キルアが遠くから、オレを呼ぶ声が聞こえた。
キルアの声と共にゲームが終わる。
「いやー、少し悪ふざけが過ぎました。大変失礼いたしました。……しかし、時間を忘れて楽しんでいただけましたでしょう?」
ゴトーさんはそういって笑っていたけれど、オレはそのゴトーさんの笑顔に、何か不自然さを感じた。
「ゴン!!ゼロ!!――――あとえーと…クラピカ!リオレオ!」
「私はついでか?」
「レオリオだっつーの!!」
「あはは」
やっとキルアと会えた!
「久しぶり!!よく来たな!どーした?ひでー顔だぜ!?」
「キルアこそ!」
顔面怪我だらけのキルア。
オレもカナリアに殴られてボコボコだったけど、キルアも似たり寄ったりだった。
「早速だけど出発しようぜ!!とにかくどこでもいいから!!ここにいるとオフクロがうるせーからさ」
キルアがオレとゼロの腕をひっぱる。
「あ、ごめんキルア、先に行ってて」
オレはゴトーさんに聞きたいことがあるんだ。
キルアに向かって頭を下げているゴトーさん。
「ゴトーさん。キルアがいなくなったら寂しくなるね」
ゲームを始めたとき言ってた。キルアが自分の子供みたいだって。だからオレはそう聞いたんだ。
でもゴトーさんは…
「いいえ…、私共執事は雇用主に対し、特別な感情は持ち合わせておりませんので」
「うそつき!」
大人ってうそつきだ。きっと寂しいはずなのに…。
「ゴンくん」
みんなの元に歩き出すオレを、ゴトーさんが呼び止めた。ゴトーさんはまたコインを投げる。
「さあ、どっちですか?」
……?
何がしたいんだろう?
「左手…でしょ?」
ゴトーさんは両手を開く。
コインは―――――右手。
うそ!?左手で取ってたのに…!?
「うそ…」
「そう、トリックです。世の中正しいことばかりではありません。………目に見えることだけがすべてではありません……。……お気をつけて」
なんだかすごく含んだ言い方だな……。
オレはなにか見落としてるんだろうか……。
「キルア様を……よろしくお願いいたします」
ゴトーさんはそう言ってオレに頭を下げた――――――
「それにしても何でお前ハンター証使わないんだよ」
とりあえず街まで降りてきたときにキルアがオレにそう言った。
キルアの言うとおり、ハンター証を使えば確かに外国滞在が容易になるけど……
「だって…決めたんだもん。やること全部やってから使うって」
「サトツさんとの約束ですか?」
ゼロが言った。そういえばゼロはあの時一緒にいたもんね。
「そう!」
「なんだよ、やることって」
「えーとね…まずはお世話になった人たちに挨拶に行って……なんとかカイトと連絡とって落し物返したいし……そして一番肝心なのは…
このプレートをヒソカに顔面パンチのオマケつきで叩き返す!!そうしないうちは絶対ハンター証は使わないって決めたんだ!!」
「「「何の話((だ))(ですか)それは」」」
あ……そういやクラピカにしか言ってなかったっけ……;
「――――――というわけ!」
オレはみんなに四次試験の時のことを話した。
「あぁ…!それであのときゴンは元気が無かったんですね?」
ぽんっと手をたたくゼロ。
「そう」
「――――で、ヒソカの居場所は?」
キルアの言葉にハッとなった。
そういやわかんない……;
「え〜〜〜と……」
「…フフッ。ゴンらしいですね」
「たしかに。……ヒソカの居場所なら私が知っているよ、ゴン」
「本当!?クラピカ?」
「なんでだ?」
レオリオが尋ねる。
「本人に聞いたからだ」
「何…?」
ぴたりと空気が止まった。
「……クラピカ。前から聞きたかったんだが…おまえ最終試験のときヒソカに何を言われたんだ?」
レオリオの問いかけにクラピカは少し黙った。
オレ達もクラピカが答えるのを待った。
「"クモについていいことを教えよう"…と」
「クモ…?」
ゼロが聞いた。
「ああ…、そうか、ゼロには話してなかったな。私は事情があってクモ…幻影旅団を追っている。………いつかゼロにも話すよ」
「はい。いつかぜひ聞かせてください」
「……クモは旅団のシンボルだ。それを知っていたヒソカの情報に興味があってな」
「なるほどな」
「で、講習のあとヒソカに問いただした。そしたら―――――
『9月1日、ヨークシンシティで待ってる』
そう言ったんだ」
「半年以上先ですね…」
「ヨークシンでなにがあんだ?」
少し考えてレオリオが気付いた。
「…あ。世界最大のオークションがある…!」
「そうだ」
「…旅団がくるのか?」
「かもな。………そう言うわけでヒソカはその日、ヨークシンに居るはずだ。見つけたら連絡するよ」
「わかった。ありがとうクラピカ!」
じゃあオレも早くケータイ買わないとね!
