ピンクメドゥシアナ ◆番外編「7日目・日中」:宝探し(後編)



「……ホント、ウボォーの声ってよく響くね。どこにいるかすぐわかる」


ケイのおかげって言っていいのか―――上機嫌でケイと2人笑ってたら、そばに山と積み上げられたタイヤの影からシズクがそんなことを言いながら顔を出してきた。

その後ろには、…おおシャルも居んじゃねーか。


ケイの奴も声で2人に気づいたみたいで、「しずく!シャルナーク、もイタ!いたです!」とオレの肩をペチペチ叩いてきた。

…ってか叩くんじゃねーよ。んなことしねーでもオレだってちゃんと気づいてるっての。




「おう。なんだ、お前らの方こそ追いかけっこはもう終わったのか?」


仕返しにケイの頭をぐちゃぐちゃに混ぜっ返して、「ハゥう、あうぅ」と嫌がるケイの声を耳にしながら、オレはシズクたちのトコへと歩いて行った。


「やだなー。ウボォーが全然追いついてこないから探しに来てあげたんじゃないか。また2人でこっそりどこかにシケ込んだのかと思って心配したよ!」

「シケこ…、ぶん殴るぞ」

「冗談だってww」

「今度タリアまで行った時にフェルーのジェラート全種おごるので手を打ってあげたの」

「…ほー?」


速攻でイラつく挑発をよこしてきやがったシャルに向かって分厚く握った拳を見せつけてると、横からシズクの奴が顔を突っ込んできて、ちょっと自慢気にフォローしてきた。

自慢気にっつっても表情はいつもとほぼ変わらねーんだが。




「―――あ!つーかお前、フェルーったらすげぇ有名な店じゃなかったか!?ジェラート全種か…。良いな…。オレにもついでにおごれよシャル」

「ええ?;」

「なあ、ケイ?お前も食いてぇよな?フェルーのジェラート」



すんげぇ嫌そうな顔をしやがったシャルに向けて、ケイを盾にしてさらに言ってやる。


シャルの奴、『今度』なんて『シズクと』約束したってことは、忘れっぽいシズクの性格を見越してテキトーな約束かましたんだろーが、世の中そう甘くはねぇってことを一つこのオレが教えてやるぜ。



…と思ったんだが、ケイの奴がシズク以上の鳥頭だったってのをすっかり忘れてた。

元から知らねーのか、ぶっ壊れた時すっぽ抜けたのか、ノッて来るどころかケイはオレの顔を見てキョトンとしてやがった。


お前、そこで首かしげんじゃねーよ。知らねーか?フェルー。いいからノッて来いって。ジェラートだぞ?




「うぅ…。ふぇるう…?ジェラート…。はナニデス?うぼーぎん…」

「はあ!?お前、フェルー知ってる知らねー以前にそこから説明しなきゃなんねーのか!?」

「う?」

「え…。ケイ、ジェラート知らないの?」


シズクがいつもの無表情ながらも心なしか可哀想なものを見る目でケイを見てきやがる。


…そうだぜ。いくら馬鹿でも、あんなうめぇモン知らねーとかお前、人生だいぶ損してるぞ?




「ジェラート…。シズク、フェルー…。じぇらーと、なにデスカ?知るナイ、ワタクシ…。教えるシテ…。して欲シイ、ワタクシ…」

「フェルーはお店の名前。ジェラートは、んー…アイスクリームみたいな食べ物のことだよ。ケイ、アイスクリームは知ってる?」


「あいすくりーむ…?アイスクみーム、は知ッテイル!ワタクシしてるデスネ!おいしい…甘いシタ。お給料びに、トキドキ…ワタクシご褒美、ワタクシの…。おやつ…、チョット買うデキタ。
 おサケ、ワタクシミンナとーおサケ飲むスル時にー、ボス食べるの、おいしい…注文、サセテクレタデス。あまーい、オイシイの…。ウフフ。アイスクリーム、は、ワタクシ好きデスネ…」

