『……眠ィ……』
「あれ?居たんですかジャズ?」
さくさくとけもの道を歩く間に聞こえた"相棒"の声に、僕はふと疑問の声を投げた。
…てっきり、『ゲーム』のなかではキミには会えないものだと思ってたんですけど?
『何だよ、オレがいちゃ悪いのかよへなちょこ』
「ううん、そんなことないよ、嬉しい。こんなところに1人だとやっぱり心細いですもん。…っていうか開口一番"へなちょこ"ってヒドイです!」
『気にすんな』
「気にしますよ〜」
『ふくれっ面してる暇あったらさっさと剣抜け、ゼロ。"良くねぇもん"が近くで息潜めてるぞ』
「え?」
「―――ハハァ!うまそうな匂いがすると思ってたら…、なんだ、やっぱり人間がいたぞ!」
ジャズの忠告とほぼ同時に、ガサガサと木々の間から人相の悪い男達が出てきた。
全部で3人。全員、耳がとがってる。…妖怪さんだ。
「…僕に何か御用ですか?」
一応警戒しつつ、3人に対してそう尋ねた。
雀呂さんは「妖怪に会ったらすぐ逃げろ」って言ってたけど…、ほら、もしかしたらこの人たちも雀呂さんみたいにいい人たちかもしれないし…。
………期待しすぎかな。なんか雀呂さんよりガラ悪い気が…;
と、思ったら案の定、3人組はゲラゲラと腹を抱えて笑い出した。
「はあ?聞いたかよ?コイツ、『何か御用ですか』だとよ」
「俺たち妖怪が人間に用事といやぁ一つしかねーだろうが!」
「そのおいしそーなお肉と内臓、ごちそうさせてくださいヨーンv」
「「「ぎゃはははは!!」」」
『…てか、なんだこいつら?』
『んと…、なんか人間とこの土地をめぐって争ってる種族…らしいんですけど…』
不機嫌そうに訊いてくるジャズに、僕はさっき雀呂さんから聞いた話をかいつまんで説明した。
人間が妖怪を迫害してるって話と、それに抵抗する妖怪の話。
『…お前、それ騙されてんだよ。当の妖怪から聞いた話なんだろ?』
『あはは、やっぱりジャズもそう思います?;』
人間と妖怪とが争ってるっていうのは本当なんだろうけど―――妖怪が人間を食べるって…。それじゃ聞いた話とまるっきり正反対じゃないですか!
「もー。だから雀呂さん、あんなしどろもどろな嘘を展開してたんですね」
雀呂さんが『妖怪に会ったらすぐ逃げろ』って言ってたのはそういう理由からだったんですねー。
ねじ曲がったままの真実しか知らない僕がホイホイ妖怪に近づいていかないようにって。
…なんだ。やっぱり雀呂さん、「妖怪」だけど悪い人じゃなかったんだ。
まあ人間だって良い人ばかりじゃありませんしね。逆も然り、ってことなのかな。
ふふっ。
「じゃあ早めに森を抜けて、近くの町か村でまた一から情報収集しなおさないとダメですね〜」
『その前に目の前の3人だ。弱そうだからって無視してやるな、カワイソーだろうがよ』
「ああ、うん」
のんびりジャズと話してたら、妖怪さんたちが「嘗めてんのか」とキレていた。
各々、曲刀や鉄棒なんかの武器を手に僕を囲む。
敵は3人。
雀呂さんは、『妖怪は人間よりももっと強い力を持ってる』って言ってたけど、プロハンタークラスに強いのかな?
