double style ◆22:約束





キルアが遠くから、オレを呼ぶ声が聞こえた。


キルアの声と共にゲームが終わる。



「いやー、少し悪ふざけが過ぎました。大変失礼いたしました。……しかし、時間を忘れて楽しんでいただけましたでしょう?」

ゴトーさんはそういって笑っていたけれど、オレはそのゴトーさんの笑顔に、何か不自然さを感じた。



「ゴン!!ゼロ!!――――あとえーと…クラピカ!リオレオ!」

「私はついでか?」

「レオリオだっつーの!!」

「あはは」



やっとキルアと会えた!



「久しぶり!!よく来たな!どーした?ひでー顔だぜ!?」

「キルアこそ!」

顔面怪我だらけのキルア。

オレもカナリアに殴られてボコボコだったけど、キルアも似たり寄ったりだった。


「早速だけど出発しようぜ!!とにかくどこでもいいから!!ここにいるとオフクロがうるせーからさ」

キルアがオレとゼロの腕をひっぱる。

「あ、ごめんキルア、先に行ってて」


オレはゴトーさんに聞きたいことがあるんだ。




キルアに向かって頭を下げているゴトーさん。


「ゴトーさん。キルアがいなくなったら寂しくなるね」


ゲームを始めたとき言ってた。キルアが自分の子供みたいだって。だからオレはそう聞いたんだ。

でもゴトーさんは…


「いいえ…、私共執事は雇用主に対し、特別な感情は持ち合わせておりませんので」


「うそつき!」


大人ってうそつきだ。きっと寂しいはずなのに…。



「ゴンくん」

みんなの元に歩き出すオレを、ゴトーさんが呼び止めた。ゴトーさんはまたコインを投げる。


「さあ、どっちですか?」



……?

何がしたいんだろう?



「左手…でしょ?」


ゴトーさんは両手を開く。



コインは―――――右手。

うそ!?左手で取ってたのに…!?


「うそ…」

「そう、トリックです。世の中正しいことばかりではありません。………目に見えることだけがすべてではありません……。……お気をつけて」



なんだかすごく含んだ言い方だな……。

オレはなにか見落としてるんだろうか……。




「キルア様を……よろしくお願いいたします」

ゴトーさんはそう言ってオレに頭を下げた――――――












「それにしても何でお前ハンター証使わないんだよ」

とりあえず街まで降りてきたときにキルアがオレにそう言った。


キルアの言うとおり、ハンター証を使えば確かに外国滞在が容易になるけど……

「だって…決めたんだもん。やること全部やってから使うって」

「サトツさんとの約束ですか?」

ゼロが言った。そういえばゼロはあの時一緒にいたもんね。

「そう!」

「なんだよ、やることって」

「えーとね…まずはお世話になった人たちに挨拶に行って……なんとかカイトと連絡とって落し物返したいし……そして一番肝心なのは…

このプレートをヒソカに顔面パンチのオマケつきで叩き返す!!そうしないうちは絶対ハンター証は使わないって決めたんだ!!」

「「「何の話((だ))(ですか)それは」」」



あ……そういやクラピカにしか言ってなかったっけ……;




「――――――というわけ!」

オレはみんなに四次試験の時のことを話した。


「あぁ…!それであのときゴンは元気が無かったんですね?」

ぽんっと手をたたくゼロ。

「そう」

「――――で、ヒソカの居場所は?」

キルアの言葉にハッとなった。





そういやわかんない……;


「え〜〜〜と……」

「…フフッ。ゴンらしいですね」

「たしかに。……ヒソカの居場所なら私が知っているよ、ゴン」

「本当!?クラピカ?」



「なんでだ?」

レオリオが尋ねる。

「本人に聞いたからだ」

「何…?」


ぴたりと空気が止まった。



「……クラピカ。前から聞きたかったんだが…おまえ最終試験のときヒソカに何を言われたんだ?」

レオリオの問いかけにクラピカは少し黙った。

オレ達もクラピカが答えるのを待った。





「"クモについていいことを教えよう"…と」


「クモ…?」

ゼロが聞いた。

「ああ…、そうか、ゼロには話してなかったな。私は事情があってクモ…幻影旅団を追っている。………いつかゼロにも話すよ」

「はい。いつかぜひ聞かせてください」

「……クモは旅団のシンボルだ。それを知っていたヒソカの情報に興味があってな」

「なるほどな」

「で、講習のあとヒソカに問いただした。そしたら―――――

『9月1日、ヨークシンシティで待ってる』

そう言ったんだ」


「半年以上先ですね…」

「ヨークシンでなにがあんだ?」



少し考えてレオリオが気付いた。


「…あ。世界最大のオークションがある…!」

「そうだ」

「…旅団がくるのか?」

「かもな。………そう言うわけでヒソカはその日、ヨークシンに居るはずだ。見つけたら連絡するよ」

「わかった。ありがとうクラピカ!」

じゃあオレも早くケータイ買わないとね!