「…ほーお、そうかい。んじゃあココ出たらタリアまで行って、お前のボスがくれたようなアイスなんかより、ずっとうめぇジェラートたらふく食いに行こうぜ、ケイ。もちろん全部タダでだ!」

「おっふ、うぅ」



前のボスがくれたっつーアイスクリームの味でも思い出したからか、ケイは両手で頬っぺたを押さえてまったりと旨そうなモン食ったような顔で口をもぐもぐさせやがる。

なんか不愉快なんで、オレはそのケイのピンク頭をまたがしゃがしゃと混ぜっ返して忘れさせてやった。


オレの腕ン中でひっくり返ったケイは、頭揺らされて良い具合に中身が転げ落ちたみたいで、赤目をぱちくりさせてまたキョトンとトボけたツラでオレを見てきた。

ふふん。相変わらず扱いやすい鳥頭だぜ。




「うぅ…。おいしい?ただ…?食べるは…ワタクシ、アイスクリーム食べる、は…シタイ。デモ、デモー、ドウスル?ウボォーギン。お金ナイの、ワタクシ。のに、ナンデ?ナンデ?どうやるシテ、あいすくりーむ、タダ…。食べるスルデス?」

「ふん。なーに、そん時に解るぜ。お前はただ楽しみにしとけよ。金の心配なんてもうしなくていいっつっただろ?」


なんつって、頭の上にハテナを浮かべるケイのピンク髪を今度は幾分か加減して撫でてやる。

そうしたら、シズクとシャルまでもが嬉々としてケイの顔を覗き込んできた。…なんだよ、良いトコなのに邪魔すんじゃねーよ。



「みんなでジェラート食べに行こうね、ケイ。シャルのおごりじゃなくても、ケイが気に入ったジェラートは全部あたしが盗って来てあげる」

「って…まずオレのおごりなのは大前提なんだ…;っていうか結局盗るつもりなら最初から全部盗る計画でいいじゃん!オレがばっちり作戦立てるからさー」

「…っておいおいお前ら2人とも、まさか一緒について来る気じゃねーだろうな?」

「え!?今の流れでなんでウボォーはケイと2人だけで行く気になれるわけ!?オレのおごりならオレがその場にいないとおかしくない!?」

「あ?お前の財布借りてけば十分だろ、んなもん」

「えー!?」

「そうだよ。シャルの財布は借りれば済むけど、おいしいもの食べに行くならみんな一緒の方が楽しいよ?3人で行こうね、ねぇケイ?」

「ちょっと!だからなんでナチュラルにオレだけのけ者になってるんだよwwおかしいだろ、オレの財布だけって!2人ともオレに何か恨みでもある!?いや、あっても根に持つのやめにしない!?」



恨みってお前…。ちょっと前にした悪さも忘れてそう言った後で、あわてて言い直すシャル。

こっちだって別に根に持ってるわけじゃねぇぞ。シズクはどうか知らねーが、オレはわかっててからかってやってるだけだぜ?

かといってケイとジェラート食いに行く権利を譲るつもりも全くねーけどな。




「ウフフ。シャルナーク…シズク、も…ワタクシ、スキ…。ミンナ一緒、アイスクリーム…。おいしい、ミンナスルと、ワタクシもっとうれしいデスネ…。ウボォーギンも、一緒は一番イイデス。シャルナークも、シズク、も…、あいすくりーむ食べる、は一緒良いデス。フフフ…」