だったらちょっとヤバいんだけど………っと…。
『なんだ、ボーっと考えて。代わってやろーか?ゼロ?』
「んー、大丈夫ですよジャズ。何とかなると思います。レイ・フォースも使えるみたいだし…、それにこの人たち闘技場の人たちより弱そうだし。」
『ぶはっ!そうかよ、じゃ、がんばれや』
「うん」
この世界でもオーラは…使える。"追尾する光の矢(レイ・フォース)"も大丈夫。
レイ・フォースさえ使えれば、最後の逃げ道は確保したも同然。いざとなったら逃げの一手で。
…それ以前に、この程度の人たちになら僕、負けませんけどね。
「何ごちゃごちゃ独り言吐いてんだ、テメェ?」
「おいおい、怖がらせてやるなよ。人生最後のお祈りくらいゆっくりやらせてやろうぜ〜?」
「そうそう、5分後には俺等の腹に納まっちまうんだからよ」
「ギャハハッ!それもそうか!」
「ま、その前にひん剥いて"お楽しみ"でもいいかもなぁ?顔もそこそこ良いし…ヤワそうで具合良さそうだ」
「好きだな〜、お前」
そう言ってまたゲラゲラと下品に笑う妖怪さんたち。
「? 何?ヤワそう?……ヨワそう?」
よくわかんなくて、『聞き間違いかな?』とジャズに訊いてみる。
『……"弱そう"だってよ』
「ふーん…」
『言いたい放題だなぁ?ゼロ?』
「うーん、そうですね。でも、そう思われるのもいつもの事ですし」
ジャズも僕の中でくすくすと笑ってるけど、僕はそれを適当に流す。
たしかに僕、こんなナリだし。闘技場の対戦相手にはよく「弱そう」って悪口言われたりしてました。だからちょっとくらいじゃへこたれませんよ!
「僕だって、これでも一応プロのハンターなんですから。あなたたち『ごとき』にそう簡単に食べられたりしません!
かかってくればいいでしょ、3人まとめてお相手します!」
「―――ッの、人間の分際で!!だったら望みどおり殺してやるっ!!」
3人のうち、刃物を持った1人がまず飛び掛ってきた。
僕に向かって勢いよく振り下ろされた曲刀を白羽取りでビタリと止めて、そのままそれを横にひねった。妖怪さんは刀を取り落とし、驚いて目を開く。
その隙に僕は彼の懐へ入って、顔面に一閃。右拳をぶち込んだ。
ガッ!!
「ぶごっ!?」
「あ、兄貴ィ!!?」
鼻っ柱をつぶされた妖怪さんは、鼻血を吹き出してその場に崩れ落ちる。
…うわっ、本当に弱い。
「き…っ、貴様、人間のくせに歯向かうか!?」
「人間、人間って……あんまり人間嘗めてると、痛い目遭いますよ!?―――ハイ、いただきです!」
ガンッ!
「ぎゃんっ!?」
僕の反撃がそんなに意外だったのか、その場で足を止めた妖怪さん。
1人が持っていた鉄棒をすばやく奪って、その鉄棒で面を一本。
妖怪さんは額をへこませ昇天した。(死んでませんよ?)
そして最後は、慌てふためく3人目の妖怪さんに向かって、持っていた鉄棒を槍投げの要領で思いっきり投げつける。
「とうっ!」
ゴスッ!!
「ぎょひい!?」
投げた鉄棒は、逃げようとしていた妖怪さんの後頭部にクリーンヒット。
あっけなく3人を倒した後は、僕はさっさとその場から逃げ出した。
「…さてと。なんとか一旦森の外まで出る方法を考えないと。木が邪魔でこのままじゃ剣が思いっきり振れないし」
『そうか?心配はいらねぇと思うぞ、あの程度の連中相手なら素手でも』
「そんな事言ったって、いきなり強い人と鉢合わせしたりしたらヤじゃないですか〜」
そんなことを言い合いながら、方向がわからないままに僕はサッサと森の中を駆け抜けた。
――――フクロウの鳴き声が低くこだまする。
月明かりだけがほんのりと照らす暗い森の中で、青年はひとり、1本の木の下で横になっていた。
結局、日が落ちるまでに広い森の中を抜け切れず、その日は諦めて眠りについたゼロ。すやすやと寝息を立てていた。
「………おい」
と―――夜半も過ぎた頃、誰かがゼロの側に寄る。
起こさぬように、……それでも目覚めて欲しいかのように小さく声をかけながら。1人の男が側に寄る。
(…死んでしまったのか?)
