double style ◆33:ヒソカvsカストロ戦




うう…ヒソカさんってなんであんなに戦い方が粘っこいというか…ねちっこいというか………。

僕、気持ち悪くなってきました………;







ヒソカ対カストロ戦が始まりの合図を告げた。



開始早々カストロさんがヒソカさんに向かって突撃。

えーと、右の手刀をヒソカさんが避けたはずなのに、避けた後に…ヒットした?

むー?目の錯覚でしょうか?手が二重に見えたような…?



「なんだ今の!?錯覚か!?」

隣に居たキルアがそう言った。

「やっぱりキルアも二重に見えましたか?」

「ゼロもそう見えた!?」

「あれがカストロさんが言っていた能力なんでしょうかね?うーん…?」


………?

でも なんかおかしいんですよね…。

ひっかかるというか…。



考えているうちにヒソカさんがカストロさんの猛攻を食らい、倒れこむ。

カストロさんが最後の攻撃を繰り出したとき、カストロさんの体が重なって見えた。



…あ、なんとなくわかりました。






『分身(ダブル)…だな』



と、僕が答えを紡ぎだす前に、頭の中でジャズの声…。




ああ、やっぱりそうですか。

キミの能力はあれを真似てるって言ってましたよね?たしか。




『まあな。…つっても色々能力盛ってるし厳密に言えばオレのはダブルとちょっと違うが…。あいつのあれは間違いなく"分身(ダブル)"の能力だ。

…まぁ扱いが下手なトコをみると…開発途上か…もともとのオーラの性質が具現化に向いてねぇんだろな』


うへぇ。よくこの短時間でそこまで見切れますねジャズ…。



『だってオレは具現化だもん』

「だもん」って…ジャズ、そういうキャラでしたっけ?



『ああいう"ヒトの形をした具現化物"の扱いが複雑なのはよくわかってるつもりだぜ。オレが使ってるのもそれだしな』

『それなら僕もわかりますよ。操作系は放出系と隣り合っていますけど、それでも飛ばしたオーラの操作って難しいですから……

具現化系の場合は操作系とは特質系をはさんでその隣ですもんね』



具現化系の能力者は本来、オーラを飛ばしたり操作したりするのは苦手なはずだ。

ジャズもそう…。って思ってたら、ジャズはしれっと


『オレは天才だから。』


とかイラッ☆とすること言ってきた。



はいはい、そーですかー。

僕は所詮凡人ですよー。




『ダブルの神髄ってのは分身と本体とのコンビネーション戦闘だと思うが、見たトコあいつはまだそこまで行ってねぇ。…あの年齢でだ。

ってことは能力開発自体が遅くて修行が足りずに技術が追いついてねぇか、単に能力が"分身(ダブル)"に向いてないからって事になる』

『そっかー…なるほど…』


『つっても、能力の生かし方なんて一つじゃねーし、他にも隠し玉があるかもしんねー。

そもそも具現化系の能力としては"分身(ダブル)"はかなりポピュラーではあるが、"分身(ダブル)"を能力に選んだ上でその威力を十全に発揮できる奴ってのはそう居ねぇんだ。

極めようってなるととたんに難度高くなるからな、この手の能力は。未完成の状態でもはや当たり前なんだよ』


『んー、じゃあ能力そのものの完成度よりも、戦い方が重要って事?』

『あいつだって勝算も無しに挑んだわけじゃねーだろ。どう戦うのか、あと相手の奴がどう対処すんのか、ケーススタディのつもりでお前もよく見とけよ?』

『むぅ……。わかりました』





「…ゼロ? ゼロはあれ…わかった?」


エラソーなジャズのアドバイスを耳に、傍から見れば考え込んだまま動かない感じになってた僕。

それをキルアが気になったのかそう訊いてきた。うぅん…すいません;


「あ、えと…、なんとなくは」


僕がキルアに苦笑と一緒にそう言葉を返したとき、オオォーと一気に観客が沸いた。


「でたぞ!虎咬拳!!」

「まずカストロが本気になった!!」


「あー…、ついに動き出しましたね。虎咬拳、ですか…」

「掌を虎の牙や爪に模して敵を裂く拳法だよ、ゼロ」

「あ、大丈夫です。知ってますよ。でもありがとうキルア」


…って笑顔で返すとキルアは「あ…、うん」と赤くなってしまうんですけど。

キルアって案外褒められ慣れてない感じしますよね?シャイかな?