「あーもー、ケイだけだよー?そういう優しい事言ってくれるの」

「調子乗んな。お前も、あんまりシャルを甘やかすんじゃねーぞ、ケイ。……オラ、話は後だ。そろそろ着くぜ。あのあたりでどうだ?」


腕に抱いてたケイの腰あたりにシャルがうっとおしく懐いてきやがるから、オレはケイのケツをまた肩車に持ち上げてやってシャルの魔手から遠ざけた。


そしてそのまま、オレはのしのしと廃タイヤの谷間を抜けて一面のガラクタの山々を前にする。

その間オレの後ろにくっついてブーブー文句を言ってくるシャルの事は無視した。



「ウフ。うぼぉーぎん…。なに?ツク、は…、着くのは、ドコ着いたデス?」

「あ?どこって、見りゃわかるだろ。『宝の山』だろうが」

「…?タカラ…?たからは、うぅ…?ゴミの、いっぱい山は、あるデスケド……」



オレの両耳をまたハンドル代わりに掴んで、ケイの奴はキョロキョロとあたりに積み上げられたガラクタを見回す。


ついてきたシャルとシズクも「何の話?」っつってオレに訊いてくるから、「いや…靴とか、必要なモン探してやろうかと思ってよ」と『宝探し』しようとしてた事を軽く説明してやった。





「…あ、それで『宝の山』って言ったんだ」


と、シズクの手がポンッと良い音たてて叩かれる。シャルも顎に手を当てて、「へー、ウボォーにしちゃなかなか良い考えじゃん」と囃し立ててきた。


…ちょっと含みがある気がしなくもねーが、それでも2人分の賛同が得られたってことは、我ながらやっぱナイスなアイデアだったってことだな。



「おーし、そうと決まりゃ…」


と、オレは肩車していたケイの体を両手でひょいっと持ち上げ、近場にあった横倒しの冷蔵庫の上に降ろしてやった。


「…うう?」

「いいか、ケイ。見てろよ。ゴミはゴミでも、直して磨きゃまだ全然使えるんだぜ。こういうガラクタや空き缶だって、潰して集めりゃ小金になるしな」


「……?」



犬コロみてーに小首をかしげてオレを見上げてたケイの目の前に、ちょうどよく足元に転がってたひしゃげた自転車のハンドルを拾い上げてみせた。

そんでもって腕力のみでそれをぐにぐにと折り曲げ、畳んで、終いにゃおにぎり大の鉄の塊にする。


ポーッとしてたケイの赤目はとたんにまんまるく見開かれて、鉄の塊に見入ったままケイはパチパチと手を叩いてきた。


ハハハハ。オレはお前のそういうわかりやすいトコ好きだぜ?





「ほれ」

と、鉄の塊をとりあえずケイの両手にずしりと乗せてやって、ケイの頭を撫でる。

それから畳み掛けるように、今度は空き缶をケイの赤目に見せつけるようにして潰してやった。



…小遣い稼ぎに丁度いいっつっても、こうやって圧縮しすぎたら逆に換金対応してくれなかったりもするんだけどな。

ガキの頃はともかく今はもうそんなモン稼ぐ必要も特にねーし、今回はまあケイのための「見せ用」っつーことで。


ケイの目の前で、まず人差し指と親指の力で空き缶をぐにゃりと縦に潰した。そっからは缶を握り込んで、片手でグキグキとひたすら圧縮。

手のひらを開いて消しゴム大…いや、そら豆大になったアルミの塊を見せてやると、ケイはやっぱりすんげー驚いて。

手に持ってた鉄の塊をボトッと地面に落とした。

そんでオレの手の中のアルミのそら豆をまんまるい赤目でまじまじ見た後は、恐る恐るそれをつまみ上げて、不思議そうに首をかしげてやがった。…なんだ、元の缶の形わかんなくなっちまったか?w




「……かん?缶、コレなったデス?これ、缶です?ウボォーギン…」

「おお。スゲーだろ?」

「ウボォーってば、昔っから空き缶潰し得意だよねw …ほら、ケイ。これもあげるよ」


そう言って、いつの間に移動したのかちょっと離れたトコから戻って来たシャルは、オレが空き缶プレスしてる間にどっかから拾ってきたスプーンを……、スプ……、先割れスプーン?