そう思い、ゼロの顔を間近に覗きこんだとき。
ゼロの肘が動いた。
―――ガンッ!!
「ぐぼっ!?」
鋭いエルボーが顔面へとマトモに入り、男はひっくり返って悶絶する。
その横で青年がずるりと起き上がった。
寝ていたところを急に起こされたせいか、青年の目は完全に据わっていた。
「…ぁあ?オレの睡眠邪魔しやがるとはいい度胸だなテメェ…。死にたいか?」
……先に目覚めたのはゼロではなく。
ゼロの中に眠るもう1人の人格――――ジャズの方だった。
が、男の方にはそれがわかるわけも無くて。
「す、すまん人間…。貴様なかなかやるな…」
男―――雀呂は、ボタボタ溢れる鼻血を手で押さえながら、涙目でジャズへと振り返った。
「…あ?…誰だお前」
オレを知ったかのような素振りで話しかけてくる鼻血ヅラの男。
寝起きで頭が働かず、オレはぼりぼりと頭をかいた。……一体誰だ、この間抜けは。
「な…、誰だとはご挨拶だな。昨日の今日でもう俺の顔を忘れたか?これだから人間は…」
「……そんな鼻血ヅラ見た記憶はねぇ」
「これは貴様がやったんだろ!!まったく…、この…くそ…しかも止まらんではないか!心配して来てやったというのに、なんという一撃をくれるんだ貴様は!」
「…あー…もううるせぇな……。騒ぐんじゃねぇよ…頭に響く……」
とりあえず眠くて、あくびをくれたオレはもう一度寝ようとその場で横になった。
だが鼻血の男はそれを許してくれず、ゆさゆさとオレの体を揺さぶってくる。
「おいコラ、待て貴様ッ!この俺にこんなことをしておいて先に寝る気かッ!」
「…んーだよ…もー…」
しつけーな…。
まどろみの中、『コイツ本気で殺そうか』と悩み始めたところで、"アイツ"まで目を覚ましちまった。
あーもー…めんどくせ…。寝かせろ…。
『んむにゅ……んー…あ…雀呂さん?;』
「…あ?ザクロ?……ぁあ…、お前が昼間言ってたヤツか…?」
『うんー…。あれ?でもなんで鼻血出してるの?この人?』
「知らね…。ふぁ…眠い。寝る…」
「寝るな!!」
その後もそいつは、オレを寝かすまいとしつこく揺さぶってきて。
オレの中で完全に目覚めてしまったゼロにも起きろと言われ、オレはしかたなく木にもたれて座り込んだ。
んー、うぜ……。眠い…。
つーか…そこまで言うならお前が代わればいいだろゼロ…。
ってオレが言うと『だって代わり方わかりません〜』だと。あ、そ…。
「……で?結局オレに何の用なんだよ?」
鼻血が止まらないと言う雀呂とかいう男に、オレはゼロのウェストバッグからティッシュと脱脂綿を取り出して、それをくれてやった。相変わらずゼロは何かと用意がいいな。
雀呂はとりあえずティッシュで鼻血を処理しながら、オレを追ってきたらしい経緯を説明し始めた。
オレは木にもたれて半分寝かけてたが、雀呂はというとお構い無しに1人でペラペラ喋ってくれた。…便利なヤツだな。
「うむ…。用…というかだな。お前と別れてすぐに、俺様はお前が襲われる声を聞いて……、駆けつけたらすでに3人の妖怪が倒れていて。
俺様が忠告した先から襲われるような間抜けなお前のことだから、もしやこいつらに食われてしまったのかと思ったわけだが……。
木々の小枝が端々折れてるのを見てな。天才の俺様はピンときたのだ。『馬鹿な妖怪どもが仲間割れでもしている間に、お前がそちらに向かって逃げたのだ』と!
こんな深い森の中で、俺様の護りもなくその上奴らに怪我など負わされていたら、お前が心細さで死んでしまわないかと心配になったのだ。うむ。……いや、心配などはしていないぞ!?