大きな通りまできた時、突然クラピカが立ち止まった。

なんだろうって思って見たら、クラピカはすごく晴れやかに笑って言った。


「さて、私はここで失礼させてもらうよ。キルアとも再会できたし、私は区切りがついた。…これからは本格的にハンターとして、仕事を探す」

「そっか。クラピカ、ヨークシンで会おうね!」

「俺も故郷に帰るぜ」

「え!?レオリオも!?」

レオリオの言葉にキルアとゼロも少なからず驚いてた。


「やっぱり医者の夢を捨てきれねぇ。ハンター証さえあれば国立医大の授業料も免除されるしな。これから帰って猛勉強しねーと」

「レオリオって医者になりたかったんですね?…試験のときはお世話になりました」

ぺこりとゼロがお辞儀した。きっと二次試験のときのことを言ってるんだろうな。

「おうよ、ゼロ。またいつでも倒れていいぞ」

「あははっ。じゃあそのときはまたお世話になっちゃいます」

「ばーっか、ゼロ。倒れないのが一番いいに決まってんじゃん」

キルアの言葉に、みんな笑顔になった。





「…また会おうぜ」

「そうだな、次は…」


「9月1日、ヨークシンシティで!!」



そうしてレオリオとクラピカがいなくなった。




「あっという間に3人になっちゃったね。ゼロは何か予定ないの?」

「今のところ無いですよ」

やった!まだゼロと一緒に居られるんだ!?

「じゃ、どーする!?」


「…どーするってお前…特訓に決まってるだろ!」

キルアがあきれてるけど…特訓って?

「なんの?遊ばないの?」




え?

キルアも…なんでゼロまであきれてるの!?オレ、何か言った??



「お前なー。今のまんまでホントにヒソカを一発でも殴れると思ってんのか!?半年どころか10年たっても無理だっつーの!!」

「う…;」


そういやそうだった…;



「いいか、わかりやすく言うと……これがヒソカ。…で、これがゼロな」

キルアが地面にヒソカとゼロの絵を描いた。


「うわー、よく特徴をとらえてますねキルア」

「問題はそこじゃねーし!」

「ゼロはともかくヒソカはそっくりだね」

「そうですか?僕も似てると思いますけど」

「聞けっつーの!!………いいか、ヒソカとゼロの力の差をこのぐらいだとすると…」

「僕、そんなに強いんですか!?」

「え?ゼロは強いじゃん」

「聞けー!!!」

「「あはははは」」



「で、ヒソカとお前との差は…………………………………………………………………………………………ここ!!かなりおまけでな」

すんごい遠くまで線を引っ張ったキルア。

「ちょっとむかつく」

「あははは。そこまでひどくないですよ〜キルア〜」

「え!?『そこまで』って…ゼロひどい!!」

「真実だゴン。あきらめろ」

キルアが戻ってきた。


「ムカ〜…じゃキルアはどこなのさ!?」

「オレか?まぁ……ここだろな」

「「へぇ〜〜〜〜〜」」

「なんだよゼロまで」

「いや、僕のほうが強いのかなーって。」

「え?ゼロのほうが強いだろ?」



「ふ〜〜〜〜ん」

「なんだよゴン」

「キルアもゼロもやっぱりすごいなー」

「なにがだよ。恥ずいだろ、真顔で言うな」

「オレは相手との差なんてはっきりわかんないよ〜」

「バカ、こんなのテキトーだよ。ゴンだってなんとなくならわかるだろ?」

「う〜〜〜ん」

「クスクス」

オレ達はまた歩き出した。




「それにコレにばっか頼るのもよくねーぞ。強い奴ほど強さを隠すのがうまいからな。…ゼロみたいに」

「あ、うん。そっか」

最終試験のときゼロは『本気』っていってたけど…二次試験のときの光の玉とかよくわかんなかったし…。


「ふふふっ。まぁ…ご想像にお任せします」



「ぜってぇ何か隠してるよなー」

キルアがオレに耳打ちしてきた。


「うん。きっとね」




「とにかく!なんにせよヒソカは相当強い!!」

「うん!」

「そうですね」


話しながら、空港まで来た。

「並大抵のことじゃこの半年で一矢報いるのは無理だ」

「うん」



「ゴン…、ゼロも金持ってるか?」


…そういえばそろそろ無いんだよね。


「じつはそろそろやばい」

「そっか。オレもあんま持ってない」

「僕も手持ちはちょっとやばいですね……おろせばありますけど…」




「そこで一石二鳥の場所がある!」

「え!?どこ?」


「………あ。」

「さっすが!ゼロは知ってるか」



キルアとゼロが顔を見合わせて笑ってる。

え〜!?なんだよ〜。2人だけ知ってるの!?ずるいキルア!!



「どこなのさ〜」




「「天空闘技場!!」」







つづく


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次から天空闘技場編です。

すもも

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ももももも。