…なんつーか、いわゆるフォークスプーンってのか?それをシャルは、そら豆アルミをつまむケイの手にスッと忍ばせやがる。

お前それケイの奴絶対困ると思うぜ。



案の定ケイは手渡されたフォークスプーンの存在を認識するなり、ビクッとしてその場で固まっちまった。

口を変な風に曲げて、頭の上に三つも四つもハテナを掲げながらフォークスプーンのフォーク部分をつついて不思議そうにそれに見入っていた。


シャルはその間に、今度は普通のフォークと幼児用だが普通のスプーンをどっかからわざわざ探してきて……おいやめろって。



「はい、ケイ。どっちかな〜?」

「………ぉ!……オッ、……!?」


探してきた普通のスプーンとフォークを、シャルはニヤニヤしながらそれぞれちょっと間を開けてケイの足元に置きやがった。

するとケイは、オレの予想通りっつーか…、持っていたフォークスプーンをその地面に置かれたスプーンとフォークの間に掲げたまんまで、目を丸くして動かなくなっちまう。

度肝抜かれすぎて頭のヒューズが飛んだらしい。




「…おい、ケイの奴固まっちまったじゃねーか」

「アハハハハ!!やっぱり今のケイにはちょっとレベル高かったかww」

「お前なぁ…;」

「じゃあ次はこれねー。はい、ケイ」


そう言ってシャルは反対の手に隠し持っていたあっちこっち絡まりかけのパタパタスプリングをケイに……、つーかお前もこの短時間によくそんなもん見つけてきたな。

ガラクタ山の上からスプリングを転がして(絡まってたからかあんま上手い具合にパタパタ転がっていかなかったが)またケイの奴をビビらせていた。


「おーし。なら今度はオレがシャルのよりもっと面白ぇもん探してきて見せてやるぜ、ケイ」

「あ、だったら競争ね。オレとウボォー、どっちがケイをよりビックリさせられるか。どう?」

「ふん。構わねーぜ。オレに勝てると思うなよ?」



…とまあそんな感じで、まずはケイが面白れぇ反応しそうなガラクタを集めるトコから始まったりしたわけだが。


昼もだいぶ過ぎたころに、「2人ともケイの靴ちゃんと探してあげる気ある?」とデメを構えたシズクに突っ込まれた。





「おお、悪ィwそういやそういう話だったなw」

「ハハハハwホントだよ。全然夢中になってたw」

「もー。そんなことだろうと思った」


そうやって文句を垂れたシズクは、持っていたデメの首をケイの前に出して、「デメちゃん!」と合図した。

するとデメの口からゴロゴロといくつも靴が吐き出されて、その場に軽く山んなって転がった。



「…お前の掃除機マジで便利だよな…」

「本当、重宝するよねー」


と、靴の山を見下ろしながらシャルと一緒ンなってうんうんと感心する。



「でも適当に『靴』で集めちゃったから、2人とも選別手伝ってくれる?」

「おう。良いぜ」

「このぐちゃぐちゃの靴の山から1個1個左右揃えてケイの足のサイズも合わせて…か。さしずめケイはシンデレラ、ってとこ?」

「…うう?」

「ま、たまにはいいじゃねーか。お前らも座れよ。こういうのも宝探しの醍醐味って奴だろ?」



そう言って靴の山を前にどかりと胡坐をかいた。そんでもって、傍の冷蔵庫に座っていたケイを「オラ、お前もこっち来い」と引きずり込んで、足の間に座らせる。


シズクとシャルもそんなオレを見て頷いて、続いてその場に座り込んだ。

4人で靴の山を囲んで、まずはケイの足には間違いなく合わないサイズの子供用とか女物の靴、使い物にならないレベルのボロ靴をポイポイと山の外に投げ捨てていく。