だがとりあえずはお前を襲った奴らが再び追ってこられないように、周到に森の中を撒いてから追いかけてきてやったのだ。感謝しろ?ふははは!」
血が止まったところで脱脂綿を鼻に押し込み、高笑いに笑う雀呂。
得意げな顔で腕組んであぐらをかいてはいるが……、服とか髪とかはボロボロのボサボサだ。
『コイツ撒いてきたとかカッコつけてるが要は迷ってたんだな?』
『うん…。たぶんそうだと思います…;』
聞いてみれば、オレの中でゼロも苦笑いをしていた。
「見つけたときは死んだように眠っているから少し焦ったが、奇跡的に怪我もなかったようだな。まったく、貴様は本当に運が良いな、人間!」
そう言ってべしべしオレの肩を叩き、また雀呂は笑う。
肩に銃創、包帯に鼻血。服はボロボロで髪はボサボサ。
オレにはお前の方が満身創痍に見えるんだがな?
……まあそこはあえて聞いてやらないのが優しさってヤツか。
「この幻術使いの雀呂様が来てやったからにはもう安心だぞ?そこらの妖怪どもに手出しさせはせん。手当ての恩もあることだし、俺様がお前を安全に町まで…」
「はあ?そんなん別にいらねーよ。うまいこと言ってるがお前もオレを食う気なんだろ?」
「………何だと?」
「聞いたぜ?妖怪は人間を食うんだってな。テメーも妖怪だろ?都合よくオレを騙してナニをする気だったんだか…」
はん、と笑みを漏らし、挑発する。
この馬鹿にそんな度胸はないだろうと踏んでの上でだ。ゼロから聞いた話じゃ、化け物には珍しいお人好しみたいだしな。
『そうですけど…、あんまりいじめちゃダメですよ〜ジャズ〜?』
…とか言って、お前も笑ってるだろ。
ゼロの微笑む声を耳にしながら、オレもニヤニヤを呼応させる。
「よくもオレのこと騙してくれたじゃねーか?あ?」
「そっ…!それは…だな!そのっ……だっ、騙される方が悪いのだ!俺様は妖怪だからな!人間の1人や2人…」
「フーン…?」
目の前であぐらをかいて座っていた雀呂に向かい、四つんばいの格好で距離を詰める。
唇を舐めて濡らし、ケダモノのような目で下から男の顔を見上げた。
雀呂の瞳に、オレの姿が映りこむ。
「………で?」
「"で?"ではないっ!なっ、なな何のつもりだキサマ…!」
「なんのつもりも何も…なァ?」
「やややめんかッ!!触るなっ!!」
指先で、肌の上をなぞる。
身の危険でも感じたのか、雀呂は驚愕の表情でズルズルと後ずさってオレから逃げようとする。
オレは思わず笑みを零した。
――――そいつの反応が、あまりにも期待通りすぎて。
「ハ…、どうしたよ雀呂?なあ…」
「き……キサマ…、性格が変わったか…?; 昼間…会ったときはもっと、こう…」
「……ハ、…もっと?…『もっと』なんだよ…?」
木の根元にまで雀呂を追い詰め、さらに問う。
胸元に触れれば心臓がバクバク、ありえないくらいの速度で高鳴っていた。……ハ!
『〜〜〜なにやってるんですかジャズ!?』
『あ?…いや、面白いから』
『面白いって何!?面白くないですよ!止めて!!恥ずかしいから止めてください!!』
うっせーな、いいとこなのに。
いつでも一緒にいられるってのも嬉しいが、こういうときにはちょっと考えもんだ。
なおも『ジャズ!ジャズ!』と煩いゼロ。
オレはぼりぼりと頭をかいた。
あんまりにもゼロの奴が"恥ずかしい恥ずかしい"って言うから、なんだか興ざめしちまった。
どうしようかと思って考えていたが―――…、目の前の男にとってはそんなオレ達のやり取りももちろん何の関係もなかったようで。
「昼間は…な、そ……その…もっと、」
先程の質問の答えをもごもごと繰り返す。言いづらいのかオレと目を合わせようとはしない。
…ったく。そもそもコイツがじれったいから。
「…だから、『もっと』なんだって」
「だから…もっと……、お前の目はもっと―――優しかったぞ…?」
―――――あ、なんだコイツ。ゼロに惚れたのか?