「達人になると素手で大木まで裂くって話ですけど、カストロさんの虎咬拳も見たところかなり練度高そうですね?」

「……ああ。それに加えてヒソカの奴はまだカストロの本当の能力にも気づいてない…。このままだとヒソカ、やられるんじゃね?」


「うーんそうですね…」




とはいえ、なぜか僕はヒソカさんには勝って欲しいと思ってる。


ヒソカさんがカストロさんの"分身(ダブル)"の能力を見切れずに負けるだなんて…。


ゴンの目標が…それほど弱いなんて思いたくないからだ。





両手を前に構え、そのまま突進していくカストロさん。

そのカストロさんに向かって、ヒソカさんは左手を前に突き出す。


「あげるよ」


そう言っているように思えた。






……何考えてるんだろうな…ヒソカさん……。

カストロさんの能力を見切るためなのか…それともただの余裕なのか…僕には理解できない。




『誘ってンな』

「え…?」

ジャズがそう言った瞬間、左腕を完全に捉えていたはずのカストロさんが消えた。あっちがダブルか…。

そして後ろに回った本物が、その「虎の牙」でヒソカさんの右腕を食いちぎる。


……うっ、…ぐぅ〜……っ、嫌な音………。


肉が裂けるような、骨が砕けるような…表現しがたい不気味な音を立て、ヒソカさんの腕が吹き飛ぶ。

流れ出た血が、空を舞った。



でもヒソカさんは余裕の笑みを張り付けたままで


カストロさんの2撃目を前に跳んで避け、落ちてきた自分の右手をジャストでキャッチした。





腕をもがれたというのに、ヒソカさんの顔から笑みが消えない。

格下相手とか…逆の立場であの笑みならまだわかるけど…。



腕をもがれて尚、あの笑みを浮かべるヒソカさんははっきり言ってかなりブキミだ…。


なんであんな風に笑っていられるんだろう…まだ状況は好転してなんかいないのに……。




うぅう…気分悪くなってきた………;






「あ…おい、ゼロ…大丈夫か?顔色悪いぜ?」

「あふぅ……;ヒソカさんの戦い方、怖いです…」


試合前の震えとはまったく別の類の震えが来る…。



…やっぱりちょっと戦いたくないかも……;






「くっくっく、なるほど。キミの能力の正体は……キミのダブル…だろ?」


笑って言ったヒソカさん。

それに応えるためなのか、カストロさんがわざわざダブルの分身を出して見せる。ええぇー……;



『……………アイツ、バカだな』

『…うー…、能力を見せて応えるなんて…;』


普通なら、たとえ相手に能力を見破られても、あんな、能力を見せて応えるなんてことはしない。

ブラフを混ぜるとか黙って押し切るとか出来そうなものだけど…。ちょっとカストロさんもヒソカさんとは別の意味で理解しがたいなぁ…;

カストロさんなりの敬意の表し方なのかなぁ…。




『虎咬拳の威力といい…あのアホさ加減といい……たぶん本質は強化系だな、アイツは』


せめて、まっすぐな人とかバカ正直な人とか言ってあげようよ…ジャズ……。





カストロさんの"分身(ダブル)"の能力はまだ発展途上…。いや、カストロさんが強化系だとすると具現化系能力の"分身(ダブル)"はあの状態で完成形に至ってると言えるかもしれない。

となるとおそらくダブルは囮か、あのひらひらした衣装でできる死角を利用するためのもの。


本命はダブルの死角からの、本来の性質である強化の能力…虎咬拳での一撃ってことか。

シンプルなのに安定した連携でうらやましいな…。


こうやって外から見てる分には見破る事も難しくないけど、ダブルの存在を知らずに戦ったとして、戦闘中にそれを見切ってさらに反撃に出る…となるとちょっと難しいんじゃないでしょうか。

威力の高い虎咬拳を武器に押せ押せで来られたら、ダブルとの手数で訳わからない内にホントに押し切られちゃう可能性もあるし…。

キルアもそのカラクリと攻略難度の高さに気づいたのか顔を強張らせてた。




「勝てるんでしょうか…ヒソカさんは……」


そう呟いた瞬間ヒソカさんは…………








自分の腕をく…く、食い………




ぃいい〜〜〜〜っ!??

…ひぃ…もう僕、ダメ………









リングから視線を外す。



ものすごい鳥肌たった………。

心臓が締め付けられる……。

涙出てきた………。





『………ゼロ……もう、いい。見なくていい。帰るぞ…』

「うん………」



ごしごしと涙を拭いて、リングを見ないように立ちあがった。


「ゼロ……どした?まだ…おわってないぜ?」

「ご、ごめんなさいキルア……僕…帰ります………」

「なんで?…あ…………うん、ゼロは帰ったほうがいいよ…スッゲー顔色悪い…」

急に立ち上がった僕を見上げて、キルアがそう言ってくれた。

全部顔に出てたらしい………。




「すいません、1人残していくのは…無責任なんですが……」

「いいよ。オレそこまで子供じゃないしさ。…ゼロこそ、気をつけて帰んなよ……今にもぶっ倒れそうだぜ?」


「だい…じょぶです……では…」

僕はリングには目もくれず、足早にざわつく会場を後にした。











誰も居ない通路をよたよたと歩いていたが、しだいに歩くのもつらくなって……壁にもたれた。

足から力が抜ける。


『ゼロ……。ゼロ……。部屋まできついなら…オレが代わるぞ』

「うん………ごめんね…ジャズ……おね…がい………」


ひどい不快感と言い知れぬ恐怖感で疲れ果てた僕の意識は、そこで途切れてしまった…………






つづく


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すもも

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ももももも。