「やっぱり革靴よりはスニーカーの方がいいかなぁ?あー…でもこれ、似たような左が見当たんないな」

「こんなのはどうだ、ケイ?足出してみな」

「ウフフ。くすぐったいデス、うぼーぎん…」

「だいぶブカブカだな」

「あ、赤いハイヒール。ケイの足白いからこれ似合いそう」

「いや、確かに似合いそうではあるけどさwその前にサイズ入んないでしょ、それ。女物だよ?」

「そう?これは割と大きいよ。LLサイズ」

「…あっ。残念。たぶんこれ、それの右だけど、ヒールが折れてた」

「でもそのぐらいなら直りそうじゃない?」

「オッケー。じゃあケイ、まずサイズどう?」

「いたい」

「頑張って履いて」

「いたい」

「3Lどっかに無い?シズク」

「お前ら、そうまでしてハイヒール履かせてーのかよw」



困った顔のケイを前に(つーかオレの前)漫才みたいなことやってるシズクとシャル。


お前らの方こそまじめにやれよwっつったら、シズクが「えー。でも絶対赤いの履かせたい」と立ち上がって、またデメをその手に具現化した。



「…なんだ、まだやるのか?んな歩きづらそーなハイヒール探してやるよかサンダル探してやれよwサンダルなら多少サイズ違っても大丈夫だろ。この穴あきサンダルみてーなのとかどーだ?」


と、手近にあった穴あきサンダルの片方をポイッとシズクの足元に投げてやった。

でもシズクはそれじゃあ納得いかねーみたいで、「えーっ!?」とそれに文句をつけてくる。



「だめだよー、こんな変な色のクロックスじゃ全然可愛くないもん。……デメちゃん、もう一仕事だよ。この辺一帯にあるハイヒールの靴を残らず吸い集めて!」



ガラクタの山に向かってデメを構えてシズクがそうやって叫ぶ。


ギョギョー!とか一声鳴いたデメは、そのどこまで威力があんのかわからねー唯一つの吸引力でガラクタ山から新たにいくつもの靴を吸い寄せていく。

ガラガラとでかい音と砂ぼこりを上げてガラクタの山が崩れた。…相変わらずスゲーもんだな。





「ウフフー!しずく、スゴイ!ナァニ?それネン能力?スゴイ掃除機!」


と、デメを見てケイの奴が急にオレの足の間でハシャぎ出した。パチパチと手を叩いて喜びやがる。

…念能力とかは多少はまだわかるんだな、コイツでも。




「シズクの、念能力スゴイです。ワタクシ、見るの、こんな、は見るシタのナイ!スゴイ!ウフフ!そうじき、シズク、の…!スゴイデスネー!ウフフフ!」

「あーあ。ケイってば、ハシャぎすぎだってwウボォーの真ん前でさー」

「ナンデ?ナンデ?シズク、の…、ダッテスゴイ!ワタクシ見るの、掃除機…の、吸うは、あれハ、ああいう…は、初メテ!
 武器、ナノは見たアルの、いろいろ…。弓、カタナ、も…、銃。ケド…、デモ、デモー、そうじき!シズク、のは掃除機!タクサン吸う、なんデモ…!そうじき、は…、念能力スゴイ!!」


「…ケイ、もしかして褒めてくれてるの?ありがと。デメちゃん、って言うんだよ」

「ギョギョー!」

「ウフフ。デメチャン?ウフフフ。デメチャンすごい!うぼーぎんは、見たデス?シズク、の、デメチャン!すごいデスネ!ふふふふ」



グイグイとオレの肩から垂れ下がる毛皮を引っ張って、オレにまで同調を求めてくるケイ。


だからシズクのデメが便利でスゲーのは元から知ってるってーのに。めちゃくちゃ楽しそうだな、お前。






「……あ。ウボォー、ちょっと不機嫌だったりする?」

「うるせぇ」


体を横にクキッと折って、ニヤニヤとシャルがオレの顔を覗き込んでくる。

お前は…。ホントそういう時だけは妙に楽しそうだよな…!



