよ)(けど)?))))



「ん?そうだな……お前の首の十字架と……お前の肌が闇に良く映えると思ってな」

「…っは…。口説き文句かよそれ」

「うむ。かなりそそられた」


「ふぅん…。…オレが欲しいのか?クロロ?」


大きく開いた胸元を見せ付けるようにジャズが言う。

そのやり取りを見て、ヒソカが殺気を出し始めたのが傍に居たほかの蜘蛛には感じられた。

あきれてものが言えない…というかどうすればいいのか全くさっぱりわからない。

他の4人はとりあえずクロロに任せることにした。




しばらくじっとジャズを見ていたクロロ。


「…なんか様子が変ね?気のせいかしら?」

「なんか…いや、うん、聞くな。」


などとパクノダとフィンクスが思っているとクロロがジャズに向かって動いた。


ジャズを追い詰めて、その黒いシャツの裾から中に手を入れる。



「………まさか団長……;」

「……こんなところで……?」

コルトピやパクノダにもその行動の先が読めたようだ。フィンクスもボノレノフも呆れ顔だった。



クロロの手がジャズの服の下、その体をまさぐる。

「あァ?おい、クロロ!?」

「誘うお前が悪い。…欲情した」

ジャズもいきなりのクロロの行動と言葉に、呆れ顔を見せた。

まさかこんなに突然、こんな場所で強行に及ぶとはジャズも思ってもみなかったようだ。




クロロがジャズの首に顔を寄せる。

暖かい舌が、ジャズの白い首を這った。



ヒソカの視線が怖い。



「ン……って…おい…クロロ……」

「ん?どうした?」

「…っどうしたじゃねー……っつかマジ吸うな。いてぇ。…痕つくし…やめれ………って、の…オイ!」


ちゅ、と音が響く。



「…っテメ……痕ついたらどーしてくれんだよ…服着れねーじゃん……」

「見せ付けてやればいいだろう。続けるぞ?」

「あのな…。…クロロ…ァ…いやだっつーの…


………………こんなところでよりももっと雰囲気いいトコに行こうぜ…?」


とたんにジャズが表情を変える。とても妖艶な顔でクロロに甘えるジャズ。

それと同時にヒソカの殺気も膨れ上がった。

他の4人はもうどうすればいいのかわからない。


クロロもジャズも、ヒソカの様子に気づいている。

4人はしばらくクロロの反応を待った。





「…そうだな。ここは空気が悪い。……ホテルでいいのか?」

「ハッ、物分りいいじゃん。…いいトコたのむぜ。オレは安かねぇからよ……」

それを聞いた4人の蜘蛛は色々な意味でなんだかちょっとほっとした。








「……前から思ってたんだが…お前ホントにクロロか……?」

着替えてくる、とアジトの一室から出て行ったクロロ。

戻ってきたのはいつものオールバックではなく、髪を下ろしバンダナをして黒スーツに身を包んだクロロだった。

そのクロロを指差し、ジャズが聞いたのだ。


「うん?オレ以外に誰がいるんだ?」

「ふ〜〜〜ん」

クロロをじろじろと見定めるジャズ。


「オレも一応お尋ね者だからな。このくらいの変装はしてても構わないだろう?…行くぞジャズ。お前が前を歩けよ?」

「逃げられないように、か?」

「当然だろ」

そういって2人はアジトから消えた。


その後しばらく、ヒソカの機嫌が悪かったのは言うまでもない。






つづく


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続きのエロは番外編へ。
苦手な方は読まずに本編48話へどうぞ。

すもも

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ももももも。