double style ◆11:始末屋と殺し屋




「コレ欲しかったら―――――オレの言うこと、きいてよ」




キルアが198番のプレートを僕に見せびらかしながら、そう言いだした。

すごく悪戯っぽい笑みをうかべて。

……悪魔の尻尾がみえそうだ……;




「別にそんなに警戒することないぜ、ゼロ。オレの質問に、ウソはつかないこと。それ約束するならこれ、やるよ」

「わかりました。いいですよ」


そう返すと、キルアは少し拍子抜けしたような顔になった。


「え、いいの?そんなにあっさり納得して」

「いいですよ。そうまでするんだから、僕に何か聞きたいことがあるんでしょう?キルア」






……簡単なことでよかった……。



キルアの悪い微笑みを見て、僕はヒソカさんとギタラクルさんを思い出してしまったから。


もっとなんかこう…キスしてくれとかヘンなことをいわれるかと思ってしまった。








………ヒソカさんとギタラクルさんに失礼でしょうか………;




それよりもまずキルアに失礼です………。










「……ホントにウソつかないだろーね?」

「キルアとちがって僕はそうそうウソつきませんよ〜」

「ひでぇなー。オレのことそういう風に見てたんだ〜ゼロってば」

「フフッ。…それで、何が聞きたいんですか?」



「ゼロのこと。色々。」

「色々って範囲広すぎじゃないですか」


そう不平を漏らすと、キルアは持っていた198番のプレートをどこかへ投げるポーズをする。


「…じゃあこれ、いらないんだ?」

「わああっ!!いりますいります!」


僕らは大きな木の根元に隣同士に座った。



「…あのさ」

「はい」




「……"ジャズ"って、ゼロの何?」



………いきなり何を聞いてくるんだこの子は。

ちょっと吹き出しそうになりました…。








「…えーと…; どこで聞いたんですか?その名前」

「いいから。ジャズって何者?」

「んー…、僕の弟です。双子の。…一次試験のとき話したでしょ?僕の相棒がプロハンターだって。それが僕の弟の、ジャズです」

「ふーん」


納得してないのか、キルアは僕の目をじっと見つめてきた。


「……ウソは言ってない感じだけど…。まだなんか隠してそうだなー」



「…えぇ、隠してますね」


「それも話してよ」

「うーん…」

「…プレート…」

「わっ、わかりましたってば。…そんなことばっかりしてるとろくな大人になりませんよ。キルア」

「余計なお世話ー」

キルアはぺろっと舌を出して見せた。




「…ジャズは裏の仕事をしてるんです」

「へー、どんな?」

「うーん…"始末屋ジャズ"って………聞いたことありませんよね」


「………あ!…それ、知ってる!!」

キルアは僕の言葉に、はっと思い出したように言った。





…ただの子供じゃないとは思ってましたが…知ってるんですか…。







「どっかで聞いたことある名前だと思ってたんだ。ソレ聞いて思い出した。…親父から聞いたことがある」


「お父さんですか?……聞いても?」

僕は「何の仕事を」と含ませてそう聞いた。




「…親父は…っていうか…オレん家、暗殺稼業なんだよね。……って、ゼロには言ってなかったか…」

「…稼業って…、おうちの人みんなですか?」

「そう。…ゾルディック…っていうんだけど」

ブッ!!?






あ、あれぇ…?今の、どこかでも聞きましたねぇ…。






「知ってる?」

「あぁ、はい、知ってます知ってます。…伝説の暗殺一家です…よね…?」




僕、伝説を見すぎでしょうか…。







「親父が仕事で"始末屋ジャズ"とかち合ったことがあるらしくてさ、別々の依頼人から出されたターゲットがたまたま同じだったらしくて。

…ジャズのせいで随分手間取らされたってぼやいてたコトがあったんだ」


「へ、へ――――;」


そんな話、僕はきいてませんよ?ジャズ…。


……ゾルディックの方に褒められてると受け取っていいんでしょうか…。

…怖いけど…。





「…そういやゼロって、仕事手伝ってるって言ってたけど」

「僕は表面的な部分をちょっと手伝ってるだけですよ。…僕なんかジャズには微塵もかないませんから」


「…そうかな?ゼロも相当な腕隠し持ってそうだけど?」

「あはは。キルアにそう言われるのは悪い気しませんね」


あのゾルディック家の人間だったなら、キルアの常人離れしたポテンシャルも説明つきますね。

たぶん念を覚えなくても、僕くらい強いんじゃないですか?この子。


あはははは…………自分で言っててちょっと悲しいですが。




「…って、悪い気しないって言ってなんでゼロが落ち込むんだよ!」

「あー、その…ちょっと自虐が過ぎまして;」

「いや、ぜんっぜんわかんねーけど…。 ま、いいや。ありがと。じゃあこれやるよ」

そう言ってキルアは198番のプレートを渡してくれた。



「あっ、ありがとうございます、キルア。ありがたく使わせてもらいますね」

にっこり笑って一礼をすると、キルアは少し照れたようだった。


「べっ別にっ…たいしたことじゃねーよ」


そう言って、プイ、とそっぽを向かれた。

きっとお礼を言われ慣れてないんですね。


「クスッ」

「なっ、そこは笑うトコじゃねーぞ!ゼロ!」

「ごめんなさいキルア」

謝りつつもニコニコしてたら、キルアにチョップされました。


「しつこいっつーの」

すたすたと行ってしまう。


…照れ隠しにしか見えませんね。

僕はキルアに気づかれないよう、くすりと微笑んだ。




「ああ、待ってくださいキルア〜」


それから僕らはリミットまで、スタート地点付近で過ごすことに決めた。






ボ―――――――ッ!!

船の霧笛が鳴り響き、四次試験の終了を告げる。


四次試験合格者、10名。









つづく


NEXT→12:最終試験前面談←PREV(前話へ)

シルバさんとジャズくんがダブルブッキングしたターゲットは、シルバさんがゲット。
ジャズくんはそのおかげで報酬がパーになり、結構根に持っているようです。

すもも

TopDreamdouble style◆11:始末屋と殺し屋
ももももも。