「じゃあこの際、ウボォーのも見せてあげたら?ビックバンインパクト」

「ぁあ!?」

「だってほら、あれならケイ、絶対びっくりすると思うよ?オレも久々に見てみたいしさー、ウボォーの凄いところ。
 目指す威力はミニチュアローズ、…だっけ?だいぶ近づけた?」


「ウボォー、まだそれ言ってるんだ。冗談だと思ってたのに」

「わかってないなぁ、シズク。ウボォーがこういうことで冗談言うわけないじゃんw強化系だよ?本気の本気。…だよね?ウボォー」

「…ふん。まーな」



なんだ?シャルの奴、急に持ち上げてきやがって。空気でも読んだつもりか?


まあ、褒められてキレるほどオレも心狭くはねーけどよう。




「ね?ケイもウボォーの凄い念能力、見てみたいだろ?見せてー、って言ってあげなよ。ウボォーが喜ぶよ?w」

「う?うぼぉーぎん?よろこぶデス?スゴイ?本当?スゴイ、のは、ウボォーギンのも、わたくし見たい!見るの、ネン能力…!スゴイ!うぼぉーぎんのスゴイ、見るシタイデスネ!」


「………ちっ、仕方ねぇなぁ」




なんだかいいようにシャルの奴に乗せられてる気もしなくねー。「思うつぼだね」なんてシズクが呟いたような気もする。


が……、何より楽しみにしてるケイのためだ。しょうがねぇ。そこまで言うなら見せてやるか。



キラキラと期待いっぱいにオレを見上げてくるケイの赤目。

これがどんな反応になるか―――ま、大体想像はつくが、想像つくだけになんかこう…ちょっとムズムズ気持ちが逸る………ような感じを抑えて、普段通りによっと立ち上がった。


足の上にいたケイは横倒しの冷蔵庫の上にちょこんと戻してやって…、と。




崩れたガラクタの山を前に、すーっと目一杯に鼻で息を吸う。そしてギュッと強く両拳を握り込んだ。


…おし、やるか。





「おっしゃ!目ン玉よっく開いて見てろよ、ケイ。すげぇモン見せてやるからなぁ!!ビックバン……」




拳銃のハンマーをコックするようにミシリ、と右拳を後ろに引き込んで構える。


そのまま1歩、力強く踏み込んで―――渾身のオーラを込めた右ストレートを、ガラクタの山へと振り抜いた。





打ち込んだ瞬間、すげえ轟音と一緒にミサイル級のオーラが派手に爆ぜる。

申し分ない威力―――だが、"まだいける"と確信できる―――オレの拳は、たったの一撃のみでガラクタの山を丸ごと吹き飛ばし、辺り一帯の地面までクレーター状に抉り取って、治まりがついた。




「オラ、どーだケイ!?見たか、オレのビックバン…インパク、ト……あ?ケイはどうした?」




目をまんまるくして驚いてるケイを想像しながら後ろを振り向く。


…が、ケイは冷蔵庫の上に………あっれ、いねぇじゃねーか!?





「……あー…、ウボォー。ごめん」




とシャルがなぜか申し訳なさそうな顔で、ちょいちょいと冷蔵庫の…その下を指差した。シズクも後ろ手に腕を組んで、その場所を覗き込んでいた。



なんだ?と思ってオレもシャルの指差す先を覗き込んでみたら、冷蔵庫の裏には目を回したケイが無防備に倒れてて、その傍には壊れた電子レンジが転がっ…て……。


おいおい、こりゃまさか……;





「飛んできたそれがクリティカルヒット…だね。インパクトなだけに」

「誰が上手い事言えって…、言ってる場合かっ!!おぉい!ケイ!?しっかりしろぉお!!?」



でかいコブを額に作っちまったケイは、オレが抱き上げてやってもクテーンとしたまま。

夜中ンなるまで起きることはなかった。







つづく




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すもも

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ももももも。