言ったときの雀呂の顔が、あんまりにもアホで面白くて。
気がついたら雀呂の頭を押さえて、唇を重ねていた。
「〜〜〜んん!!んんん!んぶぶぶ!!」
両手でがっちりと顔をロックしていたので簡単には逃げられない。
何かをわめきながらオレの肩を叩いてタップを繰り返す雀呂。
抵抗が激しくてそれ以上はできず、しょうがないので離してやった。
すぐさま雀呂は手の甲で唇を拭い、顔を真っ赤にしてオレに抗議してくる。
「なっ、な、なっ…いきなり何をするか貴様!!」
「何って?んなもんチュ―――」
「言うなー!!!」
……てめえで聞いてきたくせに、オレが言ったら言ったで両手で勢いよくオレの口を押さえてきやがる。
純情なヤツだ。何のために聞いたんだ。
『んなーなななにやってるんですかー!??ジャズのばか!ばか!!キス魔ー!!』
あーもう、こっちもこっちでうるせー。
ピーピーわめくゼロの声に辟易して、思わずオレは耳をふさぐ。
…まあ、アイツの声は頭の中で響いてるから意味なんてないんだがな。
「……とっ、とにかく貴様ッ!いい、今のはなんだ!?どういう意味でやったのだ!!?」
「なにが?なんかしたか?オレ」
「なっ…!?この期に及んで貴様はそれを俺に言わせる気か―――!!
とっ、突然キ…、キキキ
キッスなんかしてきおって!俺の方が食われるのかと思ったではないか!!」
…キッスて。顔真っ赤にして言う事じゃねーよ。
なんだ、キス初めてか?コイツ。
「お、俺のことが好きなのか?…いや、いかんぞ!!俺とお前は妖怪と人間!気持ちは嬉しいが相容れぬ存在なのだ!その上男同士だしな!」
「ハッ、その割にゃまんざらじゃなさそうに見えるがな?」
オレが茶化すと、雀呂はビクッと身を揺らした。
「ち………、ち、……ちがう……」
否定の言葉を口にしながらも、それにはすでに力はなく。
雀呂の特徴的な長い耳は少し下へと垂れ下がり、視線は横にそらされる。
その表情は赤く、照れたままだ。
「…あっそ。だったら良いじゃねーか。オレはもう眠いから寝る。もう邪魔すんなよ」
「ま、待て!寝るな!」
「…んだようるせーな。邪魔すんなら今度は舌入れるぞ」
「…………。」
「照れてんじゃねーよボケ;」
なんだその顔。こっちが恥ずかしいっつーの。
「ちっ、ち、違うわ!!だだ、断じて照れてなどいないぞ俺は!
…俺は…、俺はその、ただ………お前の…名が知りたくて…」
雀呂がそれを、一大決心といった風に言ったのがオレの目にも見て取れた。
名が知りたいって………つーか、名乗ってなかったのか、ゼロ?
「教えては…くれまいか、お前の名を」
「ふーん?………ヤダ。」
「なんだと貴様っ!?何故だ!?」
「ハ、何故って言われてもー。オレは脆弱な人間様だからなー。妖怪なんかに名乗る名はねぇな。名前使ってナニされっかわっかんねーしィ?」
オレはふざけてそんなことを言ってみたが、雀呂の方は真に受けちまったようで。
「うっぐぐぐ…。……そ…そうか……そうだな、そう思われても仕方あるまい…。俺は幻術使いの雀呂……そうだな…人間ならばそれが普通だ…」
わなわなと震えながらも納得したように自分に言い聞かせていた。
……どうしよう。こいつマジで面白いんだけど。なんなんだ。
『うう…ジャズ…なんかかわいそうだからもう許してあげて;』
さーて、どーすっかなv
つづく
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ただのイジメである
すもも