大きな通りまできた時、突然クラピカが立ち止まった。
なんだろうって思って見たら、クラピカはすごく晴れやかに笑って言った。
「さて、私はここで失礼させてもらうよ。キルアとも再会できたし、私は区切りがついた。…これからは本格的にハンターとして、仕事を探す」
「そっか。クラピカ、ヨークシンで会おうね!」
「俺も故郷に帰るぜ」
「え!?レオリオも!?」
レオリオの言葉にキルアとゼロも少なからず驚いてた。
「やっぱり医者の夢を捨てきれねぇ。ハンター証さえあれば国立医大の授業料も免除されるしな。これから帰って猛勉強しねーと」
「レオリオって医者になりたかったんですね?…試験のときはお世話になりました」
ぺこりとゼロがお辞儀した。きっと二次試験のときのことを言ってるんだろうな。
「おうよ、ゼロ。またいつでも倒れていいぞ」
「あははっ。じゃあそのときはまたお世話になっちゃいます」
「ばーっか、ゼロ。倒れないのが一番いいに決まってんじゃん」
キルアの言葉に、みんな笑顔になった。
「…また会おうぜ」
「そうだな、次は…」
「9月1日、ヨークシンシティで!!」
そうしてレオリオとクラピカがいなくなった。
「あっという間に3人になっちゃったね。ゼロは何か予定ないの?」
「今のところ無いですよ」
やった!まだゼロと一緒に居られるんだ!?
「じゃ、どーする!?」
「…どーするってお前…特訓に決まってるだろ!」
キルアがあきれてるけど…特訓って?
「なんの?遊ばないの?」
え?
キルアも…なんでゼロまであきれてるの!?オレ、何か言った??
「お前なー。今のまんまでホントにヒソカを一発でも殴れると思ってんのか!?半年どころか10年たっても無理だっつーの!!」
「う…;」
そういやそうだった…;
「いいか、わかりやすく言うと……これがヒソカ。…で、これがゼロな」
キルアが地面にヒソカとゼロの絵を描いた。
「うわー、よく特徴をとらえてますねキルア」
「問題はそこじゃねーし!」
「ゼロはともかくヒソカはそっくりだね」
「そうですか?僕も似てると思いますけど」
「聞けっつーの!!………いいか、ヒソカとゼロの力の差をこのぐらいだとすると…」
「僕、そんなに強いんですか!?」
「え?ゼロは強いじゃん」
「聞けー!!!」
「「あはははは」」
「で、ヒソカとお前との差は…………………………………………………………………………………………ここ!!かなりおまけでな」
すんごい遠くまで線を引っ張ったキルア。
「ちょっとむかつく」
「あははは。そこまでひどくないですよ〜キルア〜」
「え!?『そこまで』って…ゼロひどい!!」
「真実だゴン。あきらめろ」
キルアが戻ってきた。
「ムカ〜…じゃキルアはどこなのさ!?」
「オレか?まぁ……ここだろな」
「「へぇ〜〜〜〜〜」」
「なんだよゼロまで」
「いや、僕のほうが強いのかなーって。」
「え?ゼロのほうが強いだろ?」
「ふ〜〜〜〜ん」
「なんだよゴン」
「キルアもゼロもやっぱりすごいなー」
「なにがだよ。恥ずいだろ、真顔で言うな」
「オレは相手との差なんてはっきりわかんないよ〜」
「バカ、こんなのテキトーだよ。ゴンだってなんとなくならわかるだろ?」
「う〜〜〜ん」
「クスクス」
オレ達はまた歩き出した。
「それにコレにばっか頼るのもよくねーぞ。強い奴ほど強さを隠すのがうまいからな。…ゼロみたいに」
「あ、うん。そっか」
最終試験のときゼロは『本気』っていってたけど…二次試験のときの光の玉とかよくわかんなかったし…。
「ふふふっ。まぁ…ご想像にお任せします」
「ぜってぇ何か隠してるよなー」
キルアがオレに耳打ちしてきた。
「うん。きっとね」
「とにかく!なんにせよヒソカは相当強い!!」
「うん!」
「そうですね」
話しながら、空港まで来た。
「並大抵のことじゃこの半年で一矢報いるのは無理だ」
「うん」
「ゴン…、ゼロも金持ってるか?」
…そういえばそろそろ無いんだよね。
「じつはそろそろやばい」
「そっか。オレもあんま持ってない」
「僕も手持ちはちょっとやばいですね……おろせばありますけど…」
「そこで一石二鳥の場所がある!」
「え!?どこ?」
「………あ。」
「さっすが!ゼロは知ってるか」
キルアとゼロが顔を見合わせて笑ってる。
え〜!?なんだよ〜。2人だけ知ってるの!?ずるいキルア!!
「どこなのさ〜」
「「天空闘技場!!」」
つづく
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次から天空闘技場編です。
すもも